3月20日は「日やけどめの日」です。日照時間が長くなり始める春分の日を目安とし、早めの紫外線対策を呼びかけるため、2014年、資生堂によって制定されました（3月20日の3・2・0からサ・ニー・ゼロ＝Sunny Zeroという語呂合わせにもなっているのだそう）。日本では、特に春夏は紫外線に気をつけなければなりませんが、1年中温暖で晴天の日が多いホノルル周辺では、時期に関わらず気を付ける必要があります。今回の健康特集では、よりよい紫外線対策に役立てていただけるよう、「日焼けどめの日」にちなみ、日焼けのメカニズムや紫外線が肌に与える影響、日焼け止めの種類や成分など、日焼けと日焼け止めのあれこれをおさらいしてみます。

日焼けのメカニズム

日焼けは身体の防御反応

　紫外線が肌に当たると、人間の体の防御反応として茶色の色素であるメラニンが分泌されますが、そのメラニンが皮膚表面に沈着することで肌の色が濃くなります。沈着したメラニンには、紫外線が皮膚組織の内部へ入っていくのを防ぐ機能があります。メラニンの分泌量は人種や個人によって異なりますが、一般に、生まれつき肌の色が濃い（メラニン色素が多い）人は、薄い人に比べて日焼けしにくいと言われています。

太陽光には3つの種類がある

日焼けを起こすのは「紫外線」

　日焼けの原因となる太陽の光は、波長によって赤外線、可視光線、紫外線の3種類に分類されます。波長が短い光ほど、皮膚への影響が大きくなります。日焼けを起こす紫外線は、3種類の太陽光の中で最も波長が短く強い光です。

出典：環境庁env.go.jp

紫外線の種類

A波、B波、C波の3つ

　紫外線はA波（UV-A）、B波（UV-B）、C波（UV-C）の3種類に分類されます。「UV」は英語で紫外線を意味する「Ultra Violet」の頭文字。紫外線が肌に当たると皮膚のたんぱく質が変質し、コラーゲンを支えて弾力性を保つ繊維「エラスチン」が破壊されます。その後、シワができたり弾力性が失われるなどの症状が出てきます。太陽光による皮膚の老化は「光老化」と呼ばれており、皮膚が老化する最も大きな原因と言われています。では、3種類の紫外線がそれぞれ皮膚へ与える悪影響について見ていきましょう。

出典：美白スキンケアナビ

bihakuskincarenavi.com

【A波（UV-A）】 　紫外線の中では1番波長の長い光、A波は、メラニン色素が皮膚に沈着して黒くなる日焼け「サンタン」を引き起こします。そのため、日焼けサロンで照射されているのは主にA波です。A波は皮膚の中間部にある真皮まで浸透します。真皮では密度の高いコラーゲン繊維が網状に結合しており、コラーゲン繊維の内部には弾力のある繊維、エラスチンが広がってコラーゲンを支えています。A波はこの組織を破壊し、皮膚のしなやかさや弾力を奪ってしまうのです。しかもA波が破壊した組織は、破壊されたまま元へ戻ることがないと言われています。

【B波（UV-B）】 　B波は、皮膚が赤く炎症を起こす日焼け「サンバーン」を引き起こします。A波よりも波長の短い光で、皮膚表面の細胞を壊し、皮膚ガンや白内障の原因になると考えられています。紫外線は、当たった部分のDNA（※1）原子がDNA分子を不安定にします。分子が不安定になると、DNAのらせん状の構造が切断され、DNA配列が正しく行われなかったり、DNAの複製が止められたりと、ミスが起こることがあります。これによって遺伝子（※2）が正しく機能しない場合、ガンを含めた「突然変異」が現れると考えられています。

※1 DNA → 遺伝情報を記録している物質。

※2遺伝子→DNAの中で、タンパク質の作り方を記録している場所。DNA全体の約1.5%を占める。

【C波（UV-C）】 　紫外線の中で最も波長が短い光で、B波よりも有害ですが、オゾン層と酸素分子に遮断されるため地上にはほとんど届きません。しかし、近年はフロンガスによるオゾン層の破壊により、地上に届くC波の量が徐々に増えているといわれています。

雨や曇りの日も降り注ぐ紫外線

雨でも約30％の紫外線

　紫外線は、晴れている日だけでなく、曇りや雨の日でも雲を突き抜けて地上に届きます。晴れの日に比べ、薄曇りの時は80〜90%、曇りの時は約60%、雨の日は約30%の紫外線量が観測されます。さらに、雲から太陽が出ていてると雲が太陽光を散乱するため、雲のない晴れの日によりも紫外線量が多い場合もあるのです。また、ビーチでは紫外線を砂や海が反射するため、実際に太陽光から発せられる紫外線量から更に10〜25％多い紫外線を浴びることになります。アスファルトや草地でも紫外線が反射するので、日焼け止めは天気や場所に関わらず、毎日塗るのがベストでしょう。

日焼け止めの種類とそれぞれの機能

「散乱」「吸収」「散乱＋吸収」の3タイプ

【散乱タイプ】

　塗ったときに白くなるのがこのタイプです。白い色は食品添加物などにも使われる酸化チタンや酸化亜鉛など、鉱物由来の成分。紫外線を散乱・反射させ、肌表面に当たらないようにします。吸収させるタイプに比べて肌への負担が軽く、敏感肌の人や毎日の使用に向いています。

【吸収タイプ】

　一般的なアメリカの日焼け止め製品はこのタイプ。使われている紫外線吸収剤は、「メトキシケイヒ酸オクチル」「アボベンゾン」「ホモサラート」などの化学合成成分です。これらの成分には、吸収した紫外線を熱や赤外線など別のエネルギーに変化し、放出する性質があります。散乱するタイプよりもさらりとしているため、ベタつきが気になる方に向いています。

【「散乱＋吸収」タイプ】

　このタイプの日焼け止めは、化学変化を起こし続けて日焼けを防止するため、時間が経つに比例して効果が弱まっていきます。散乱するタイプも汗などで落ちていくので、2、3時間ごとに塗り直すのが理想です。日本の日焼け止め製品に多いタイプです。

SPF、PA、Broad Spectrumの意味は？

SPF……黒い日焼けの原因となる B波の遮断率を示すもの

　日焼け止めクリーム、ローションのパッケージに書かれている「SPF」と「PA」は、紫外線を遮断する効果の度合いを示す数値です。「SPF」はSun Protection Factorの略で、黒い日焼けの原因とまるB派の遮断率を示しています。日焼け止めのパッケージに「SPF50」と書かれていた場合、日焼け止めを塗らないときに比べて、皮膚への紫外線の吸収率が1/50になります。毎日の使用には、肌への負担が軽いSPF30以下がお勧めです。

PA……赤い日焼けの原因となる A波の遮断率を示すもの

　「PA」はProtection of UV-Aの略で、赤い日焼けの原因となるA波の遮断率を示しています。日本の日焼け止め製品の場合、PAの後に「+」が付いていることが多いですが、これには「＋」から「＋＋＋＋」までの4段階があり、＋が多いほどA波遮断率が高いということを示しています。アメリカの一般的な日焼け止め製品は、「SPF」のみで「PA」の効果の度合いは記載されていません。

Broad Spectrum……A波、B波の両方を 遮断するもの

　「Broad Spectrum」は「広い波長の紫外線を遮断する」という意味。この記載のある日焼け止め製品は、A波、B波の両方を遮断します。

【コラム】太陽光が作るビタミンDは 人の性格を明るくする？

　人間が太陽光を浴びると、紫外線が体内のコレステロールを変化させ、ビタミンDを生成します。ビタミンDは、カルシウムの血中濃度の安定と吸収促進、免疫機能の向上、疲労防止といった働きがあります。また、カルシウムには不安を除いたり緊張を緩和するといった作用もあるため、ハワイなどの南国に明るく大らかな性格の人が多いのは、太陽光によって作られるビタミンDの働きによるものという説もあります。また日光浴には、体内時計を調節し、規則正しい覚醒と睡眠を促す効果があります。日焼け止めを塗って太陽光を浴びてもビタミンDが作られるので、1日30分以内で、日焼け止めを塗った上での日光浴は体によい影響をもたらすと考えられています。

【コラム】「日焼け依存症」は ヘロイン中毒に似ている？

　太陽の光に当たると、体内でビタミンDが生成されることでリラックスした気分になったり、神経伝達物質、エンドルフィンの分泌が促されることで気持ちが高揚する効果があります。まれに身体がこれを快楽と受け止め、日焼け依存症になる人がいます。日焼け依存症は、ヘロインの依存症に似ているという説もあり、この依存症によって皮膚がんになったという例もあります。

日焼け後のケア

　日焼け後の火照りは、日焼けの度合いによって数時間から3日間ほど続きます。その後3～8日で皮膚にメラニン色素が沈着し、浅黒い色になります。新しい肌が作られる「ターンオーバー」は約28日間ですが、この時点で日焼け前の肌色に戻ることもあります。ここでは、日焼けしてしまった後のケア方法をご紹介しましょう。

1．冷やして水分を補給

　急に日焼けをした場合、3～6時間で肌が赤くなり、火照ったような痛みが出てきます。肌が炎症を起こす日焼けは軽度の火傷と同じ症状。まずは冷たいシャワーやタオルなどで日焼けした部分を冷やしましょう。火照りが少し落ち着いたら、奪われた水分を補給するため、化粧水をたっぷりとつけます。化粧水を冷蔵庫で冷やしたり、コットンなどに化粧水を含ませ、肌にのせて水分を吸収させ、その上に保冷剤を置いて冷やすという方法もあります。体の中からも水分を補給するため、水を多めに飲みましょう。

2．肌の回復を促す栄養素を摂取

【ビタミンC：就寝中に皮膚細胞の入れ替わりを促す】

　ビタミンCは、メラニンの生成を抑える働きがあります。レモンやオレンジなど、柑橘系の果物や緑黄色野菜を積極的に摂りましょう。また、寝る前にビタミンCのサプリメントを飲むと、寝ている間に代謝を促すDHEAというホルモンが分泌され、皮膚細胞の入れ替わりを促します。

【ビタミンE：身体の中だけでなく、皮膚の表面からも吸収できる】

　ビタミンEはメラニンの沈着を抑える働きがあり、シーフードやナッツ類、卵黄に多く含まれます。肌から直接吸収される性質があるので、食べ物やサプリメントに加え、ビタミンEが配合された化粧水やクリームなどを使うとよりよいでしょう。

【βカロチン：加熱、油と調理でより効率的に摂取できる】

　日焼けをすると、皮膚に活性酸素が蓄積され細胞を傷つけてしまいます。βカロチンには、活性酸素を抑えて細胞の損傷を食い止め、代謝を促進して皮膚のダメージを修復する働きがあります。ニンジン、カボチャ、ミカンなど、オレンジ色の野菜や果物に多く含まれます。βカロチンは熱に強く加熱しても栄養素が損なわれない上、加熱することによって体内に吸収されやすくなります。ニンジンを生のまま食べた場合、含まれるβカロチンが８%しか吸収されないのに対し、加熱して食べた場合は30%が吸収されます。さらに、βカロチンは油に溶ける性質があるため、油で炒めた場合は50〜70%を吸収することができます。

【たんぱく質：人間の身体の2割を占める成分】

　人間の身体の約20%はたんぱく質でできています。たんぱく質は皮膚を作る素であり、体内にあるたんぱく質の約30パーセントがコラーゲンです。紫外線A波で破壊されてしまったコラーゲンを補給するため、肉、魚、豆類など、たんぱく質を多く含むものを食べましょう。たんぱく質の構成物質、アミノ酸のサプリメントを寝る前に摂るのもよいでしょう。

【コラム】 来年1月から施行される 「日焼け止め規制法」とは？

　2018年7月、ハワイ州議会でサンゴ礁に有害な成分を含んだ日焼け止めを禁止する法案が成立しました。「有害な成分」に該当するのは、紫外線を遮断する働きのあるオキシベンゾンとオクチノキサートで、来年1月1日から、これらが含まれる日焼け止めの州内での販売及び流通が禁止になります。オキシベンゾンやオクチノキサートを含む日焼け止めが、海で泳ぐ人々の肌から流れ落ちたり、排水処理施設を通じて海に流れ込むことで、サンゴの白化現象やDNAの損傷を引き起こし、最終的にサンゴを死滅させるのではないかと考えられています。幼生のサンゴには、特にオキシベンゾンが有害なのだそうです。

（日刊サン 2020.3.17）

＜参考URL＞ 2020年3月2日アクセス

・環境庁 env.go.jp　

・気象庁 jma.go.jp

・「ハワイの日焼け止め規制法が成立、サンゴ礁に有害な成分を禁止」 www.cnn.co.jp/usa/35121917.html

・“All About Sunscreen” www.skincancer.org/skin-cancer-prevention/sun-protection/sunscreen/

・“HOW TO TREAT SUNBURN” www.aad.org/public/everyday-care/injured-skin/burns/treat-sunburn

・“Sunscreen: How to Help Protect Your Skin from the Sun” www.fda.gov/drugs/understanding-over-counter-medicines/sunscreen-how-help-protect-your-skin-sun

・画像出典 Public Domain, Wikipedia, Pixabay 他