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ハワイでの終活

ハワイでの終活 番外編 佐野郁子弁護士による不動産相続セミナー in ホノルル

ハワイで所有している財産の相続準備をお考えの皆さまへ

ご自分に万が一のことがあった場合に備え、ハワイで所有している不動産を含めた財産相続の準備はされているでしょうか? 生前に誰がどれだけ相続するかなどを決めておくことは、相続するご家族や大事な方を守り、遺族間のトラブルを防ぐためのとても大切な手続きです。遺産相続手続きをお考えの皆様のために、4月に開催される弁護士法人佐野&アソシエーツ代表弁護士・佐野郁子さんの「不動産相続セミナーinホノルル」をレポートします。

 

 

エステート・プランニング

▪️ライフイベントに対応した事前準備

 この記事のキーワードは「エステート・プランニング」。私たちが生きていく上で起こりうるライフイベントに対応すべく、事前にプランニングをしておくことをエステート・プランニングといいます。例として、婚前契約(プレナップ)、婚姻後の財産取り決め書、生命保険の加入、資産形成、節税対策、医療に関する委任状、財産に関する委任状などがあります。また、ライフイベントには婚姻、離婚、出産、財産購入などの計画的ライフイベントと、事故、怪我、病気、死亡などの計画できないライフイベントがあります。  この記事では、エステート・プランニングのうち、計画できないライフイベントである死亡後の遺産相続に的を絞ってお話ししたいと思います。

 

 

遺言書 – Will (ウィル)

▪️死後の所有財産について「誰に、何を、どれだけ、どのように」託すかを示した書類

▪️本人の死後初めて効力を持つ

 遺言書とは、死後の所有財産について「誰に、何を、どれだけ、どのように」託すかを示した書類で、本人が亡くなった後で初めて効力を持つものです。遺言書を法的に有効な書類にするには、法律が定める形式に則って作成する必要があり、その形式に則らない遺言書には法的な効力がありません。遺言書を書く際は、まず総括責任者(Executor)を指定ないしは推薦する必要があります。そして遺産受取人とその配分を明確に示し、本人の意思を残しておくことで、本人の死後に起こりうる家族や親戚間のトラブルを避けることができます。  一方で、法的に有効な遺言書があったとしても、ハワイ州を含めたアメリカの多くの州では遺産相続の際は裁判所を通した遺産相続手続き「プロベート」が必要になり、相応の費用と時間が掛かります。ハワイ州の場合、弁護士料は時間制のため、時間がかかるほど費用がかさむことになります。

 

 

遺産相続手続き ― Probate(プロベート)

▪️裁判所の監督の下に行われる遺産相続手続き

▪️ハワイ州では故人の所有財産総額が10万ドル以上の場合に必要

▪️一般に全ての手続きが終わるまで1年から3年以上掛かる

 裁判所の監督の下に行われる遺産相続手続きをプロベートといいます。ハワイ州の法律では、亡くなった人の所有財産の総額が10万ドル以上の場合にプロベートが必要になります(所有財産総額が10万ドル以下の場合はAffidavit=宣誓供述書が必要)。日本の相続手続きよりも厳格に運用されるため、通常は全ての手続きが終わるまで1年から3年以上の時間が掛かります。裁判所には様々な書類を提出する必要がるため、個人情報や遺産の詳細などが公になり、プライバシーの問題が発生することもあります。また、法定相続人が1人以上いる場合は、遺産相続の内容に関して相続人全員の承諾が必要です。

 

プロベートの対象にならない財産

●ジョイントテナンシーや積立年金など  財産の中にはプロベートの対象にならないものもあります。該当するものとして、ジョイントテナンシーで他の人と共同で所有しているもの、受取人(beneficiary)が予め明記されているもの、401kやIRAなどの積立年金、生命保険、米国債などPOD(Payable on Death)が登録されている証券や銀行口座、TODD(Transfer on Death Deed)が登記されている不動産、などがあります。一方で、遺産処理の責任者がいない場合は、ソーシャル・セキュリティー、銀行などへの通知、必要に応じての債務の精算、私物の整理と売却、不動産の処理、最後のタックスリターン申請などの手続きを行う権限を持つ人がいないため、トラブルになることもあります。

 

 

生前信託のための法人 ― Living Trust(リビングトラスト)

▪️プロベートを回避する手段としての法人設立

 トラストとは「法の元で作られる人」、つまり「個人」と対を成す「法人」のことで、トラスト合意書に署名をすることで設立されます。リビングトラストは、生前に法人を設立し、個人の所有財産をリビングトラストという法人の名義に移す、生前信託制度です。財産をトラストに名義変更(トラスト・ファンディング)をすると、本人が亡くなった際に「財産がない」とみなされるため、プロベートを避けることができます。

 

リビングトラストの特長

●プロベートを回避することで、遺産相続に掛かる費用と時間を抑えることができる

●委託した財産でも、本人の存命中に本人が管財人を務めることで、本人の財産とみなされる

●死後に遺産分割を実行する管財人になる人を指定することができる

●死後の相続人を指定することができる

 

  リビングトラストを設立することの特長として、プロベートに比べて費用を大幅に抑えながら迅速に遺産相続手続きを進められるということがあります。また、リビングトラストで法人に所有財産を委託した後でも、本人の生存中ないしは財産管理が可能な間は、本人がトラスト管理人のトラスティ(管財人)になることができます。従ってリビングトラストに委託した財産であっても本人の財産とみなされ、財産を増やしたり、利用、売却、贈与することができます。

 トラスティはトラスト合意書によって決められますが、本人がトラスティの場合は、死後に管財人になる「サクセッサー・トラスティ」を指定することで遺産分割がスムーズに行われます。そして本人の死後、どのように財産を管理するか、残された財産を誰に託すかなど、受取人(相続人)を指定することができます。本人の指示をできるだけ細かく明記しておくことで、サクセッサー・トラスティがその指示に従って遺産相続を行います。そのため、本人の希望通りに遺産を分割、配当することができます。

 

書き換えは何回でも可能

 リビングトラストは何回でも書き換えることができるので、結婚、離婚、子供の誕生などで家族構成が変わった時、不動産購入などで所有財産が変わった時など、必ず見直しを行いましょう。また、リビングトラストの内容や構成は家族構成、資産目録、希望により異なります。これらについては、できれば専門の弁護士と個別相談をして決めましょう。

 

相続人が未成年の場合は「監護義務者」を決める  

 相続人が未成年の子どもの場合、両親が亡くなった場合に備え、裁判所を通して子どもの保護者を決める必要があります。リビングトラストでは、事前に親が信頼できる保護者(監護義務者)を推薦し、その保護者にあらかじめ指示を与えておくことができます。

 

資産管理、自己管理が不可能になった場合に備えて委任状を作成する

●医療に関する委任状(Advance Healthcare Directive)

 特に高齢になったとき、認知症になった時に備えて準備しておく書類です。医療行為に関しての代理人を指定したり、本人が希望する医療行為、例えば延命装置や臓器移植、本人が望む医療措置、生命維持装置の取り外し、成年後見人の選任、火葬、埋葬などに対する意思表示を明記することができます。

●財産に関する委任状(Durable Power of Attorney)

 個人財産の管理を第三者に委ねる委任状です。代理人に委ねられるのは、銀行取引、クレジットカードの使用や支払い、不動産売買などの財産管理、税金の申告などがあります。財産に関する委任状は夫婦が共同名義で財産を所有していれば必要ないという訳ではありません。また、他人とジョイントで持っている銀行口座は注意する必要があります。

 

遺産税 ― Estate Tax(エステート・タックス)

 日本では、故人から財産を相続した人が払う「相続税」がありますが、アメリカでは個人のエステートが払う「遺産税」があります。エステートとは、不動産、自動車、家具などの有形財産、身の回り品、保険、銀行口座、株式、債券、年金、社会保険給付などの無形財産のことを指します。

 アメリカ居住者の場合、遺産税課税控除額(Applicable Exclusion Amount)は、2019年は1140万ドル(11.4 million dollars)でしたが、2020年現在は1158万ドル($11.58 million dollars)に上がっています。また、夫婦の場合、遺産を相続する配偶者がアメリカ市民であれば配偶者控除(Unlimited Marital Deduction)も利用でき、控除額を超える財産に対しても遺産税の支払いを繰り延べすることができます。

 


2020年セミナー開催

4月27日(月) 2:00PM〜

お申し込み頂いた方にwebセミナー用リンクをお送り致します。

ウェブサイトの日本語ページからお申し込みください。

 



佐野郁子 (佐野&アソシエーツ代表弁護士)

 2000年に明治大学一部法学部法律学科を卒業し法学士を取得。2003年に米国ルイジアナ州ニューオーリンズのチューレーン法科大学院にて法学修士を取得。カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州の弁護士資格を有する。7年間ニューオーリンズ、ハワイ、ロサンゼルスの大手法律事務所にて勤め、海商法と国際企業紛争を専門とする訴訟弁護士として活躍した後、2009年にカリフォルニア州サンディエゴにて独立し現在に至る。米国に資産を有する投資家や、米国に住む日本人のための資産形成・資産保全・トラスト・エステートプランを専門に取り扱う。税務や不動産なに携わる各分野の専門家と提携し、信頼のできるネットワークで総合的なワンストップ・コンサルティングを提供している。日本生まれハワイ育ちで日米の文化・習慣・言語・法律を熟知していてきめ細やかな法務サービスが定評。日米を跨ぐ相続にも精通。

(出典:https://www.sano-associates.com/日本語/弁護士紹介/)

 

 

 

 

 

(日刊サン 2020.04.04)

 

2 コメント

  1. 佐野郁子弁護士に連絡を取りたいのですが、電話番号を教えて下さい。

    リビングトラストを将来作成したいと考えております。

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