もはや日常的風景な認知症|医師 松嶋大の終活コラム5

 02/04/2020

Vol.5  もはや日常的風景な認知症

 

 アロハ、日本から松嶋大です!今回は、昨今、社会を何かと賑わしている認知症について説明します。今回もまずはとあるエピソードから。

「おじいさん、私、どこでも行くわ。どこでもいいから施設にいれてちょうだい」

 私が担当する患者さんが、ご主人に向けて語った一言です。患者さんは重度の認知症を患っています。ご主人は奥様のため日々熱心に介護しています。疲労が募ります。疲労をいくらでも和らげようと、日中に介護施設に通ってもらう手はずになりましたが、うまくいきません。自宅を送り出そうとすると怒りだし、なんとか行かせても帰りたいと訴える、行けず、行っても早く帰ってくるを繰り返し、結局休めません。

 

 周囲には認知症で困ったおばあちゃんという具合に映っていたことでしょう。でも、一番悩んでいたのは、きっと本人なのです。薄れゆく記憶に不安を憶えつつ、困り果てている周囲の姿を目の前に、ご本人は苦しんでいたのでしょう。追い詰められて、ご主人に一言を。どれほど認知症は重度でも、その人はその人なのですね。認知症になれば何もかも分からなくなるということは決してありません。

 

 さて、認知症を患う方は年々増加しています。2012年時点、認知症の日本人は約460万人、高齢者の7人に1人。団塊の世代の方々が後期高齢(75歳)に突入する2025年には、それぞれ700万人と5人に1人と推測されています。認知症予備軍まで含めると、2012年で高齢者4人に1人であり、将来的には2〜3人に1人くらいと私は予想します。

 

 いかがでしょうか。将来的には高齢者人口の半分近くが認知症(もしくは予備軍)です。右を見ても左を見ても認知症。ここまで増えれば、「認知症=病気」という特殊な括りを超えて、日本社会の日常的風景として認知症があるように思えませんか。

 

 認知症が急増する昨今、認知症に対する啓蒙や施策は花盛です。メディアでは認知症の早期発見の重要さが連日報道され、認知症に関する勉強会もあちこちで開催され、介護保険も認知症に手厚い状況です。

 

 ただし、現時点で認知症は治らない病気です。早期発見しても早期絶望にならないかと個人的に心配しています。実際、認知症の診断をつけた結果、ひどく落ち込む方を多数知っていますし。

 

 一つだけ申し上げたいのは、認知症は決して対岸の火事ではないということ。年を取り、長生きをすれば、かなりの確率で認知症を患います。決して他人事ではないということ。であれば、認知症にならないように気をつけることも大切ですが、それ以上に、認知症になってからも安心して暮らせるよう事前に準備しておいた方が良いとも思うのは私だけでしょうか。みなさまも、備えは万全に。くれぐれも、認知症を特別視して、差別や偏見をもつことがないよう切にお願い申し上げます。

 

【プロフィール】

1974年、岩手県生まれ。医師、医学博士。なないろのとびら診療所所長。ことのはグループ代表。日本CCRC協会会長。専門は総合診療で認知症と在宅医療を得意とし積極的に取り組む。現在、診療所のほか、担当患者さんの幸せを願い介護事業、飲食業、農業、住まいなどの事業を展開。信念は「目の前の人に最善を尽くす」。

【連絡先】matsushima@kotonoha-group.co.jp

WEBサイト:https://kotonoha-group.co.jp/


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