危機意識

 03/16/2020

 中国・武漢市からはじまった新型コロナウイルス感染を阻止しようと、日本は、いや世界中が大わらわ。全世界の感染者数、感染国・地域数は7~8年前に大流行した「サ-ズ」の時をすでに超えている。経済も大打撃。人の行動があちこちで制限され、経済活動は停滞、世界の金融市場や株式市場は乱高下がとまらない。日本では政府が、不要不急の催事・会合の中止、さらに小・中・高校の一斉休校要請を突然打ち出し、大混乱を引き起こしている。特別措置法改正案が成立し、少しは状況が変わるかもしれないが、終息時期によっては東京五輪がどうなるか、不安はつきない。

 

 これまでの経過を見ていると政府の対応の後手後手感は否めない。その一番の原因は危機感の欠如ではないだろうか。台湾やシンガポ-ルはあんなにうまくコントロ-ルしているのに、なぜ日本はできないのだ、という声をよく聞くが、これらの国は過去、サ-ズやマ-ズといった感染症で大きな被害を被った国で(日本はそれほどではなかった)、感染症の恐ろしさをよく知っており、その経験をいかして、強制力のある法律を作ったり、体制の準備をしたりしているのだ。

 

 中国の南京市(武漢市から500キロほど)では一度多数の感染者がでたものの、2月19日以来、感染者ゼロを続けている。そこに住む竹内亮氏がリポ-トをネットにあげているが、南京市は凄まじいまでに封じ込めを徹底しているそうだ。日本から帰ってきたら2週間の自宅隔離、その後も、建物の出入り、バスや地下鉄に乗るにも非接触の体温計で体温を測らなくてはいけないし、その行動ル-トを「情報管理アプリ」で政府に報告しなければならない。あるTV番組でこの竹内氏にキャスタ-が「いかにも中国、という感じだが、それだけ縛られて我慢できますか?」と聞いたら、「市民の誰もそう感じていません。それほど『コロナウイルスは怖い』という危機意識をみんなが持っているんです!日本は生ぬるいですね!」

 

 と言われても、日本は私権制限と公共のバランス問題が常にあり、緊急事態宣言発出の条件が議論をよんでいる。ともあれ、危機管理の要諦は「最悪の事態を想定して、全力をあげろ」だ。後手後手と言われようとも、きちんと危機意識を持って、打つだけの手を全部打ってもらいたいものだ。

 

 もうひとつ、気候変動についても日本では危機意識が薄い。去年、国連気候行動サミットでのグレタ・トウ-ンベリさんの演説をマスコミはこぞって取り上げたが、今はコロナ一色!そんな中、国会に超党派の「気候非常事態宣言決議実現を目指す会」という議員連盟ができた。

 

 事務局長の古川禎久衆院議員に聞くと「豪州では大規模な山火事、ベネツイアの高潮被害、アフリカのビクトリアの滝が干上がる、日本では台風や洪水、などの異常気象が続いています。気候が暴れたりしてその土地にいられなくなった『気候難民』が2000万人にのぼると言われているんですよ。今や気候『変動』のレベルではなく、気候『危機』のレベル、なんです。世界はそんな危機に気づき始めていて『気候変動は人類の生存を脅かす事象だ』と国連安全保障理事会の一つのテ-マになっているんですよ!」すでに英、仏、NY市、パリ市、日本の長崎県壱岐市や鎌倉市もこの宣言を出しているが、日本は国としてはまだ。しかも日本は先の国連気候行動サミットで、石炭火力発電を続けているし、新増設・輸出計画まであるとして「化石賞」をだされてしまっている。

 

 「世界では今や金融・企業・投資家などが環境に負荷を与えるモノには金を出さないという流れになっています。石炭火力の再保険の引き受けてがいなくなったら、日本だけで引き受けられますか?太陽光・水力・地熱・バイオ。再エネに切り替える、という決心さえすれば、日本の技術力ならすぐ可能です。国民の代表である国会が、危機意識をもってこの気候非常事態宣言を決議すれば、皆さんが行動する背中を押すことになると思います!」

 

 南海トラフ大地震・首都直下型大地震等々、日本には危機意識を持って準備をしなければならないこと、まだまだある。今回の新型コロナ騒動を経験して、昨日のままで明日もいられる、と言う時代ではもはやない、ということを痛感した。

 


川戸恵子 (かわどけいこ)

TBSテレビ・シニア・コメンテ-タ-。TBS入社後、ニュ-スキャスタ-を経て、政治部担当部長・解説委員さらに選挙担当として長年政界を取材。そのほか、これまでに自衛隊倫理審査会長、内閣府消費者委員会委員などを歴任。現在、TBSNEWSで週一回の政治家との対談番組を制作。また日本記者クラブ企画委員・選挙学会理事。


 

 

(日刊サン 2020.3.14)


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