参議院議員に、もっと女性を

 06/29/2019

元ミスユニバース関東代表、身長175センチ。水野もとこさんの名刺には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の法務・コンプライアンス課長など歴任と書かれ、東大法学部卒、ライデン大学修士課程修了などの経歴をみると、冷たく取り澄ました女性かと思い込んでしまう。ところが、梅雨の合間のある日、東京・赤坂のスナックに現れた彼女は気さくな笑顔で、カラオケのマイクを手に取り、「いい日旅立ち」と美声を披露した。 飛び入りの彼女は、近くに事務所を構え、7月の参院選に、国民民主党から立候補するのだという。集まっていたメディア関係者など10人ほどの初対面の人達に臆することもなく、両手で相手の手を包み込むような、候補者らしい握手の仕方も初々しい印象だった。

 

彼女が立候補を予定している東京選挙区(定数6)には現職の女性議員2人が今回も名乗りを上げている。丸川珠代元五輪担当相(自民)と吉良佳子議員(共産)。それ以外にも、元都議やタレントなどの名前があがり、20人近い候補の三分の一が女性となる見通しだ。 大阪選挙区(定数4)に目を移すと、亀石倫子弁護士が立憲民主党から立候補する。彼女と名刺を交わしたのは昨年暮れの木枯しの頃だった。国会対策委員長としてしばしばテレビ画面に登場する辻元清美衆院議員のパーティーで紹介され、弁護士の北海道の実家まで足を運んで説得し、立候補を決意させたと聞いた。

 

辻元議員とは、ピースボートの船旅企画を立ち上げたり作家小田実さん達と韓国の民主化を支援する運動をしていた彼女の学生時代に知り合い、私が新聞記者の仕事を離れてからは、パーティーなどで顔を合わせ、議員活動を注視してきた。 辻元議員の説得で立候補を決めた亀石弁護士は、令状なしのGPS捜査を違法とする最高裁判決を獲得したことなどで知られていた。この6月には、その判決に至るドキュメント『刑事弁護人』(共著)を発表し、「法律を国民のために」と訴える。

 

関西では立憲民主党が京都、兵庫、滋賀、奈良に女性候補を立てる見通しで、辻元議員は「男女同数の議会」を目指す。他の会派も、滋賀で嘉田由紀子元県知事、京都で共産党の倉林明子議員など女性が議席を目指す。 個人的に接点が出来た女性候補二人を最初に紹介したが、7月4日公示、21日投票の第25回参院選では、毎日新聞が6月1日時点でまとめた予測によると、立候補を予定しているのは243人で、前回2016年の389人より少ない。その後、各党が公認候補を増やし、公示直前の情勢報道では選挙区、比例区合わせて320人前後が立候補する見通しとなった。

 

女性は80人前後と予想され、元「モーニング娘。」も名前があがった。定数の半分の121議席と今回から増員された3議席を合わせて124議席を目指して少数激戦の様相だ。 この激戦をくぐり抜け、女性がどこまで進出するか、という点に今回は特に注目したいとの思いが強く、元気で実力を備えた候補者をまず紹介した。それというのも、今回の選挙は、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法」が昨年5月に公布・施行されてから初めての国政選挙で、これを機に、政治以外の分野でも、もっと女性が進出できる社会に、との期待を強くしている。

 

日本の参院議員は任期6年で、3年ごとに半数が改選される。今回改選期に当たる議員が誕生した2013年の参院選をみると、433人の立候補者中、女性は105人で、当選は22人だった。3年前の前回は、女性候補は96人で28人が当選している。当選議員全体に占める割合は合わせて2割強にとどまる。 海外の事情をみると、列国議会同盟が昨年4月時点で明らかにしたデータでは、女性国会議員の比率で日本は193か国中158位となっている。ルワンダ、キューバ、ボリビアが50%を超えているのに対して、日本(衆議院)は10.1%に過ぎない。ちなみに米国は102位(19.5%)で、お手本にすべきは「候補者男女同数法」(パリテ法)を持つフランスだ。政党に対して男女同数の候補者擁立を義務づけ、2017年選挙で国民議会(下院)の定数577人のうち224人が女性となり、38%を超えている。 日本の「推進法」は各政党に法的義務を課すような強制力はなく、努力目標の位置づけだが、それにしても目指す男女均等には程遠い。

 

女性が持っている能力、個性を発揮するには、家庭生活との両立をはじめハードルは高い。出生率の低下にみられるように、女性にだけ負担を押しつける社会システムの改革に、本気になって取り組まなければならない。 今年合格したキャリア官僚に占める女性の割合は初めて3割を超えたといい、こうした人材が将来、国会議員に転出して活躍する時代が来るかもしれない。株主総会の季節、ある大手企業の総会では、もっと女性役員を増やすべきではないか、と質問する株主の姿を見かけた。それぞれの身近なところで、意識の変化が求められている。

 

 


高尾義彦 (たかお・よしひこ)

1945年、徳島県生まれ。69年毎日新聞入社。社会部在籍が長く、東京本社代表室長、常勤監査役、日本新聞インキ社長など歴任。著書は『陽気なピエロたちー田中角栄幻想の現場検証』『中坊公平の 追いつめる』『中坊公平の 修羅に入る』など。俳句・雑文集『無償の愛をつぶやくⅠ、Ⅱ』を自費出版。


(日刊サン 2019.06.29)


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