墓石政治連盟

 07/06/2019

自民党の加藤総務会長が「この間、地元からボセキ政治連盟の人達が来てねえ~」と話し始めた。「ボセキってあのお墓の石のことですか?」「そう、今、家族が亡くなっても、風葬や樹木葬、それにロッカ-式のお墓なんかが増えてきて、墓石をたてる人が少なくなって大変なんだそうだ」。

 

正式には墓石ではなく石材業政治連盟。東京都に続いて加藤さんの地元・岡山県でも設立され、活動を始めた由。 2016年、東京にこの初の政治連盟ができたきっかけは、都営霊園の墓地募集状況。この年の総募集数5329に対して、一般墓地と芝生墓地の募集数はわずか989ヶ所。そのほかは、小型芝生埋蔵施設、長期収蔵施設、立体埋蔵施設、合葬埋蔵施設、樹林型合葬埋蔵施設、樹木型合葬埋蔵施設なんだそうだ。つまり「都石政連ニュ-ス」によると、8割強が墓地・墓石以外のお墓であり「墓地・墓石以外のお墓を都民に勧めている。けしからんではないか!」ということなんですね。

 

「樹木葬」をネットで調べてみると、次々に美しい写真とすばらしいうたい文句がでてくる。「創業四百年石長」という石材店のHPによると「日本初の樹木葬は、1999年に岩手県の寺院 大慈山祥雲寺(現:長倉山 知勝院)によって栗駒山山麓につくられたのが始まりで、ご遺骨のそばに低木類の樹木を植えていき、里山の緑化再生を兼ねたものでした」「2006年に 神奈川県横浜市の霊園・横浜市営メモリアルグリーンにオープンした樹木型墓地が、日本で初めての公営の樹木葬です。その後、人口が多く墓地不足が懸念されている都市部を中心に、自治体による樹木葬が増え始めています」

 

墓地・墓石のお墓が減った原因はいろいろ考えられる。

 

●お墓を作るのも維持するのも多額な費用がかかる。民営墓地は値段が不明朗なものも。

●少子化でお墓を護る人がいない。いつかは無縁墓になるだろうと考えている人が五割にも上るという調査もあるそうだ。実は我が家もそう。一方、跡継ぎがいないとお墓を買えないケ-スもある。東京などは土地が少ないので、お寺さんとしては、確実にお墓を守ってもらわないと困るのだろう。大きなお寺では無縁墓はさっさと更地になっているのをよく目にする。

●遠すぎてお墓参りに行けないから近くに移したいが、適当なところがないので結局ロッカ-式に。四谷の上智大学の聖イグナチオ教会は建て替えの際に地下に納骨堂を作ったそうだ。そういえばマリリンモンロ-のお墓もロッカ-みたいなのではなかったかしら?日本人が隣に眠りたいと言って買おうとしたという噂を聞いたことがある。

●○○家のお墓には一緒に入りたくない。自分の好きなところで好きなように眠りにつきたい等々。いちいちもっともだ、と思ってしまう。

 

都石政連の会長さんは「樹木葬やロッカ-式のようなお墓の立体化・集約化は日本人の原点でもある先祖崇拝の精神が消失し、先祖や親を敬わない、命を大切にしない日本人になっていくのではないかと危惧している」そうだ。でも大ヒットした「千の風に乗って」のように、問題は墓石の有る無しではなく、逝かれた方を想う気持ちが何より大切だということではないだろうか。 今年5月に映画「羅生門」などで有名な女優の京マチ子さんが逝去されたが、自身で手配された大好きなハワイのお墓で眠りにつかれるそうだ。長島茂雄さんの長男・一茂さんも「おふくろの眠るハワイの墓地にボクも入る」とおっしゃっている。

 

ネットで見たら真っ青な海の見える青々とした芝生の墓地!これを聞いた友人は「子ども達も、不便な田舎よりハワイなら、遊ぶついでにしょっちゅう来てくれるかもしれないな!ちょっと考えようかな?」 とはいえ、政治家にとってはお墓は大切なモニュメント。安倍首相は地元に帰ると必ず父・安倍晋太郎元外相の墓参りをして決意を新たに述べるし、小沢一郎さんもここぞの時には恩人の金丸信さんのお墓にメディアを引き連れて墓参、勝利を誓う姿をPR。二階自民党幹事長は今でも昔秘書として仕えた遠藤三郎元建設相の墓参りを欠かさない。だから、今回、自民党二階派に入った元民主党のホ-プ・細野豪志衆院議員にしっかり遠藤元大臣の地元票をつけることができるのだ。

 

この世界ではまだまだ墓石の需要はありそうだ。

 


川戸恵子 (かわどけいこ)

TBSテレビ・シニア・コメンテ-タ-。TBS入社後、ニュ-スキャスタ-を経て、政治部担当部長・解説委員さらに選挙担当として長年政界を取材。そのほか、これまでに自衛隊倫理審査会長、内閣府消費者委員会委員などを歴任。 現在、TBSNEWSで週一回の政治家との対談番組を制作。 また日本記者クラブ企画委員・選挙学会理事。


 

 

(日刊サン 2019.07.06)


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