映画『銀河の雫〜はじまりはひとつ』山元加津子監督インタビュー

 09/14/2019

映画『銀河の雫〜はじまりはひとつ』 9/22(日)上映会

小さなバターランプのように寄り添って共生する、ネパールの人々に会いに来てください

 

ネパールを舞台にしたドキュメンタリー映画『銀河の雫』。サブタイトルには「はじまりはひとつ」とある。この映画の監督である山元加津子さんは、特別支援学校の教員として30年以上働いてきた。

 

「私は子どもの頃、地面に転がっている石を見て、「石と私は一緒だよねー」って思ったんですね。その思いはずっと持ち続けてきました。養護学校の教員として重い障がいを持つ子どもと接する中で、話すことも動くこともできない子どもでも、同じ人間同士として愛情を持って接しているうちに、心のコミュニケーションができる体験をたくさんしてきました。私たちは繋がっている、私たちはひとつなんです。私だけが一方的に子どもたちに教えたりお世話しているのではなく、お互いに支えあっていることを何度も実感してきました」

 

旅が好きな山元さんは、15年前にネパールのカトマンズを訪れた。そこで知り合った日本語ガイドのギータさんは、ネパールのことをこんな風に紹介してくれた。

 

「かっこさん(山元さん)は私の一部だし、私もかっこさんの一部。動物も地面も空も、みんな自分の一部。みんなでひとつ。体に痛いところがあれば、手は痛いところをさすり、手は決して体を傷つけない。かっこさんも私の一部だから、傷つけたりはしない。地球や宇宙の全部が傷つけ合わないように、大丈夫なようにしていきたいとネパールの人は願っています」  

 

石と私は一緒なんて、変なことを言う子だといわれてきた山元さんと同じことを思う人がネパールにいると知り、嬉しくて感動したという。

 

「私たちは本当は、はじまりはひとつだったという記憶を心の奥に持っているのではないでしょうか。地球上のすべて、宇宙も丸ごと、全部が繋がっていてひとつだということを、ネパールの人は昔は100%の人がそう知っていて、今でも80%の人が、私たちはひとつだと思っているとギータさんは教えてくれました」

 

 

2015年ネパール大地震、 映画で震災を支援することを決意  

2015年、マグニチュード7.8の巨大地震がネパールを襲った。3週間後、またもやMw7.2の大地震が起き、首都カトマンズをはじめ中西部は壊滅的な被害を受けた。亡くなった人は約9,000人に及び、子どもだけでも110万人もが被災し、学校も倒壊した。  ネパール最古の寺院で、ネパールの人の心の拠り所であったカトマンズのスワンヤンブナートも倒壊した。  

 

親交を育んでいたギータさん一家も被災し家を失った。ギータさんは夫と一男一女の4人家族。震災当時、娘はまだ赤ちゃんだった。  

 

山元さんは突き動かされるように、2016年の1月にネパールに飛んだ。大好きなネパールの人の優しさや共生のようすを映像で伝えれば、支援の輪を広げることができると思った。映画監督は初めてだったけれど、旧知のカメラマンや映画制作の専門家が惜しみなく協力してくれた。  

 

ガレキが残るカトマンズで、ギータさん一家と再会した。ギータさんを主人公にした、カトマンズの人たちの笑顔や祈り、紡がれる言葉を5日間撮影し続けた。

 

「ストーリーも何もなかったのに、撮り終わって映像を見てみたら、必要なところがそのままストーリーになって撮りきれていました。知らないおじさんが話しかけてきてくれたり、まるで始めからちゃんと組み立てられていたように撮れていたんです」

 

 

ネパール連邦民主共和国  

東、西、南の三方をインドに、北方を中国チベット自治区に接する西北から東南方向に細長い内陸国である。国土は世界最高地点エベレストを含むヒマラヤ山脈および中央部丘陵地帯と、南部のタライ平原から成る。ヒマラヤ登山の玄関口としての役割を果たしている。面積は約14.7万km。

 

ネパール大地震  

2015年4月25日、首都カトマンズ北西約77km付近ゴルカ郡でマグニチュード7.8の地震が発生。5月12日には、シンドパルチョークでマグニチュード7.3の余震が発生。死者8,856人、被災者約560万人、半壊・損壊した住宅は約89万戸、国民の5人に1名が被災するという甚大な被害となった。政権が混乱し、雨季も長く、復興の道は遅れがちだが、観光客が多く集まる首都カトマンズなどは外見上は再建されている。

 

 

『銀河の雫』は、 小さなバターランプの灯りから始まる    

映画は小さな灯りが寄り添って、温かな光を放っている映像から始まる。 「ネパールではお祈りをする時にバターランプに火を灯します。バターを溶かしてランプの準備をするおじさんに、私が身振り手振りで話しかけるとバターを削らせてくれたり、注がせてくれました。ありがとうと手を握ろうとしたら、手が油で汚れているからと遠慮したり。本当に優しくて」  

 

寄り添っている小さな灯りたちは、人と人の繋がりのよう。ギータさんも静かに語る。 「植物、テーブル、この床も神さまですし、ランプもカメラも、木も鳥も、全て神さまですね。人間がお世話になるものすべてが神さまです」  

 

山元さんは被災したネパールの人々から逆に、勇気や希望、私は私でいいのだという自分を愛する気持ちをもらったと話す。

 

チベット仏教の寺院に描かれている“ブッタ・アイ”。「仏さまはいつも見ていますよ」という意味だ

 

「人間は死んでも、その体が燃やされて灰になったら、大地を肥やし、植物や動物の新しい命を支える。その大いなる循環の中で、なにもかもがいいふうに、大丈夫なようにできている。私たちはいつも守られているんです。このことを、本当は分かっているのに、心から納得し安心してゆだねることができない私たちなんですよね。でも、地震で家が崩れたり、食べ物や身の回りの品が十分でなかったりする大変な中で、優しい気持ちを失わず祈りに包まれて暮しているネパールの人たちのようすを観て感じて欲しいんです」

 

『銀河の雫』は2016年の9月に初上映。以後3年間で日本各地、1000ヶ所以上で上映が続けられている。カトマンズでも上映した。上映で集まったお金は、カトマンズの子ども達の教科書の購入や、絵本の送付に当てられている。細くても長く、支援していきたいと願っている。

 

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