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デジタル版・新聞

インタビュー

未来へ 羽ばたく若者たち<私にしかできない歴史を作りたい>

 

宮崎 Kiki 早季

福岡県福岡市出身の23歳

1990年生まれ

 

 

ハワイには

2012年の3月11日、ちょ うど東日本大震災が起きた1年後に来ました。それまでは、地元の西南学院大 学に通っていて、専攻は、国際文化学部 国際文化学科でした。大学3年生で、そ ろそろ卒論を書き始めないといけない時でした。うちの学部は、卒論の優秀生に懸賞金がでたんです。私は、大学院も行きたかったし、「優秀」っていう言葉 がつくのならば、それを狙うしかないと思いました。私は、「アメリカの移民史」を研究していたのですが、それではテーマが大きすぎたので、「パールハーバーのプロパガンダ」にテーマをしぼりました。それで、その資料を集めるのが目的でハワイに来たんです。うちの大学は、退学をしても2年以内だったら試験なしで復学ができるシステムだったので、その2年の間に、ハワイの学校を卒業し、その後、日本の大学に復 学して卒業しようというのが最初のプランでした。そして、そのプラン通りにするなら、去年の秋学期までのはずで した。実際、カピオラニ・コミュニ ティー・カレッジ(以後KCC)も卒業ができたので、ほとんど帰るつもりでいたんですね。でも、やりたいことをやれてないぞって気がついたんです。  

 

 

私の両親

はともに、歴史家で、父は大学教授、母は歴史研究員なので、普通の家庭と比べたら、小さい頃から歴史に触れあう機会が多かったと思うんです けど、やはり歴史、文化、言語は、その土地に属するものであって、絶対に剥がそうとしても剥がせないもの。だから、 まず私がこの土地に属さない限り、歴史は勉強できないなって思ったんです。日本で勉強していた時は、本で勉強していたっていう感じなんですよね。 本を読んで、論文を書くって事をずっとやっていけば、大学院も入れて、研究ができるって考えていましたけど、でも、本当にそこを突き詰めたいと思ったら、私は書いている場合じゃないなって思ったんです。2年間のハワイじゃ、まだまだ行きたいところ、やりたいことができてないって気づいたんで す。だから、日本の大学の卒業を諦めて、その代わりに、ハワイ大学に行って、この道を極めようと決めました。今春からハワイ大学に転入し、今やっと自分がやりたいことを始められている感じです。この秋セメスターからは「エスニック・スタディー」をメジャーにする予定です。まだ今後はどうなるかわ かりませんが、最低でも修士号はとるつもりで、本心は、博士号をとるのが夢 です。 

 

大好きだった高校時代の日本史のクラス。

教科書は、メモ書きでびっしり。

 

 

小さい頃の夢

は、ベースを弾くので、 ミュージシャンでした。その他にも、看護師や建築家になりたいって思ったこともあります。でも、常に興味があり続 けたのは歴史でした。興味があるとい うか、もうそれ以外には考えられな いっていう感じでしたね。例えば、うちの父は、古地図を見ながら、福岡の街を歩くツアーを、市民の皆さんやゼミ生を連れてやっているんですけど、そういうのが、普段の生活であったんですよ ね。「このお寺は一体何年に建てられたものでしょう?」とか歩きながら話していて、逆を言えば、そういう話しかなかったんですよ。母とは、世間話もしますけど、今でも父とは、「この間あのお城がこうやったよ」とかそういう話しかしないんです(笑)

 

 好きな歴史上の人物は、細川家です。 なぜ好きかって言うと、2年前に九州国立博物館で、「細川家の至宝展」があって、母に誘われて行ったんですけ ど、そこで偶然細川護煕さんにお会いできたんです。私は、細川家ってすごいロマンがあるなって思うんです。関ヶ 原の戦いで活躍した細川忠興は、当時顔もよく、人気者で、天下を取るかって言われていたけど、ちょっとヘタレだっ たから天下をとれなかった。それが、何百年もたって、末裔の護煕さんが総理大臣となって天下をとったわけですよね。それってすごいなって思うんです。 しかも、教科書に載っている人物に 10cmの距離でお会いするなんて、やんごとない!って感動したんです。きっとジャニーズのアイドルに会った感覚 ですよね(笑)

 

 今、大学の授業以外にも、モイリイリ の日本文化センター(以後JCCH)で、日 系移民の研究をされている方のお手伝いをさせて頂いています。メインでやっ ているのは、口述歴史インタビューで、 ご高齢の日系の方々をインタビューして、歴史を死に絶やさないように記録に残す作業のお手伝いです。また、「お かげさまで」という日系移民の歴史か ら現在のカルチャーについての展示の日本語ガイドもやっています。2012年の秋からお手伝いしていますが、いつの日か自分のことを「研究者」って呼べる時の下積みを、JCCHで積んでおきた かったんです。

 

 

ハワイ語の勉強

もしていますが、それは、「歴史は言語の中に隠れている」って信じているんです。その言語がわからないと、その価値がわからない。価値がわからないと、文化もわからない。そして、文化に根付いた歴史もわからないって思うんです。例えば、ハワイアンがどうして血筋を守ろうとしているのか。日本人も血筋を守ろうっ ていう気持ちがありますが、それがハワイアンと同じ価値観なのかはわからない。同じかもしれないけど、違うチャンネルかもしれない。それを知るには やはり言語を勉強することが大事で、 また、それをやっていかない限り、私は歴史を研究しているとは言えないって思うんです。  授業とフィールドワークとJCCHのお手伝いで、毎日が忙しくて、だから、 私、友達いないんですよ(笑)。「学問は孤独」って本当に思います。もちろん 「もう勉強なんていいや!」って思った時期もあったし、遊びにも行ったりもしました。でも、フィールドワークで早朝 からバスに乗ってノースショアの山奥に行くんですけど、そこでネイティブハワイアンの神殿の手入れをしていて、 多分これ、60代になってやるのはキツイなって思ったんです。だからこそ、今体力のある20代のうちにやれることを やり、そして、将来、この土地に出逢ていてよかったと思えるような、帰って来れる場所を色々見つけていたいなって思っているんです。

 

 

歴史家の魅力

って、きっとお腹は一杯ならないかもしれないけど、心は一杯になると思うんです。また、私にしか見えない歴史があり、私にしかできないカルチャーがある。でも、それは一日ではできない。長い時間を経て、私が死ぬ時にようやっと「あぁ、私はこういう カルチャーをもっとったぁ~」と気づくかもしれないし、誰かが私が死んだ後 に、「あの人のカルチャーはこうだったね。歴史はこうだったね」って言ってくれるかもしれない。とりあえず、結果がどうであれ、時間がかかるけど、全部がつながっているから、全部やるって思っています。そして、今まで日系移民の勉 強をして、この移民の方たちが心折れずに頑張ってくれたから今があると思う。だから、私も心折れずに頑張った ら、違う歴史が作れると信じて精進していきます!

 

 

(日刊サン 2014.08.16)

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