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デジタル版・新聞

インタビュー

文学博士・国際コミュニオン学会名誉会長NPOコミュニオン顧問 鈴木秀子先生

死んでゆく人は後に残る人に大事なものを残してくれる

「死」への対応というものは本当は訓練が必要ですし、訓練しなければそう簡単にできるものではありません。しかし、 「死」というのは誰もが避けたいものですから、なかなか直面することができないのです。ですから、身につかないのです。

 

人間は一人で生きているわけではありませんから、健康なうちからいわゆるサポートシステムを築きあげていく必要があります。それを「死」は教えてくれるのです。

 

人間は必ず最後に誰かに別れを告げてから死 ぬと言われていますから、家族や友達などの仲間の中で、お互いの絆を深めていく行き方が大切なのです。 「人との絆を築くことに投資しなさい」という言葉もあります。

 

そして、人のために尽くしながら生きないと、最後まで幸せではないのです。孤独死して1週間も発見されずにいたという人は、生前もずっと孤独で、誰とも絆を深めるような人間関係を築かなかった人なのですね。

 

死んでゆく人はどんな人であれ、後に残る人に大事なものを残してくれると言いいます。孤独死を見ると、 「いかに人間というのはお互い同士助け合って生きているものか」 「人に尽くせる喜びを持たないと生きがいがない」ということが分かります。

 

孤独死した人は「孤独死になるような生き方をしないように」という教訓を残してくれるんですよ。 人間はとても苦しい時は一人では耐えられませんから、まわりで助けてくれるような、愛を分かち合う人間関係を築いていくことが大事なんです。

 

 

気がかりなことは片付ける

人閤は 「死ぬのは遠い先」だと思っていますから、なかなか準備なんてしないものではないでしょうか。でも年を取り、今後のことで何か気がかりがあるならば、なるべく早く片付けた方がいいと思います。例えば、お墓を準備していないことが気になっているのなら、準備しておく。

 

もしもそれが 「今すぐにしなくてもいいこと」ならはそれを考えないように自分を訓練する。今するべきことに意識を集中すること。今掃除をするなら一生懸命掃除すればやり遂げたと思える。気がかりなことは頭から出すようにして、気がかりを持たない生き方ができるというのは素晴らしいと思いますよ。

 

人間は破産しそう、会社が駄目になりそう、家族が病気という危機を乗り越えるには、最悪のことを考えてみると良い。最悪のことを考えてみると、度胸が据わる。でも最悪のことというのは起こらないことが多いのです。

 

最悪のことに対して準備をしておくと安心できます。人間にとって安心感は大きな力。気がかりがあると集中できません。ですから準備をしておくというのは素晴らしい生き方だと思います。 一番大事なのは今この瞬間を生きることですから。

 

過去に起こったことをクヨクヨ 考えて後海して、幸せで元気な今この瞬間を汚染しないこと。取り越し苦労しない。気がかりなことを片付ける。色んなことが頭に浮かんで気持ちが落ち込むときは、呼吸に 意識を集中する。

 

生きているということは呼吸していることですから、吸う・吐くということを訓練するといい。今この瞬間生きているということに帰ってくれば、頭は過去 も未来にも煩わされなくなります。

 

 

特に男性は、人の話を聞く訓練が必要

話を聞くということはとても大事なことですが、実際はきちんと聞けていない人が殆どです。特に男性は話を聞くのが苦手です。3%も聞いていないというのが実情ではないでしょうか。私は話の聞き方を教える「アクテイブ・リスニング」というワークショ ップも行っています。

 

男性は人の問題を解決してあげたがる傾向があります。例えば奥さんが「あの人にこんなにひどいことをされた」と言ったら、「そんな人は放っておけばいい」 「あの人は夫婦喧嘩をしているから八つ当たりされたんだよ」と、分析して答えを出してあげるのです。

 

しかし、女性はそれが一番嫌いなのです。女性はただ聞いて欲しいだけなのです。でも男性は面倒くさいから、新聞を読んだり、他のことを考えたりしながら適当に相槌を打っていますけれども、女性は真剣に聞いてくれているかどうかすぐに分かります。

 

私の知人が、定年したその日に旅行会社に行き、妻への贈り物としてハワイ行きの旅行を予約して帰りました。

 

ところがテーブルの上には離婚届が置いてありました。「今日までご苦労さまでした。ここまではあなたも妻の助けが必要だと思ったので一緒にいましたが、これでお勤めも終ったので、今日で離婚させて頂きます」と言われ、ご主人はなぜ妻が離婚したいのか分からない。

 

理由を尋ねると、 「あなたは今まで一度も私の話を聞いてくれませんでした」という答えが返ってきました。 「いつでもお前のそばにいて、話を聞いていたじゃないか」 「真剣に聞いてくれたことは一度もありません。あなたはいつでも自分の世界にいて、いくら話を聞いてと頼んでも聞いてくれなかった。私が話すのと一緒になって聞いて欲しかったです」と言って、本当にその人は離婚してしまいました。

 

その女性は、一人になってから淋しくなり、それを男性に話すと 「引っ越した方がいいよ」とか 「老人ホームに入った方がいいよ」とか、すぐに解決策を出されてしまいました。彼女は 「自分はこんなにつらいんだ」ということを分かってくれればそれで気は済むのです。

 

ですから、特に男性は話を聞く訓練が必要なのです。人の話を聞くのは大変なのですよ、我慢が必要ですから。これからの勉強は、死の準備教育や、家庭内をどのように幸せに作り上げるかが大事なことになっていくと思います。

 

 


鈴木秀子(すずきひでこ)

 

東京大学人文科学研究科博士課程修了。文学博士。フランス、イタリアに留学。スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授(日本近代文学)を経て、国際コミュニオン 学会名誉会長。 聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。

 

日本にはじめてエニアグラムを紹介。全国および海外からの招聘、要望に応えて、「人生の意味」を聴衆とともに考える講演 会、ワークショップで、さまざまな指導に当たっている。著書に『死にゆく者からの言葉』(文藝春秋)、『愛と癒しのコミュニオン』(文春新書)、『臨死体験 生命の唇き』(大和書房)『奇蹟は自分で起こす』(海竜社)、『幸せになる9つの法則』(海竜社)、『幸せになるキーワード』(致知出版社)、『あなたの心が 光でいっぱいになる本』(青春出版社)その他多数ある。


 

 

(日刊サン 2011.11.25)

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