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デジタル版・新聞

インタビュー

巨大筆で魅せる 書道家 竹原弘記さん

筆が表現をしてくれる

さらに昨年の11月には、KCCと東海インターナショナルカレッジでパフォーマンスが開かれた。東海インターナショナルでのイベント前日、竹原さんはアリゾナ記念館を訪れた。そして当日、学校の講堂で「平和」という文字をライブでしたためた。

竹原さんは、毎回パフォーマンスの開始前に精神統一を行う。目を閉じ、両手を空に向けて静止し、無の状態になり、その場の空気感や雰囲気を自分の中に入れ込むのだそうだ。目に見えないエネルギーが、その場に最もふさわしい文字として表れてくれるそうだ。

「平和」の文字もまさにそうで、前日にアリゾナ記念館で目にしたものの印象が昇華し、戦争で亡くなった人たちへ鎮魂の思いが、「平和」の文字となって表れたという。

 

自分の意思のようで自分の意思ではない、竹原さんに何かが”降りて”書いているのかもしれない。  「大きい書を書く時は、全体が目で見えないのですが、上から見下ろしている映像が常に頭の中にあり、そこでイメージした字をなぞる感じです。自分は筆を運んでいるだけで、その筆が線を作ってくれる。例えば、にじんだところやかすれたところは、筆が表現してくれる。ただ筆の赴くままに動かしていく、そうすると筆が書いてくれるのです」

しかも、この毎回「どんな表現の字が生まれるかわからない」というワクワク感こそが、竹原さんを書の虜にしている一番の要素なのだ。

 

言葉や文化の違いを超えて通じる

こうして海外での活動の夢を実現し、 国によって全く反応が違うことも体験した。イギリスでは、文字の意味や伝統の背景などを重視。アメリカは逆に派手なパフォーマンスに大きな反応があり、フランスは、最初は疑いながらも一度納得するとそれに夢中になってくれる。

それと同時に、どの国でも自分が書いている時は、自分の呼吸と観客の呼吸が合い、一体感が生まれていることも確信している。

 

竹原さんは人前に出るのも話すのも大の苦手。サングラスをかけているのも、緊張や苦手感を和らげるためだという。そんなシャイな竹原さんがなぜ人前でパフォーマンスをするのか?

「一般的に“書いてある書”を見ることはあっても、“どうやって書いているのか”を目にすることは少ないですよね。書く時の息遣いや、筆の動きを見て欲しい。文字は平面に書いているが、筆は上がったり、一本の線を書いて次に行くまでも常に動きがあり、途切れていない。その動きを通して字が生まれる瞬間を見て感じて欲しいんです」

 

2つの プロジェクトも完成

さらに海外交流がきっかけで新たな2つのプロジェクトも生まれた。一つは、竹原さんの作品で一番大きな書となる「円相」だ。これはイギリスで出会った方に「竹原さんにとっての最高の円を描いて下さい」と頼まれたのがきっかけ。それから「自分にとっての最高の円とは」を模索し、60キロの巨大筆で10×8メートルの特注の布に書いた。構想から3年かけて仕上がった作品は、近いうちにイギリスに届ける予定だ。

 

 

そして、もう一つが「カルタ」制作だ。実は、一連の海外交流を経て妻裕子さんにある思いが芽生えた。それは「どうやったら日本の文化が根付くか」。交流中、数多の人と出会い、弘記さんのパフォーマンスを見て感動をしてもらったが、でも、それはその一瞬だけで、単に思い出として記憶の中に残るだけ。そうではなく、もっと日本文化を根付かせたい。

弘記さんがカルタの句を考え、文字を担当。さらに、日本アニメーション協会会長の古川タクさんが、絵を描いてくれて完成した。昨年のニューヨークの個展でもその原画が展示され、その時の訪問先の学校にカルタは寄付された。さらには、その作品を見た東海インターナショナルカレッジからのリクエストで、弘記さんが書いた平和の句、「平和の世祈りを乗せた千羽鶴」の原画が12月7日、真珠湾攻撃の日にアリゾナ記念館に寄贈された。

 

最後に、竹原さんに改めて書の魅力を尋ねると、「正直わからないです。私が書道をやっている理由は、『人生の旅』だと思っています。書を通して何かを探し続けているのです。10年先も20年先も書いていたい、それを続けられるように努力をしていきたいです」  型にはまらず、どこまでも「自分らしさ」を求めて突き進む竹原さんを、巨大筆が導いていくのだろう。 (取材・文 Miki Cabatbat)

 

竹原さん製作のカルタ「書と絵でつづる 日本文化のかるた」はアマゾンでもご購入できます。 amazon.comで「Koki Takehara」で検索!!

 

(日刊サン 2018.01.21)

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