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デジタル版・新聞

インタビュー

加瀬邦彦&ザ・ワイルドワンズ

日本では根源的な価値観が今問われている

-今回のハワイでのチャリティーライブの きっかけは?

加瀬

「昨年6月にハワイに来た時に、ハワイ の知人から“震災の支援として色んなとこ ろにお金を送ったけれど、それがどこでどんな風に使われているのか全然分からな いから、支援した気持ちになれない。もっと 目に見える支援をしたい”という声を何度 か耳にしたんです。それなら何かやりたいと 思いました。

 

“ハワイでワイルドワンズのチ ャリティーライブをやって、義援金を集めて支援をしたい”という提案があり、日本に帰 って考えました。 僕の次男はボランティア活動に携わって いるので相談してみたところ、東北三県(岩手・宮城 ・福島)には合計で19か所の児童養護施設があることがわかりました。

 

年々増えている虐待や保護者の健康上・経済上の理由で十分な蓑育を受けられない子供たちを養護し自立を支援する施設です。 音楽で心を明るくさせてあげて、将来の夢を持たせてあげたいという思いで、息子は その養護施設を訪れていました。

 

それから色々考えて、19ヶ所の施設に力 シオのキーボードを贈ることにしました。こ れは鍵盤が光って引くべき鍵盤を教えてく れるというナビゲーションシステムが搭載 されているもので、曲の数も多く、練習にと ても便利なんです。それなら先生もいりま せん。それでカシオに事情を話し、今回のハ ワイチャリティーライブの収益金でキーボード贈ることになりました」

 

-鳥塚さんは養護施設をまわっているそ うですね?

鳥塚

「身体障害や心の障害を持った子供たちが通う学校というのはたくさんあるん です。NHKの子供番組に歌のお兄さんとして出演していた関係で、子供の歌を歌う活動をしていたこともあり、それが縁で1983 年から養護学校を訪問する活動を始めました。

 

28年間で121校訪問しています。 去年も東北で震災の被害を受けた養護 学校を訪問してきました。子供たちが喜ぶよ うに選曲して、AKB48の曲や「マル•マル・モリ・モリ!」なんかも演奏して喜ばれました。島くんも去年個人的に被災地を訪れて いますよ」

 

「加山雄三さんから電話がありまして‘‘仕事とは関係なくギター一本持って東北に 行くんだけど、一緒に行ってくれないか”と 誘われ、東北を訪れました。 被災地に入り避難所に行ったのですが、 実際にあの光景を見て、匂いをかいで、空 気を吸ったとたんに、もういたたまれない 気持ちになりました。

 

初めはすごいなとい う言葉しか出ない。涙が出てくる。一瞬にして今までの世界が無くなってしまうものなんだ、これが人災ではなくて天災なんだと いうことを痛感しました。 ステージに上がつても、皆さんは自分の いる場所で毛布にくるまり顔だけ出してい るんです。

 

司会の方が加山さんを紹介しても拍手がパラパラとあるだけです。それだけ心が痛んでいるんでしょうね。それでも何曲 か演奏しているうちに、だんだん笑顔が出てきて、手拍子も聞こえてきて、ああ、やっぱり歌の力はすこいんだなと思いました。

 

帰りの電車で“苦しかったな。俺はボロボロだったよ。お前よく平気だったな"いや僕も大変でしたよ”と加山さんと話したのを覚えています。泣いていたけど泣いている顔は出せないし、とにかく一生懸命やりました。

 

歌というのはあれだけパワーがあるとい うのを目にして、帰ってきてから‘‘これは何 かしなければ”と思って募金活動を思いつきました。リストバンドを作って、販売する のではなく、募金をしてくれた方にお礼に差し上げることにして、一つ1000円で作るこ とにしました。目標金額は100万円。

 

リーダ ーに相談して、ケネディハウス(加瀬さん経営のライブハウス)で販売して頂いたくこと になり、加瀬さんの息子さんも協力してくれ ました。おかげで約5ヶ月弱で300万円ほど集まりました。そのお金を津波で流され てしまった船越学園に持って行きました。

 

自分が寄付したお金を誰がどこへ届けてどう使われているのか、分からないという 人が本当にたくさんいるんです。僕は全部管理して、利子も含めてすべて船越学園に 寄付しましたということをきちんと伝えた とこる、とても喜ばれました。キーボードを贈るというのは使い方がはっきり分かるの でいいと思います。東北の復興にはまだまだ時間がかかると思うので、これからもチ ャリティ活動は続けていきます」

 

-皆さんは音楽家ですから、音楽を通した もので支援と考えていらっしゃるのです ね。音楽は社会を変えるパワーがあると思 いますか?

加瀬

「あると思います。言葉がない原始時代 から、音楽に合わせて踊ったりしていたわけ ですから、これは人間の本能だと思います ね。僕の経営しているライブハウスも、震災の 後はお客さんが入らなかったんです。でも少ないお客さんがものすごく盛り上がるんですよ。

 

毎日テレビで暗いニュースを見ているの で、鬱積してストレスがたまってしまう、それ を音楽で発散しているのがよく分かりました。音楽の力で人を元気にできる。だから音 楽で社会を変えることができると思う。日本 は政治的にも難しい状況ですが、音楽で日本を変えていきたいなと色々考えています」

 

 

植田

「今、価値観が一気に変わってしまい ましたよね。日本人が信じていたお金や財産、社会的な立場などは、災害によって一気に逆転しまったわけです。根源的な価値観が今問われている。生きていく上で、自分 の哲学やポリシーがどこにあるかというの を日本人は考えていて、迷っている人や答えがない人がたくさんいると思います。

 

その 中で音楽や絵画という文化の力を通してで きることがあるはず。僕は震災の直後の3月13日に加瀬さん のライブハウスヘの出演が決まつていて、ど うするべきか悩んだのですが、“できればや ってほしい"ということで、お客さんが例えこれなくてもやりたいという気持ちが僕に もあったので、寝ないで曲を書いて、結局ラ イブを行いました。

 

当日は思ったよりもたくさんの方が来てくれて、すごく喜んでくれました。無理してもやって本当によかったで す。そういう経験ができたのは喪重でした。 自分たちがやってきたことが喜んでもら えることであり、ワイルドワンズに関しては、 それは音楽である。

 

お金を稼いで社会的な地位を築くのも大事ですが、自分のやって いることで人に喜んでもらえるというのは もっと大切なことなんですね。日本は戦後、 経済重視で進んできましたが、それは違う んじゃないか?と日本人は思い始めたと思 います。音楽で人の役にたてるし、影響を与える力もあると思いますね」

 


加瀬邦彦&ザ・ワイルドワンズ

1966年7月ザ・ワイルドワンズ結成(加山雄三命名)。同 年11月東芝EMIより「想い出の渚」でデビュー。ヒットチ ャー ト1位となる。その後 、シングル17枚、アルバム10枚 のビッグヒットを出す。毎年 、年間80~100ステージを精力的にこなしている。2006年に結成40周年記念コンサートを日本武道館にて開催。2009年加山 雄三氏と全国ツアー50ヶ所を成功させ、2010年ジュ リーwith ザ・ワイルドワンズで、シングル 「渚で シャララ」を発売。2011年3月~45周年全国ツアー 「想い出の渚で、シャララ」を開催中。


 

 

(日刊サン 2012.01.27)

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