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デジタル版・新聞

インタビュー

作曲家・歌手 水森英夫さん

歌ってはいけない、演歌・歌謡曲は「語る」もの

クラッシックと違って、演歌・歌謡曲は 「お喋り」なんです。お喋りの延長の声で、高 い所から低い所まで一定に出せるかどうか が重要です。これが皆できない、「歌って」し まうんです。 「歌う」というのは喉を作ってし まうということ。

 

例えば、「恋というのは不思議なものなんだ」という詞を歌うとき、喋 るようにそのまま歌えばいいのですが、 「こ いというものは、ふしぎなものなんだ」と抑揚をつけてしまう人がほとんどなんです。 20年30年も歌手をやっていて低迷して いる人の理由はハッキリしている。歌ってし まっているんです。

 

そういう歌手に作曲を 頼まれても、普通はそんなことは伝えませ んが、レッスンをつけて欲しいと頼まれた場 合はきちんと話します。そうすると、皆泣い てしまいます。自分のすべてが否定されて いる気持ちになってしまいますから。

 

でもね、16年やっていて全然売れなかっ た子に曲を頼まれた時に、「このまま歌って も売れないよ」と言ったことがあるんです。 「直してもいいか」と尋ねると 「ぜひお願い します」というので徹底的に鍛えたら、その 子は売れましたよ。

 

泣いて泣いて、床が濡 れるくらい泣きましたが、ものすごく良くな りました。彼女は本当に直そうと思ったんですよ。怒られても怒られてもちゃんと来ま したからね。 今の演歌の世界を相撲の世界に例える と、練習もさせないでうわべだけ才能があ る奴を土俵に上げているようなものなんで す。

 

僕は土俵に上げる前にシコとテッポウだけはちゃんとやらせます。シコとテッポウがちゃんとやれない限り、相撲をやれる体 にはなりません。だから、発声をキチッとや らないと歌を歌える体にはならない。それ をいつも言っているんです。

 

才能があるから ってすぐに士俵に上げても、体を壊して終わりです。 スカウトした子たちは厳しいレッスンが普通だと思っていますから、意外にすんな り伸びていきます。デビューしてしまって何 年も経っている人は初めて出くわす壁で すから大変です。

 

プライドもありますし。そういう子には「10分で5000人を完売する ような歌手にならなきゃ意味がないだろ う。500人しか呼べないままでずっとやっ ていてもしょうがないじゃないか」と僕は言 います。本当に見たい・会いたいと思わせる 歌手を作るには、それ<らいの努力が必要 なんですよ。

 

 

14歳で歌手デビュー •音楽の道に進む

12歳の時にテイチクレコードの全国オ ーディションがあり、歌手になりたかった 兄が 「お前の方が上手いから行ってこい」 と僕の名前で応募したんです。そのオーデ ィションで優勝し、すぐにデビューが決まり 6曲レコーデイングしました。

 

さあ発売!と いう時に 「変声期」が来てしまったんです ょ。もともと子供なのに太い声だったので、 もう変声期が過ぎているとまわりも思って いた。でもガラッと変わってしまったので、 変わる前の声でレコードを出すわけにもい かなくなってしまった。

 

それで皆が白けちゃ ったんですね。悔しくてね、東芝レコードに 行ってみて、結局14歳でデビューすること になりました。父親は銀行マンでしたが反対はしませんでしたね。自分が固い仕事を していたので、好きなことをやればいいとい う思いがあったんでしょうね。

 

デビューまではすんなり行きましたが、 流行歌というのは子供が歌ってはいけない んですね。中山晋平さんが「大人の歌があ ってもいいじゃないか」という考えで作った ものですから、大人が歌うものなんです。せめて高校卒業していなければいけないとい うのが、僕が弟子を取るときのひとつの基準です。

 

小学生・中学生も来ますが断りま す。僕自身が子供の頃にデビューして嫌な 思いをしているんです。間違えたなと思い ました。非常にいびつな経験をするんです。自分は子供なのにまわりは全員大人です から、大人の視線を考えるようになってし まう。そんな経験をする必要はないんです ね。

 

小学生は小学生の戦いがあるわけです から、その戦いをやってほしい。大人の駆け引きを子供が覚える必要はない。 親の方が子供にやらせたくてしょうがな いんですよ。子供に質問をしても親が全部答えてします。ちょっと待ってください。

 

僕は 子供に聞いているんです。彼がどんな答え 方をするのか見たいんですから。 今年は 「水森英夫門下生オーディショ ン」を7月に大阪で開催して4人スカウトし ました。9月には名古屋でオーディションを して2人スカウトしました。今いるんなこと を考えていで演歌のユニットを作りたいと も思っています。メチャクチャヘタだけども のすこく可愛い子たちを世に出したい (笑)。

 

僕は夢を追いかけているんです。皆さ んに 「スター」を届けたいんですね。会場で お客さんの顔を見ていると、スタ一を見た 時は皆幸せそうに笑っています。あの顔を 見ると 「絶対もうひとりスターを作るぞ!」 と思う。体が続く限りレッスンは続けます。

 

僕はひとりで弟子はたくさんいますから大 変ですが、そういう手作業が今は必要。時間も手間もかかりますが、夢があるから根気が持てる。そして楽しいんですよ、成長を 見るのは。

 

 


水森英夫(みずもりひでお)

作曲家歌手 1949年栃木県出身。12歳でテイチクレコー ドの新人歌手オー ディションで優勝、14歳で東芝からデビューを飾る。22歳で 「た った2年と2ヶ月で」(作曲:水森英夫/作詞:阿久悠)がヒットす る。 「敏いとうとハッピー&ブルー」の初期のメンバーとしても活 動している。70年代後半から作曲をメインに活動するようにな り、数え切れないほどの名曲を生み出す。門下生に氷川きよし· 森山愛子・山内惠介•音羽しのぶ・三代目コロムビアローズ・小 村美貴など多数。日本作曲家協会理事。


 

 

(日刊サン 2011.10.28)

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