ジョーカー

 10/24/2019

何度でも繰り返し観たくなる、中毒性の高い映画がある。個人的には、“レオン”や“フェイク”、“ダークナイト”などがそうで、本作も既にその殿堂入りだ。

 

大都会ゴッサム・シティで母と共に暮らす、優しく善良な心の持ち主アーサー・フレック。いつも人々を笑顔にしたいと願い、ピエロに扮して閉店セールの宣伝や小児病棟を訪れる仕事をしていた。

 

しかし、精神的な問題を抱えている上、笑いが止まらなくなる持病のせいもあり、ことごとく善意を撥ねつけられる。さらに、一生懸命働いているのに評価されず、むしろ頑張るほどドン底へと突き落とされていき、次第に彼の心は蝕まれていく。

 

ああ、転がるように堕ちていく、堕ちていく…ある意味、今まで観たどんなホラー映画より背筋がゾクゾクした。と同時に、この映画を公開して大丈夫なのか?とも感じた。

 

それは決して、過激な内容に触発されて事件が起きるのでは、と軍や警察が敷いた警戒態勢に納得したわけではない。

 

1999年に発生したコロンバイン高校銃乱射事件を基に、銃規制を訴え全米ライフル協会に突撃した映画“ボウリング・フォー・コロンバイン”の「やりすぎ感」に通ずるものがあり、つまり、ここまで社会問題―貧困から抜け出せない様や精神的な障害を持つ人への偏見、暴力をフィクションだと忘れさせるほど、リアルに深く切り込んだ描写が衝撃だったのだ。

 

なお、バットマンやジョーカーを知らなくとも心配いらない。あくまで、誰かから愛され認められたかったのに叶わず、己の存在意義を探していた男がなぜ大衆の求めるアンチヒーローとなってしまったのかという話であるから。

 

公開前からいくつもの懸念があったが、幸い今のところ何も起きていない。アメコミ視点で考えれば間違いなくジョーカーの“負け”である。そして、声を大にして言うがこれは殺人者の礼賛物語ではない。

 

観終えた後に高揚感を覚えるほど、ストーリーや音楽はもちろん主役のホアキン・フェニックスの演技が素晴らしい、映画史に残る名作だと。

 

 


●加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/ラストをどう捉えるかは人それぞれだと思います。アーサーの妄想癖を考えると…?こういう終わり方、大好きです。


 

 

(日刊サン 2019.10.24)


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