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美しい風の名前

古代から、日本人は四季の移ろいが生み出す微細な変化に五感を澄ませながら楽しんできました。雨や風など、季節や時間帯、降り方や吹き方によってそれぞれ名前があることからもその一端を窺い知ることができます。今回ご紹介する日本語の風の名前は、農業や漁業など自然の中で働く人々がつけたものを中心に2,000種類以上あるといわれています。

 

 

四季折々の風

 

あいの風(あいのかぜ)  日本海沿岸で春から夏にかけて吹く、北東から南東の風。別名「あゆの風」。

油風(あぶらかぜ  4月頃に吹く穏やかな南寄りの風で、油を流したように穏やかなことからこの名がついた。別名は「油まじ」「油まぜ」。「まじ」は南寄りの風のこと。

貝寄風(かいよせ) 春先に吹く冬の季節風のなごりで、多くは西風です。陰暦2月22日に大阪・四天王寺で行われる聖霊会(しょうりょうえ)では貝製の造花が供えられますが、貝寄風が難波の浦に吹き寄せた貝殻を使ったことが由来です。

花信風(かしんふう) 春、花の開花を知らせる風。

光風(こうふう) 晴れた春の日に吹く爽やかな風。または、雨あがりに草木の間を吹き渡る風。

谷風(こくふう) 春先に吹き、万物を生長させるという東風。別称「穀風」。谷を吹く風や谷底から吹き上げる風も谷風といいます。

東風(こち) 春の東風。朝東風(あさごち)、梅東風(うめごち)、桜東風(さくらごち)、雲雀東風(ひばりごち)などさまざまな呼び方があります。春以外の季節に吹く東からの風を指すこともあります。

桜まじ(さくらまじ) 桜が開花する時期に吹く暖かい南風。旧暦3月3日前後に吹き、吹くと晴天が続くため、昔は行楽日和の目安とされました。「三月桜まじ」ともいいます。 花嵐(はなあらし) 桜が満開の頃、花を散らすように吹く強い風。 春疾風(はるはやて) 春先に吹く強い南風で、雨混じりのこともある。別称「春嵐(しゅんこう/はるあらし)」、「春荒(はるあれ)」。 春一番(はるいちばん) その年の初春、初めて吹く強い南風。

和風(わふう) 穏やかな春の風。

 


春の閑話 

東風と飛梅伝説   東風吹かばにほいおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ

 

 

太宰府天満宮の飛梅

 

 これは、平安時代の貴族・菅原道真が詠んだ歌です。901年、藤原時平との政争に敗れた道真は醍醐天皇によって京都から大宰府へ左遷されてしまいました。その際、屋敷の庭の梅を眺めながら和歌を読み、都との別れを惜しみました。その梅が、京の都から1晩で道真の住む太宰府の屋敷の庭へ飛んで来たという伝説「飛梅(とびうめ)」をご存知でしょうか。

 その時に飛んできたという白梅の木が、現在も福岡県の太宰府天満宮の神木として祀られています。3株から成る飛梅の木の樹齢は1000年超。太宰府天満宮の本殿の前に植えられており、ほかのどの梅の木よりも先に花が咲き始めるといわれています。


 

 

青嵐(あおあらし/せいらん) 青葉の頃に吹きわたる、やや強い南風。

青田風(あおたかぜ) 青々とした水田の上を吹きわたる風。

温風(あつかぜ) 夏に吹く熱い風。

荒南風(あらはえ) 梅雨の最盛期に吹く強い南風。

光風(こうふう) 晴れた春の日に吹く爽やかな風。または、雨あがりに草木の間を吹き渡る風。

温風(おんぷう) 陰暦の晩夏に吹く暖かい風

凱風(がいふう) 初夏に吹く南向きのそよ風。

黒南風(くろはえ) 梅雨入りの頃、どんよりとした黒い雨雲の下を吹く南風。

薫風(くんぷう) 初夏、若葉の香りを運ぶ風。初夏の新緑が香るような風。「緑風」とも。

夏至夜風(げしよかぜ) 夏至の夜に吹く風。梅雨の時期のため、湿り気のある涼風が多いです。

黄雀風(こうじゃくふう) 陰暦5月に吹く東南の風。この名前は、この風が吹く頃、海魚が黄雀(すずめ)に変わるという中国の俗説が由来。

白南風(しろはえ/しらはえ) 梅雨明けに吹く南寄りの風。

流し(ながし) 梅雨の前後に吹く、湿り気を帯びた南風。初夏の木の芽どきに吹くことから「木の芽流し」、茅(ちがや)の花穂の咲く頃に吹くこのから「茅花流し(つばなながし)」とも呼ばれます。

盆東風(ぼんごち) 夏の終わりに吹く東風で、暴風雨の前兆。元は伊勢の鳥羽や伊豆の船人が使う言葉でした

若葉風(わかばかぜ) 若葉の頃に吹く風。

 


 

夏の閑話

夏の上賀茂神社 風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける

 

 これは、鎌倉時代初期の歌人、藤原家隆が詠んだ歌です。「楢の葉に風が吹きそよぐ、このならの小川の夕暮れは秋のように感じられるが、六月祓(みなづきばらえ)のみそぎだけは夏であることを教える証であることよ」という意味があります。「ならの小川」は京都市の上賀茂神社の近くを流れる御手洗川のことで、ブナ科の木の「楢」がかけられています。「六月祓」とは、旧暦6月30日に執り行われる神事のことで、心身の穢れや災厄の原因になる罪を祓い清める儀式。「名越の祓」「夏越神事」とも呼ばれ、現在でも各地の神社で行われているこの神事は、年に2回ある「大祓(おおはらえ)」のうちのひとつ。大祓とは、イザナギノミコトの禊祓(みそぎはらい)を起源とする神事で、701年には宮中の年中行事として定められていました。

 

『上賀茂六月祓』 出典:国際日本文化研究センター http://lapis.nichibun.ac.jp/gyouji/gyouji_64.html


 

 

 

秋風(あきかぜ/しゅうふう) 秋に吹く涼しい風。商風(しょうふう)とも。「飽き」にかけて、男女間の愛情が冷めることをたとえたりもします。

色無き風(いろなきかぜ) 秋の風。中国の五行思想で秋に白を配することが名前の由来。

いなさ 南寄りの暴風。大雨を伴う台風の時期の風で、海の大時化を招く。「辰巳の風」とも。

雁渡し(かりわたし) 初秋、雁が渡って来る頃に吹く北風。

金風(きんぷう) 秋に吹く、稲穂をゆらす風。

野分(のわき) 秋、野の草を分けながら吹きすさぶ暴風、強風、台風のこと。

荻風(はぎかぜ) 秋の七草のひとつ、荻を揺らす吹く風。萩月(旧暦8月)頃に吹く風。

初嵐 秋の初めに吹く強い風。季節の最初に吹く風を指すことも。

悲風(ひふう) 悲しみを誘うように吹く風。特に秋の風のことをいいます。

 


秋の閑話

なかんじょだいこんと秋の風 身にしみて 大根からし 秋の風

 

 松尾芭蕉の『更級紀行』の中の一句です。1688年8月11日、45歳の芭蕉は現在の長野県千曲市にある「姥捨の月」を鑑賞しようと、従者の越人を伴い美濃の国(現・岐阜県)を発ちました。芭蕉は8月15日に姥捨の月を観た後、坂木宿本陣宮原拾玉邸に招かれました。その際、土地の特産で、辛味と微かな甘味が特徴の「中之条大根(なかんじょだいこん)」を「おしぼりうどん」と共に食し、この句が詠まれたといわれています。その後、芭蕉は善光寺に参詣して江戸に帰りました。

 

「おしぼりうどん」と「なかんじょ大根」の汁


 

 

陰風(いんぷう) 冬の北風。朔風ともいいます。陰気さを感じる風という意味も。

颪(おろし) 冬に山から吹き降りる冷たい強風。「六甲颪」「蔵王颪」など、前に山の名前が付きます。

空風(からっかぜ) 山を超えて吹きつける下降気流で、冷たく乾いた風。関東・東海地方の冬の季節風。

寒風(かんぷう) 冬の寒い風。

凩/木枯らし 晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き散らすように吹く冷たい北よりの強風。「凩」は日本固有の漢字で、風の省略形「几」と「木」を合わせ、意味を持たせた会意文字です。

浚いの風(さらいのかぜ) 降り積もった雪を吹き散らしたり、物を吹きさらう風。

霜風(しもかぜ) 霜の上を渡ってくる風。霜の降りそうな寒々しい風。

 


 

冬の閑話

凩に落とされる夕陽 凩や 海に夕日を 吹き落す

 

 文豪・夏目漱石が詠んだ一句です。瞬く間に日が沈む「つるべ落とし」を表現したもので、正岡子規に送った句稿「その21」の冒頭に記されています。「弱々しいもの全てを吹き飛ばしてしまいそうな木枯しが、冬の穏やかな夕日をも吹き飛ばし海に落としてしまう」という意味があります。明治29年11月中旬、漱石は英語教師をしていた熊本第五高等学校(現・熊本大学)の修学旅行の引率で天草島原へ行き、この句を詠みました。句の中の「夕日」は、富岡城付近から眺めた東シナ海の落日といわれています。


 

 

場所・方角による風の名前

 

あおぎた 8〜9月ごろの西日本で、晴天の夜、急に冷えて吹く北風のこと。「あおげたならい」「青北風」ともいいます。

 

明日香風(あすかかぜ) 明日香地方(現・奈良県高市郡明日香村大字飛鳥)に吹く風。

 

家風(いえかぜ) 自宅の方角から吹く風。

 

いぶき 滋賀・岐阜県境の伊吹山周辺に吹くさまざまな風。何日も吹き続ける風「居吹き」が名前の由来です。

 

岩おこし 3月ごろ、広島県で吹く西の風。

 

浦風(うらかぜ) 入江や海辺に吹く風。「浜風」とも。

 

浦山風(うらやまかぜ) 海辺に近い山から吹き下ろす風。「地嵐(じあらし)」とも。

 

上風(うわかぜ) 草木、特に萩の上を吹き渡る風。

 

沖つ風(おきつかぜ) 海の沖を吹く風。沖から吹いてくる風。

 

おぼせ 4月ごろ穏やかな日和に、淡路、伊勢、伊豆などで吹く南風。

 

オロマップ 北海道・日高山脈の南麓に吹く強風。日高山脈は北海道中央南部にある道内唯一の山脈で、長さは約150km。

日高山脈中部の稜線

 

玉風(ぎょくふう) 東北・北陸地方の日本海沿岸で、冬に北西から吹く暴風。「たばかぜ」とも。

 

下り(くだり) 夏、京都から東へ下るのに都合のよい季節風のこと。逆向きの風は「上り」。日本海沿岸では南寄りの風を意味します。

 

木の下風(このしたかぜ) 木の下を吹き渡る風。

 

佐保風(さおかぜ) 奈良の佐保辺りを吹く風。

 

鹿の角落とし 山口県で2、3月の晴れた日に吹く南西の風。

 

下風(したかぜ) 地面の近くや樹木などの下に吹く風。

 

しゆたらべ 喜界島で梅雨の前に吹く湿気を含んだ南風。喜界島は鹿児島県奄美群島の北東部にある島。

 

晴嵐(せいらん) 晴れた日に山に吹く風や、山にかかる霞のこと。

 

出し風(だしかぜ) 山から吹き降り、沖へ向う風。山から吹き出す風、船出に便利な風ということが名前の由来。北海道後志支庁寿都(すっつ)の「寿都のだし風」など。山形県庄内地方の「清川だし」、新潟県北部の「荒川だし」が有名。

清川だしを利用した風力発電(山形県庄内町)

 

筑波東北風(つくばならい) 筑波山の方から吹いてくる北風。筑波山は茨城県つくば市の北にある標高877mの山で、筑波山神社の境内地。西側の男体山(標高871m)と東側の女体山(標高877m)から成っています。

 

時津風(ときつかぜ) 時節にかなう風、程よい風、順風。または、満潮の時刻に吹く風。

 

都市風(としかぜ) 都市に特有の風。郊外に比べて温度の高い都市部では、上昇気流が起こることで局地的に低気圧の部分が生まれ、そこに郊外からの風が吹き込むことがあります。

 

ならい風 東日本の海沿いで、冬に吹く強い風。地方によって風向きはさまざま。

 

鳰の浦風(におのうらかぜ) 滋賀県にある琵琶湖の上を吹く風。 初瀬風(はつせかぜ)  冬、奈良・三重県境にある高見山の西麓で吹く強風。 平野風(ひらのかぜ) 冬、奈良・三重県境にある高見山の西麓で吹く強風。 広戸風(ひろとかぜ) 岡山・鳥取県境の那岐山(なぎさん)南麓に吹く強風。日本3大局地風の1つ。

 

星の入東風(ほしのいりこち) 中国地方で初冬に吹く北東の風。昴(すばる)が沈む明け方に吹きやすいことから、この名前が付きました。

昴はおうし座のプレアデス星団の和名。M45とも。秋から春先にかけて観測でき、肉眼でも5〜7個の星の集まりが見える。

 

松風(まつかぜ) 松の木を揺らす風。「松籟(しょうらい)」「松韻(しょういん)」ともいいます。

 

まつぼり風 熊本県・阿蘇山の火口原にたまった冷気が、外輪山から熊本平野へ吹き出す強風で、4、5、9、10月に多く発生します。夜の放射冷却によって火山原に冷気がたまり、その西にある外輪山の一部を分断する谷に沿って流れ出します。「まつぼり」には「余分」「へそくり」などの意味があります。

 

真艫(まとも) 船の船尾の方向から吹く風。

 

八重の潮風(やえのしおかぜ) 遥か遠くの海から吹いてくる風。

 

 

強さによる風の名前

 

あかしま風 暴風のこと。「あからしま風」とも。

 

韋駄天台風(いだてんたいふう) 速い速度で進む台風。

 

颶風(ぐふう) 台風のこと。昔の気象用語では風速32.7メートル以上の風を指しました。

 

勁風(けいふう) 強風のこと。

 

黒風(こくふう) 砂塵を巻き上げ、空を暗くするようなつむじ風。

 

至軽風(しけいふう) ビューフォート風力階級で最も弱い風。ビューフォート風力階級とは、風力を分類するために使う風速の尺度。

 

風巻(しまき) 激しく吹く風。雨・雪などを交えて激しく吹く風。

 

卓越風(たくえつふう) いつも吹くような風。「常風」ともいいます。

 

天狗風(てんぐかぜ) 急に吹き降ろす旋風。

 

飄風(ひょうふう) 急に起こる激しい風。

 

雄風(ゆうふう) 勢いがよく、すがすがしい風。

 

 




【参考URL】2020年1月21日アクセス ・風の辞典 http://accent.main.jp/kaze/kensaku.htm ・季語とこよみ「夏の風の季語」https://floweryseason.com/natsu-kaze/ ・野草の庭・茶庭作り 風「風の名前」https://28fuwari.com/kazenonamae/ ・日本文化研究ブログ「夏の短歌30選」https://jpnculture.net/tanka-natsu/ ・コトバンク https://kotobank.jp 

【画像出典】 Public Domain, Wikipedia, Pixabay, Shutterstock 他

 

(日刊サン 2020.1.25)

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