違いを知って賢く選ぶ 繊維と布

 11/18/2018

読者の皆様は、洋服や寝具、タオルなどの布製品を買う際、付いているタグを確認されるでしょうか?タグには、コットン、シルク、ポリエステル、レーヨンなど、さまざまな表記があります。洋服を買う際など、一般にデザインや着心地、似合うかどうかの確認はしますが、タグに表記されている繊維については、それほど追求しないのではないでしょうか。今回は、私たちの生活に欠かせない布製品のタグで見かける繊維について、詳しくご紹介したいと思います。

繊維の種類

繊維には、大きく分けて、植物、動物、鉱物などの天然素材から作られ、化学的な加工がされていない天然繊維と、化学的なプロセスを経て作られる化学繊維があります。

天然繊維

植物繊維

綿

 

アオイ科ワタ属の多年草、綿の種子の周りから取れる繊維のことで、木綿ともいいます。長所として、肌触り、吸水性、通気性のよさ、熱とアルカリへの耐性、洗濯に強いこと、染色性と発色性に優れていること、安価なものが多いことが挙げられます。一方で、短所としては、皺になりやすいこと、濡れると地の目方向に縮むこと、乾きが遅いこと、長時間日光に当たると黄色くなることなどがあります。

 

綿栽培の世界史

世界で初めて木綿が栽培されたのは、約8000年前のメキシコ。その時の木綿は現在まで引き継がれており、世界の綿の約90%は古代メキシコで栽培されていた木綿にルーツを持っています。紀元前5000年頃に興ったインダス文明でも綿栽培が行われた痕跡があり、インダス文明最大の都市遺跡、モヘンジョ・ダロからは、紀元前2000年頃の綿布が出土しています。綿の産地で有名なエジプトでは、紀元前200年頃から綿が利用され始め、栽培が始まったのはそれからずっと後の13世紀頃と考えられています。また、南アメリカでは、紀元前1500年頃から、古代ペルー人やブラジル原住民が綿を利用していました。アメリカで綿が栽培され始めたのは1740年頃。イギリス人がパナマで栽培したインド綿の種がバージニア地方に伝わったのが始まりと言われています。中国へは、後漢(57~75年)時代にインドから伝わりました。栽培が始まったのは南宋(1125−1162)時代と言われています。

 

日本の綿栽培

日本では、平安時代初期の799年、三河国(現在の愛知県)に漂着した崑崙人(こんろんじん・現在のインド人と言われる)がもたらした綿の種子で、最初の綿栽培が始まったとされています。その後栽培は一旦途切れ、綿は大陸からの輸入で賄われていました。本格的な栽培が始まったのは、16世紀末の安土桃山時代。江戸時代に入ると、各地に綿花の生産地帯が形成され、特に大阪近郊での生産が盛んでした。それに伴って木綿問屋が出現し、綿の染料の藍、栽培肥料の干鰯、鰊粕(にしんかす)の生産などの関連産業も盛んになっていきました。

参考:『大百科事典』第15巻(平凡社・1985年)

 

繊維と布の話① 羊のなる植物、バロメッツ

バロメッツ(Barometz)とは、中国やモンゴルの荒野に分布するといわれた伝説の植物のことです。「羊の入った実」がなるといわれ、スキタイの羊、ダッタン人の羊とも呼ばれていました。正式名は「プランタ・タルタリカ・バロメッツ」。時期が来ると羊の実がついて、採取して割ると子羊が収穫できるものの、その羊は生きていないとされました。実が熟すまで待ち、自然に割れるまで放置しておくと、メーと泣きながら生きた羊が顔を出すと考えられていました。その羊は、茎と繋がったまま周囲の草を食べ、近くに畑があれば食い散らかし、周囲の草がなくなると木とともに死にます。季節になると、死んだ羊がバロメッツの周囲に山積みになるため、それを求めて狼や人が集まって来ると考えられていました。

 

バロメッツの羊は、蹄まで羊毛なので無駄な部分があまりなく、中には金色の羊毛もある。そしてその羊の肉は、カニの味がするとされていました。バロメッツから採れる羊毛とは、実は木綿のことでした。中世のヨーロッパ人は、木綿を使っていたものの、それがどのように作られるか知る人はあまりいませんでした。そこで「綿の採れる木」を「ウールを産む木」だと解釈し、バロメッツという架空の植物が作られたと言われています。

 

 

麻植物の柔繊維、葉茎などから採取される繊維のことで、大麻から作られるヘンプ、亜麻(アマ)から作られるリネン、苧麻(チョマ)から作られるラミーがあります。麻の長所として、通気性、吸水性がよい、美しい光沢がある、洗濯に強い、引っ張りに強いことなどがあります。また短所としては、シワになりやすい、カビに弱い、毛羽立ちやすい、硬い、伸縮性がない、保湿性がないことが挙げられます。このことから、よく夏の衣料に使われます。ハワイでは通年活躍できそうですね。

 

古代から使用されていた大麻繊維

 

奈良県の春日大社にある大麻の祓串

 

大麻は、世界最古の繊維植物と言われています。日本でも縄文時代の遺跡から麻の縄や籠などが発掘されており、日本の神話などにも度々登場します。日本最古の歴史書『古事記』の天岩戸伝説には、麻布を意味する「丹寸手(にぎて)」として麻が登場しており、「真榊の上枝に八尺勾魂(やさかのまがたま)、中枝に八咫鏡(やたのかがみ)、下枝に白丹寸手、青丹寸手をくくりつけて布刀御幣(ふとみてぐら)として捧げ、祝詞を唱えながら踊ったところ、岩戸から天照大神が出て来て世が再び明るくなった」と記されています。  奈良時代頃からは麻の繊維でできた紙「麻紙(まし)」も使われ始め、現存する正倉院の献物帳には、白、緑、碧、赤、黄など、さまざまな色の麻紙が見られます。その他、日本伝統の大麻繊維の用途としては主に以下のものがあります。

 

【神具】大麻(おおぬさ)、宝物箱を封じる麻紐、注連縄、たすき掛けにしたり頭に巻く「木綿襷(ゆうだすき)」「木綿鬘(ゆうかずら)」、御饌をくくる紐、紙と麻繊維を細かく切った切麻(きりぬさ)、大嘗祭の麁服(あらたえ)など。

【武道】弓道の弓の弦、横綱の化粧まわしなど。

【生活】畳の経糸、蚊帳、麻紙、漁網、釣り糸、麻袋、籠など。

 

麻に似ている繊維

【ジュート】シナノキ科に属するコウマ、シマツナソという植物から作られる。 【ケナフ】アオイ科のケナフという植物から作られる。

 

動物繊維

 

 

蚕の繭から採取した繊維のことです。主成分は、蚕が体内で作るたんぱく質のフィブロイン。1個の繭からは800〜1200メートルもの長い糸が取れるため、織物に向いています。また、養蚕の繭から作る家蚕絹と、野性の繭から作る野蚕絹があります。

 

生糸と練糸

 

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