【特集記事】美しい風の名前

 01/26/2020

古代から、日本人は四季の移ろいが生み出す微細な変化に五感を澄ませながら楽しんできました。雨や風など、季節や時間帯、降り方や吹き方によってそれぞれ名前があることからもその一端を窺い知ることができます。今回ご紹介する日本語の風の名前は、農業や漁業など自然の中で働く人々がつけたものを中心に2,000種類以上あるといわれています。

 

 

四季折々の風

 

あいの風(あいのかぜ)  日本海沿岸で春から夏にかけて吹く、北東から南東の風。別名「あゆの風」。

油風(あぶらかぜ  4月頃に吹く穏やかな南寄りの風で、油を流したように穏やかなことからこの名がついた。別名は「油まじ」「油まぜ」。「まじ」は南寄りの風のこと。

貝寄風(かいよせ) 春先に吹く冬の季節風のなごりで、多くは西風です。陰暦2月22日に大阪・四天王寺で行われる聖霊会(しょうりょうえ)では貝製の造花が供えられますが、貝寄風が難波の浦に吹き寄せた貝殻を使ったことが由来です。

花信風(かしんふう) 春、花の開花を知らせる風。

光風(こうふう) 晴れた春の日に吹く爽やかな風。または、雨あがりに草木の間を吹き渡る風。

谷風(こくふう) 春先に吹き、万物を生長させるという東風。別称「穀風」。谷を吹く風や谷底から吹き上げる風も谷風といいます。

東風(こち) 春の東風。朝東風(あさごち)、梅東風(うめごち)、桜東風(さくらごち)、雲雀東風(ひばりごち)などさまざまな呼び方があります。春以外の季節に吹く東からの風を指すこともあります。

桜まじ(さくらまじ) 桜が開花する時期に吹く暖かい南風。旧暦3月3日前後に吹き、吹くと晴天が続くため、昔は行楽日和の目安とされました。「三月桜まじ」ともいいます。 花嵐(はなあらし) 桜が満開の頃、花を散らすように吹く強い風。 春疾風(はるはやて) 春先に吹く強い南風で、雨混じりのこともある。別称「春嵐(しゅんこう/はるあらし)」、「春荒(はるあれ)」。 春一番(はるいちばん) その年の初春、初めて吹く強い南風。

和風(わふう) 穏やかな春の風。

 


春の閑話 

東風と飛梅伝説   東風吹かばにほいおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ

 

 

太宰府天満宮の飛梅

 

 これは、平安時代の貴族・菅原道真が詠んだ歌です。901年、藤原時平との政争に敗れた道真は醍醐天皇によって京都から大宰府へ左遷されてしまいました。その際、屋敷の庭の梅を眺めながら和歌を読み、都との別れを惜しみました。その梅が、京の都から1晩で道真の住む太宰府の屋敷の庭へ飛んで来たという伝説「飛梅(とびうめ)」をご存知でしょうか。

 その時に飛んできたという白梅の木が、現在も福岡県の太宰府天満宮の神木として祀られています。3株から成る飛梅の木の樹齢は1000年超。太宰府天満宮の本殿の前に植えられており、ほかのどの梅の木よりも先に花が咲き始めるといわれています。


 

 

青嵐(あおあらし/せいらん) 青葉の頃に吹きわたる、やや強い南風。

青田風(あおたかぜ) 青々とした水田の上を吹きわたる風。

温風(あつかぜ) 夏に吹く熱い風。

荒南風(あらはえ) 梅雨の最盛期に吹く強い南風。

光風(こうふう) 晴れた春の日に吹く爽やかな風。または、雨あがりに草木の間を吹き渡る風。

温風(おんぷう) 陰暦の晩夏に吹く暖かい風

凱風(がいふう) 初夏に吹く南向きのそよ風。

黒南風(くろはえ) 梅雨入りの頃、どんよりとした黒い雨雲の下を吹く南風。

薫風(くんぷう) 初夏、若葉の香りを運ぶ風。初夏の新緑が香るような風。「緑風」とも。

夏至夜風(げしよかぜ) 夏至の夜に吹く風。梅雨の時期のため、湿り気のある涼風が多いです。

黄雀風(こうじゃくふう) 陰暦5月に吹く東南の風。この名前は、この風が吹く頃、海魚が黄雀(すずめ)に変わるという中国の俗説が由来。

白南風(しろはえ/しらはえ) 梅雨明けに吹く南寄りの風。

流し(ながし) 梅雨の前後に吹く、湿り気を帯びた南風。初夏の木の芽どきに吹くことから「木の芽流し」、茅(ちがや)の花穂の咲く頃に吹くこのから「茅花流し(つばなながし)」とも呼ばれます。

盆東風(ぼんごち) 夏の終わりに吹く東風で、暴風雨の前兆。元は伊勢の鳥羽や伊豆の船人が使う言葉でした

若葉風(わかばかぜ) 若葉の頃に吹く風。

 


 

夏の閑話

夏の上賀茂神社 風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける

 

 これは、鎌倉時代初期の歌人、藤原家隆が詠んだ歌です。「楢の葉に風が吹きそよぐ、このならの小川の夕暮れは秋のように感じられるが、六月祓(みなづきばらえ)のみそぎだけは夏であることを教える証であることよ」という意味があります。「ならの小川」は京都市の上賀茂神社の近くを流れる御手洗川のことで、ブナ科の木の「楢」がかけられています。「六月祓」とは、旧暦6月30日に執り行われる神事のことで、心身の穢れや災厄の原因になる罪を祓い清める儀式。「名越の祓」「夏越神事」とも呼ばれ、現在でも各地の神社で行われているこの神事は、年に2回ある「大祓(おおはらえ)」のうちのひとつ。大祓とは、イザナギノミコトの禊祓(みそぎはらい)を起源とする神事で、701年には宮中の年中行事として定められていました。

 

『上賀茂六月祓』 出典:国際日本文化研究センター http://lapis.nichibun.ac.jp/gyouji/gyouji_64.html

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