和紙の世界

 11/30/2018

 

江戸時代 和紙文化の成熟

 

製紙技術のさらなる発達により、全国各地で和紙の大量生産が行われるようになりました。生産量が大幅に増すと共に一般庶民も紙を使うようになり、紙の需要は飛躍的に伸びていきました。和紙は筆記用具としてだけでなく、障子や襖などの建具、傘、着物、鼻紙などあらゆるものに使用され、江戸時代の庶民の生活になくてはならないものでした。江戸時代後期の経済学者、佐藤信淵は「紙は一日もなくては叶わざる要物」という言葉を残しています。  一方で、出版業が発展したことも紙の需要が大きく伸びた理由の1つでした。元禄年間(1688〜1704)には浮世草子が隆盛を極め、洒落本、人情本、滑稽本、談義本、黄表紙などが流行。京都で始まった出版業は、江戸、大坂へと拡大していきました。

 

 

 

原材料と種類

麻 ― バラ目アサ科アサ属

麻紙(まし)麻紙の抄紙技術は日本で最も古く、一説には3〜4世紀頃から作られ始めたと言われています。原料は、麻の種類の中でも大麻(ヘンプ)や苧麻(ちょま・ラミー)が多く使われます。衣服などとして使った後の古い麻布や漁網を細かく刻み、それを煮つめるか臼で擦り潰し、さらに漉いて作られました。漉き上がった麻紙は、「紙砧」という紙を平らにするための槌で打つ工程を経て、巻貝や石、動物の牙などで磨かれました。また、遊水現象と呼ばれる墨のにじみを防ぐため、陶土、石膏、石灰などの白い鉱物性の粉末や、澱粉の粉末が塗布されることもありました。

 

楮(こうぞ)― バラ目クワ科コウゾ属

の皮の繊維は、古代から現代まで和紙の原料として使われ続けています。古くは「紙麻(かみそ)」と呼ばれ、楮の名の語源になったという説もあります。楮の紙は粘りがあり、強く揉んでも破れにくいことが特徴です。 穀紙(こくし)  楮を原材料とした和紙です。若枝の樹皮の繊維を煮詰めて漉き、製紙されます。麻紙に比べ、扱いが簡単で増産に適しています。繊維が長く丈夫なため、昔は写経用紙、政の記録用紙、建築材料などとして使用されました。

 

桑(くわ)― バラ目クワ科クワ属

紙の原料として外皮の下にある柔らかい内皮「靭皮」の繊維が利用された他、葉は蚕の餌、実は食用として古代から親しまれてきました。 桑紙  桑を原料とした和紙で、桑皮紙(そうひし)、桑枝紙(くわえだがみ)とも呼ばれます。飛鳥時代、既に桑紙が作られていたといわれており、江戸時代初期の文献などにも桑紙のことが記されています。麻や楮に比べてあまり一般化しませんでしたが、その理由として、原料と製品の分量の割合「歩留まり」がよくないこと、葉が養蚕のために使われたことなどがあると考えられています。

 

三椏(みつまた)― フトモモ目ジンチョウゲ科ミツマタ属

三椏という名前は、木の枝分かれの部分が3つになることからつけられました。日本固有の製紙原料として使用され始めたのは室町時代(1336-1573)頃、生産物として栽培され始めたのは、江戸時代(1603-1868)後期の静岡県、山梨県といわれています。現在、生産量が最も多いのは岡山県。印刷に向いているため、大蔵省印刷局に納品され、世界一の品質といわれる日本のお札の原料として使用されています。 三椏紙(みつまたがみ)  三椏紙の歴史は江戸時代前期に遡ります。楮や雁皮の代替品として使われた三椏紙は、甲斐国(山梨県)や駿河国(静岡県)で作られ、「駿河半紙」と呼ばれていました。江戸時代後期、駿河国で三椏の群生地が発見され、本格的な生産が当地で開始されたと言われています。このことから、静岡県富士宮市には、お札の原料として三椏を仕入れている大蔵省印刷局が建立した記念碑があります。

 

雁皮(がんぴ)― フトモモ目ジンチョウゲ科ガンピ属

日本独自の製紙原料として奈良時代から利用されており、「カミノキ」という別名があります。 斐紙(ひし)  雁皮を原料とした紙で、「雁皮紙」「鳥の子紙」とも呼ばれます。繊維が短くきめ細かで、半透明で艶があることが特徴です。平安時代(794-1185)には薄様、中様、厚様の3種類の斐紙が流行しました。この時代の上流階級の人々は、男性は厚手の檀紙を、女性は薄様の斐紙を懐紙として使っていたといいます。また、かな文字を書くのに相応しい紙として女性たちに愛用されていました。

 

檀(まゆみ)― ニシキギ目ニシキギ科ニシキギ属

日本独自の製紙原料として奈良時代から利用されており、「カミノキ」という別名があります。 斐紙(ひし)  雁皮を原料とした紙で、「雁皮紙」「鳥の子紙」とも呼ばれます。繊維が短くきめ細かで、半透明で艶があることが特徴です。平安時代(794-1185)には薄様、中様、厚様の3種類の斐紙が流行しました。この時代の上流階級の人々は、男性は厚手の檀紙を、女性は薄様の斐紙を懐紙として使っていたといいます。また、かな文字を書くのに相応しい紙として女性たちに愛用されていました。

 

檀(まゆみ)― ニシキギ目ニシキギ科ニシキギ属

古代から、若い枝の樹皮繊維が製紙に使われた他、強くしなる材質のため弓の材料として使われてきました。現在は印鑑や櫛の材料にもなっています。新芽は食用になり、おひたしや天ぷらにして食べられています。

檀紙(だんし)白色・厚手の和紙で、ちりめん状のしわがあることが特徴です。「陸奥紙」「みちのくのまゆみ紙」とも呼ばれます。楮を原料とした檀紙様の和紙を檀紙と呼ぶこともあります。平安時代に書かれた『源氏物語』や『枕草子』にも陸奥紙として登場する他、江戸時代は徳川将軍の朱印状にも用いられていました。

 

苦参(くじん)― マメ目マメ科クララ属

苦参は一般に「クララ」と呼ばれ、その防虫効果が和紙に応用されたと言われています。根は生薬になり、消炎、健胃作用などがある苦参湯という漢方方剤として使われています。全草を煎じた汁は、農作物の害虫駆除、家畜の皮膚寄生虫駆除にも使われます。 苦参紙  苦参紙は、平安時代注記に編纂された格式『延喜式(えんぎしき)』の中の「図書寮(ずしょりょう)式」に製紙の方法が規定されています。しかし、紙の製法などが詳しく記された『正倉院文書』を始め、その他の文献には全くみられず、幻の紙と言われています。

 

蕗(ふき)― キク目キク科フキ属

春先に見られる蕗の薹(フキノトウ)は蕗の芽(花茎)のことです。雌雄異花で、受粉後の雌花には綿毛のついた種が付き、タンポポの綿毛のように飛ばされます。 富貴紙  山菜としての蕗が有名な北海道音別町の特産品です。かつて、音別町の山菜加工施設からは年間30トンもの蕗皮が廃棄されていました。しかし、蕗皮には良質なパルプが含まれていることから漉き上げの技術が開発され、和紙の原料として利用されるようになりました。

 

MEMO

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