北海道の先住民族 アイヌの文化

 03/09/2019

アイヌ民族は、日本の北海道、東北地方北部、樺太、千島列島にも居住していた少数民族。アイヌの祖先は日本列島の北方に住んでいた縄文人と考えられています。中央から隔離された土地柄、弥生時代以降も生活様式などに大きな変化がないまま中近世になり、13世紀頃にアイヌ民族としてのアイデンティティを確立したという説が有力です。今回のエキストラ特集では、生活の基盤となる食生活を中心にアイヌ民族独自の文化や言語をご紹介したいと思います。

 

 

アイヌ民族とは

アイヌは元々、狩猟、漁猟、山や海での採集を中心に、農耕や交易も行うという複数の生業を組み合わせて生活する民族でした。ロシア南東を流れるアムール川下流域やカムチャツカ半島などオホーツク海一帯で、猟や漁で得た海産物や毛皮などを用いて交易し経済圏を形成していました。現在は北海道と首都圏に合わせて約2万人のアイヌ民族がいるといわれています。

 

擦文文化からアイヌ文化へ  

擦文(さつもん)文化とは、7〜13世紀頃(飛鳥時代〜鎌倉時代)にかけ、北海道地方で栄えた文化です。13世紀頃、擦文文化と元来のアイヌ文化が融合した形でアイヌ文化が成立したと考えられています。

 

人間を意味する「アイヌ」  

アイヌ語で人間を意味する「アイヌ」は、自然界すべてのものに宿る魂、すなわち神を指す「カムイ」に対する人間という意味でした。アイヌの社会では、「アイヌ」は行いのよい人にだけ使われる言葉でした。アイヌの対義語は「ウェンペ」。健康なのに働かず、生活に困るような人に使われる言葉でした。

 

地域ごとの呼称  

カナダのファースト・ネイションやアメリカの先住民のように、アイヌも地域によって異なる集団社会と文化を形成していました。北海道の太平洋岸東部に居住していたアイヌは「メナシクル」、太平洋岸西部のアイヌは「シュムクル」、千島列島のアイヌは「クルムセ」または「ルートムンクル」など、住む地域によって、互いに違う名称で呼び合っていました。

 

アイヌのアニミズム  

アイヌ土着の信仰は、古代ハワイの信仰や神道のように、動物、植物、日用品、自然現象、病など、全てのものには「ラマッ」という魂が宿っているという考えに基づくアニミズム信仰でした。アイヌ信仰の中心とされた熊は「神が毛皮と肉を携えて人間界に現れたもの」と考えられていました。アイヌでは、集落で大切に飼育した熊を殺し、その魂であるカムイを天界へ送り返す「イオマンテ」という儀式が行われ、ヌサと呼ばれる祭壇にはヒグマの頭骨が祀られました。一部の地域では、シマフクロウやシャチをイオマンテの対象としていました。

 

イオマンテを行うアイヌの男性たち(1930年)

 

アイヌ語

アイヌ語(アイヌ・イタク)は、昔アイヌ民族が話していた文字を持たない言葉です。旭川、釧路、十勝、北見、千歳、幌別などの北海道アイヌ語のほか、樺太アイヌ語、千島アイヌ語などの方言もありました。 樺太アイヌ語は、第二次大戦後に樺太から北海道へ移住したアイヌ人の居住地名をとり、稚咲内(わっかさくない) 、常呂(ところ)と呼ばれていました。

 

消滅危機言語の1つ  

2007年の推定調査では、約1万5000人のアイヌ人の中でアイヌ語を流暢に話せる人はわずか10人でした。2009年には、ユネスコの「危機に瀕する言語」の中で最高ランクの「極めて深刻」の区分に分類されています。アイヌ語を残すため、北海道や首都圏にアイヌ人によるアイヌ語教室の開設や、「アイヌ語ラジオ講座」の放送、アイヌ文化振興財団主催のアイヌ語弁論大会(イタカンロー)の開催など、さまざまなが活動が行われています。

 

音声資料は豊富  

アイヌ語は「危機に瀕する言語」の中では例外的に、オープンリールやカセットテープに録音された音声資料が多く残されています。しかし音声の内容が不明なままのものが多く、アイヌ語学習に使用できる資料は少ないのだとか。今後のアイヌ語学習には、音声資料の活用が課題となっているそうです。

 

 

アイヌ語が由来の日本語

トナカイ

アイヌ語の「トナカッイ」に由来します。江戸時代末期の蘭学者、司馬江漢が記した『春波楼筆記(しゅんぱろうひっき)』には、幕府の御庭番だった間宮林蔵が樺太を探検したエピソードの項に「唐太の地に、トナカヒと云ふ獣あり」というくだりがあります。このことから、「トナカイ」という言葉が日本本土へ伝わったのは江戸時代末期だったと考えられています。

オットセイ

アイヌ語の「オンネップ」が由来です。この言葉は最初、中国に入って「膃肭」と音写されました。中国ではオンネップのオスの臍(生殖器)が漢方薬の強精剤として珍重されたため、「膃肭臍」という表記に変化。この表記は漢方薬と共に日本に入り、日本の漢字の発音で「オントツセイ」→「オットセイ」と発音されるようになり、その後、動物そのものが「オットセイ」と呼ばれるようになりました。

シシャモ

アイヌ語のスス(柳)とハム(葉)の複合語「スハム」に由来します。シシャモの漢字表記「柳葉魚」は、アイヌ語の元の意味を表しています。

ハスカップ

アイヌ語で「枝の上に多く実るもの」という意味の「ハシカプ」が由来。ビタミンやミネラルを多く含み「不老長寿の秘薬」と言われる北海道のベリー類です。

ノンノ

集英社の女性向け月刊誌『non-no』は、アイヌ語で花を意味する「ノンノ」に由来します。1974年の創刊号には「北海道の原野に咲く野生の花をイメージして名づけました。素朴な愛らしさ、永遠にかわらない美しさ…私たちはノンノをそうした雑誌にしたいし、愛読者であるあなたに、花のように愛されたいと願っています」と記されました。

 

<参考URL> STVラジオ アイヌ語ラジオ講座 https://www.frpac.or.jp/web/learn/language/radio.html アイヌ民族文化財団 https://www.frpac.or.jp/index.html

 

シャクシャインの戦い

シャクシャインの戦いとは、1669年6月、アイヌに対して横暴が過ぎていた松前藩に対抗し、シブチャリの首長シャクシャインが中心となって起こったアイヌ民族の大規模な蜂起。日本の元号、「寛文」年間に起きたので、寛文蝦夷蜂起(かんぶんえぞほうき)とも呼ばれています。

 

静内町アイヌ民俗資料館敷地内にある シャクシャイン像 (wikipedia)

 

 

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