世界の民族衣装

 06/08/2019

民族衣装は、それぞれの国、地方、民族に特有の衣装のことで、それを着る人々が共有する言語、宗教、歴史、伝統、気候などに影響されています。いくつかの型があり、身体にまといつける巻垂型、頭を通して被る貫頭型、腰の周りだけに着用する腰布型、身体の形に合わせて仕立てられた体形型などがあります。現代のファッションにもしばしば影響を与える民族服は、表面的な美しさや個性もさることながら、奥深い文化や歴史を垣間見られることが魅力の1つといえます。今回は、アジア諸国を中心に、さまざまな国や地域の民族衣装をご紹介いたします。

 

 

東アジア

漢 服  【中国】

後漢(22〜220年)時代に描かれたという『宴飲百戯図』。漢服を身に纏った男女が描かれている

黄帝が即位した紀元前2500年頃から1600年頃の明の滅亡まで、4100年間もの間着用されていた衣装の総称で、「漢装」とも呼ばれます。袖、襟、袴は全て長く、歩く時に涼しげな衣擦れの音がします。満州民族が建国した清の時代(1616〜1912)は、満州民族の長衣で細い筒袖と長いスリットが特徴の「旗袍(チーパオ)」を着用し、男性は髪の一部を残して剃りあげ、残りの髪は伸ばして三つ編みにし、後ろに垂らす辮髪(べんぱつ)にすることが義務付けられていました。

 

 

 

デール 【モンゴル】

モンゴル系民族の1つ、セレンギンスク・ブリヤート族の民族衣装(19世紀)

「デール」という丈の長い上着に、「ウムドゥ」というスラックスを履き、腰には「ブス」というベルトや帯を締め、足には「ゴタル」という膝までの高さで爪先が反り返っているブーツを履きます。正装の場合、男性は「ジャンジュン・マルガイ」という頭頂部が玉ねぎ型になっている帽子を、女性は頭頂部に長い飾り紐がついた丸い帽子を被ります。デールの襟は中国の旗袍と同じ立襟。左に打ち合わせがあります。生地は絹が多く、春と夏は、薄いものや、綿が入った「テルレグ」というデールを着用します。マイナス30〜40℃に冷え込む冬場のデールの裏には子羊の毛皮が縫い付けられています。男性の大人用デールでは約30匹の子羊の毛皮が必要なため、寒さや病気で死んだ子羊の毛皮をためておき、数年に1回新調するのだそう。部族、性別、年齢、未婚、既婚などで、細かい違いがあるため、デールの種類は400種類以上に及びます。

 

 

 

韓 服 【朝鮮半島】

1910年代 チマチョゴリを着用した母子

女性は長いスカートのような「チマ」と、丈が短く、前を紐で結ぶ「チョゴリ」という上衣を、男性は丈がやや長いチョゴリに、「パジ」というズボンを履き、「トゥルマギ」という上衣を身につけます。騎馬遊牧民族の衣装「胡服」が原型で、中国の隋や唐の時代の漢服、モンゴルのデールの影響を受けています。

 

 

 

方 衣  【台湾 (高砂族)】

民族衣装で盛装をした台湾の高砂族(おそらくアミ族)の女性(1930年頃)

方衣(ホンイ)は、台湾の山地民族、高砂族が普段着にしている袖なしの上着のこと。苧麻の布二幅を背と脇でのみ縫い合わせ、前が開いたシンプルな形で、「袖套」というもので腕を覆います。さまざまな種類があり、両袖を紐で繋げ、手の甲を覆う鹿皮製の方衣(ツォウ族の)、「クージョ」という綿の一枚布の両端を筒状に縫い、肩と袖口に刺繍を施した方衣(タイヤル族)などがあります。

 

 

 

キラ 【ブータン】

キラを身に纏ったブータンの女性たち

ブータンの女性の民族衣装で、隣国インドのサリーの影響を受けています。一方で、男性の民族衣装は「ゴ」と呼ばれています。キラは、約2.5×1.4㍍のティマという色鮮やかで目の詰まった織物を縫い合わせた厚手の一枚布を独特の方法で体に巻き、ワンピースのように着用されます。着付けは、「グツム」というスリップを着た後、左肩、右脇、左肩、右肩、左脇、右肩を通り、両肩を「コマ」というブローチで留め、「ケラ」という細い腰帯を締めるという複雑な流れになっています。身体に幾重にも重ねる着付け方には、山岳地帯の強風から身を守るという目的もあります。また、両腕を覆うため、下に「ケンジャ」という長袖ブラウスを着たり、「テュゴ」という長袖の上着(テュゴ)を羽織ったりもします。さらに財布や小物入れのような役割をする「ラチュー」という肩掛けをつけることもあります。

 

 

 

東南アジア

ソンケット 【マレーシア / インドネシア】

絹の金糸や銀糸を用い、刺繍のような模様が織り出される布、ソンケットは、身体に巻きつけるようにして着用されます。マレーシア、インドネシア伝統の織物で、昔は王族や貴族だけが着るものでした。現在は、結婚式などで着用される他、ちょっとした外出や集まりなどで木綿製のカジュアルなソンケットを身に付ける人もいます。

 

 

ケバヤ 【インドネシア / マレーシア / タイ / ブルネイ / ミャンマー / シンガポール など】

マレーシアの中華系移民、プラナカン伝統のニョニャ・ケバヤ姿の女性たち

ブラウスとワンピースを組み合わせた女性の伝統衣装。一般的な正装のブラウスは、綿、絹、レース、錦、ビロードなどの異素材が組み合わされ、中央で合わせてブローチで留められます。ブローチは金、銀、宝石などで作られ、昔は上流階級や貴族の社会的地位を示すものでした。サロン、バティック、カインなど、その土地の伝統的な織物と一緒に身につけたり、スレンダンという帯状の布を肩から垂らしたり腰に巻いたりします。インドネシアの民族服とされていますが、マレーシアやタイ南部など、東南アジア一帯の国々でも着用されています。

 

 

 

アオザイ 【ベトナム】

アオザイとノンラーを身につけた女性

アオザイの元の形は、18世紀に中国の清から伝わった旗袍です。冷涼な気候の満州が起源の清の旗袍は厚地の絹で仕立てられていましたが、暑い気候のベトナムでは、薄絹や麻などの薄い布地で仕立てられました。女性の民族服という印象が強いアオザイですが、かつては男性も官服として着ていたことがあり、現在も結婚式などの際に正装として着用されています。

 

 

 

バロン・タガログ 【フィリピン】

 バロン・タガログはフィリピン男性の正装の上着です。パイナップル繊維を材料とした長袖のシャツで、両脇にスリットがあり、前身ごろには刺繡が施されています。スペイン領時代にメキシコから伝わったと言われています。1960年代までは貫頭衣で胴回りに余裕のあるものが多く、1970年代からは前開きで胴回りの引き締まった型が流行しました。

 

 

真鍮の首輪 【タイ / ミャンマー (カヤン族)】

日本では「首長族」として知られるタイのカヤン族の女性たちの一部は、真鍮の首輪をつけています。数百年もの間、首が長ければ長いほど美しいという価値観があり、5〜10歳頃に6〜10個の首輪をつけ始め、年齢を重ねるごとに数を増やしていきます。最終的には約20個になりますが、その場合、重さは約5kgにもなるのだとか。さらに、両膝下に真鍮のコイルを巻き、両腕には銀のアルミ製の輪を5〜10個つける人もいます。伝統的な衣装として、白を基調とした袖なしのチュニックに黒い筒型スカートを身につけています。

 

 

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