私の旅ストーリー Vol.81 特別な1日

 12/27/2017 : 166 Views

 普段と変わらない1日だと思ってスタートさせた普通の日常が、普通では終わらないことの方が多いニューヨーク。この街は、予想を遥かに超えた「特別」をたくさん運んできてくる。  

 朝8時。友人のフレッドからのメッセージ。「昨夜、3人目の娘が誕生」。  

 アメリカでは出産すると大抵は一晩で退院する。もう、夜には退院するから今から来て、と返信がきた。別の友人マイクからも連絡が入り急遽合流するため、私と夫アダムは予定を変更してマンハッタンのダウンタウンにある病院へと自転車を走らせた。  

 病室へ到着すると、友人の6歳になる次女が生後まだ12時間も経っていない生まれたてホヤホヤの妹を抱っこしていた。ほんの少し前まで、妹だった彼女が、今度はお姉ちゃんの顔に。「チズ、赤ちゃん抱いてみて!大丈夫。私もはじめは抱くのに少し戸惑ったけど、慣れると平気よ」と、大人な言葉をかけてきた。その光景がなんともお茶目で可愛らしく、それを聞いていたまわりの人達から笑い声が漏れた。

 

 マイクとアダムと3人で帰り道、たまたまビークマンホテルの前を通った。ここは、1883年に建てられた歴史的建造物で、長年放置され廃墟になっていたのを買収され修復。当時の良さをそのまま生かし去年、5星ホテルとして息を吹き返したNYでもホットな場所だ。「赤ちゃんの誕生を祝して、ここでお茶しよう!」マイクの一言に私とアダムも即、賛同。  

 130年以上前の重厚感溢れる落ち着いた空間。カジュアルな人やら高級な人やらが行き交うラウンジ。オーダーを待っていると、紳士が一人、こちらに向かって歩いてきた。あ、何処かで会ったことあったかな、と思ったら、目と目が合った。次の瞬間、彼の人間的余裕を感じる微笑み。思わず私も微笑み返した。  

 

 しかしこの瞬間が、特別な瞬間だったということが、後にわかった。  

 ラウンジを出た後、マイクとアダムが、「チズ、さっきの人誰だかわかってないんだね?」と、意味あり気な笑顔で聞いてきた。なんと、さっきの紳士はヴァージングループの会長、リチャード・ブランソンだったのだ!  

 えー! 何で教えてくれなかったの!と二人を責めると、「知ったら、声をかけにいくと思ったから」だって。(笑)まさか…。残念ながらそんな度胸はありません。世界の大富豪や桁外れに別世界な人たちが同じ空間でお茶を飲んだり、食事をしたりしているのもまたNYではよくあること。  

 いつ、どこで、どんな特別な瞬間と出逢えるかわからない街、ニューヨーク。でも、それは決してNYだけでなく、生きている限り、世界のどこにいても、日々、特別な瞬間の積み重ね。毎日が特別な1日。

 

(日刊サン  2017/10/25)

 

大森 千寿

香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

www.chizuomori.com

 


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