私の旅ストーリー Vol.57 クジラが教えてくれたこと

 05/15/2017 : 235 Views

LAから、友人が夫アダムのアトリエに遊びに来た。友人が帰った後、ゲストブックを開いたら何の脈絡も無く、その彼がなぜか、クジラを描き残していた。それを見て、私は数年前の冬、クジラとの間に起きたある不思議な出来事を思い出し、心がじんわり熱くなった。  

12月から4月頃にかけて、暖かい海を目指して、ザトウクジラが出産や育児のためにハワイにやって来る。まだ、ハワイで年の半分を暮らしていた頃に一度、偶然、友人のヨットから間近でクジラの尾びれを見たことがあった。大変感動し、それ以来、いつかまたクジラを見たいと思うようになった。  

 

ある年のお正月。日本からハワイに家族が遊びに来たのを機に、ナバテック号に乗り込んだ。船上から、果てしなく広がる大海原をぼんやりと見渡しながら、私はふと、心の中でこんなことをつぶやいてみた。 「もしも、わたしのこの声が聴こえるなら、ジャンプしてください。」  

心でそう問いかけて数十秒後、なんと一匹のクジラがまさに私の見ていた方向の海面をジャンプした。まさか!そんなはずはない。きっと、偶然に違いない。私は半信半疑のまま、気づくと次はこんな問いかけをしていた。

「私は時々、自信をなくし、不安になることがあります。でも、何も心配することはないんだという証拠をみせてください。今、ジャンプしてみせてくれたら私はこれから先、どんなことがあっても信じて前進して行きますから。」  

すると、まるで隕石が水面に落ちたかのような大量の水しぶきを上げて、異様な程巨大な黒い固まりが、すごい迫力で見事に宙をまったのだ。2回も続けて大海原で繰り広げられた、クジラの大胆なジャンプ。短時間でなかなか何度も見ることのできないブリーチングというこのクジラのジャンプに、クルー達さえも驚き、至る所で歓喜の声が上がった。 「ありがとう。信じます!」すると、目の前で3回目のジャンプ。興奮で沸き上がる船上で、私は一人、声を失い、しばらくの間、ただ呆然としていた。  

それ以後、クジラは一度も姿を現さなかった。ただの偶然だと片付けてしまうこともできる。信じるか信じないかは自分次第だ。下船した後、アダムにそっと何が起こったのかを打ち明けてみた。無言で私の話を聴いた後、しばらくしてこう言った。

「30トンを超える巨大な身体を海面に出してジャンプするということは、どれだけのエネルギーが必要だと思う?そこまでして、大事なことを教えてくれたんじゃないの?」  

 

アダムの言葉を聞きながら、やっぱり夢ではなかったんだと実感した。  

今でも、この不思議な出来事は、私にとっての心のお守りのように、信じる心を与えてくれる。

 

大森 千寿

香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

www.chizuomori.com

 


関連記事

関連記事はありません。



その他の記事