ハワイでの終活vol.6; 充実した終活のためのアドバイス

 06/06/2019

ハワイでの終活vol.6

充実した終活のためのアドバイス

 前回のこの終活特集は、『ハワイのお寺』と題し、ハワイには日本と同じく仏教の全宗派があり、お寺の数はオアフ島だけでも36箇所もあることを紹介しました。そしてヌウアヌの曹洞宗(Soto Mission)の両大本山ハワイ別院正法寺を訪ね、葬儀や供養について伺いました。住職によると、お葬式の通夜から戒名の授与、本葬まで、すべて一式300〜500ドル(年会費一家族150ドル)という、日本では考えられない安さで行っているとのこと。それはハワイのお寺はどこも、日系移民の、重労働を耐えて勤勉に働く日々の生活に、お寺が寄り添ってきた歴史があるからだと伺いました。今回ご紹介する日蓮宗ホノルル妙法寺(Myohoji)の住職、山村尚正師は、「国籍も宗教も宗派も問わず、あらゆる人がもっと妙法寺を訪ねて欲しい。特にシニアで終活を考えるようになったら、ハワイのお寺はとても使い勝手がいいですよ。開放的だから気軽に仏さんに親しめますし、無宗教の方でも瞑想や合気道、ヨガ、フラなど文化教室をご利用いただけます」と、フレンドリーな笑顔で話してくれました。

 

お葬式は人生の卒業式、最も大切なセレモニーです

 

「お寺に足を運ぶということは、仏さんとご縁を結ぶことになるんですね。ご縁が種になって育つ。人は一人では生きていけませんから、いろんなご縁を育んでおいて欲しいのです。お寺じゃなくて神社でも教会でももちろんいいです。ご縁を育んでおけば、豊かな終活ができるようになります」

 山村住職は、葬儀という儀式の大切さも説く。

「昨今、“直葬”という言葉が生まれて、葬儀をなにもせずに亡くなったらすぐに火葬してしまうケースが増えています。亡くなった人は、祈ることも弔うこともされずに焼かれてしまう。でも仏教の考え方では、亡くなっても霊魂は生きているんです。それをお経のような祈りで、天国や浄土にお見送りしてあげなくてはならない。直葬をするにしても、霊魂をきちんとお見送りする真心は大切にしてほしいです」

 入学式や成人式、結婚式があるように、葬儀は人生の卒業式という大切な節目の式典だから。

「その人の人生の締めくくりとして、最大に重要なセレモニーなのです。この世で育んできたご縁である、家族や友人、知人に見送ってもらうためにも葬儀は大切なのではないでしょうか。私自身、大学の卒業式をいらないと思って出席しなかったことを、今でも悔やんでいます。死んだら終わりと思うことが一番問題です。死んだら終わりではないのです」

 

 

四十九日までの法要は、残された家族のグリーフケア

ハワイの伝統的な宗教団体は、お寺でも神社でもキリスト教会でも、葬儀に高い値段を取るところはないと、山村住職は言い切る。

「戒名をつけたらいくらだとか、お布施の相場はいくらだとか、ハワイでそんなことを言うお坊さんは、私が知る限りありません。宗教儀礼を商品化したり、値段をつけるようなことは本当はしちゃいけない。でも僧侶として精神的に労力の必要なことですから、私へのお布施は葬儀一式200ドルからでお願いしますとお伝えしています」

 それ以外の枕経、火葬前のお経、納骨のお経は、遺族の任意の金額でドネーションをいただくという。 

「四十九日まで、毎週お祈りさせていただき、遺族にもどうぞお寺にお越しくださいと誘います。それは残された家族や大切な人たちのグリーフケアにもなるからです。葬儀というのは死者をお見送りすると共に遺族のための癒しでもあるんです」

 自分はどんなお寺や神社、教会とフィットしそうか、散策がてら訪ねてみると良いとも話す。

「ハワイの宗教団体はどこもオープンでフレンドリーです。亡くなる前からそこのお坊さんや牧師さんとご縁を結んでおけば心強いですよ。信者にならなくていい、お会いしてお話しして、気が向いたらお寺や教会のイベントに参加してみてください。またもし、すでに伴侶を亡くされてお独りなら、お連れ合いの思い出などをお聞かせください。お寺でお仲間を作ることもできるかもしれません」

 山村住職は言う。僧侶は葬式を執り行うだけではなくなく、生前からその人の人生の幸せを祈る存在でなければならないのだと。出会った人とのご縁に感謝し、その人が病に伏した場合は癒しを祈り、臨終の時には傍らでその人の魂の平安を祈りたいのだと。

 

 

お墓は生きた証しです、じっくり考えてください

「ご縁を結ぶことを大切にする仏教の考え方では、ハワイの海や野原への散骨をする場合も、地上でお参りできる分骨もよく検討してみてほしいと思います。お墓を買ってもお参りしてくれる肉親はいないからいらない、などという方もおられますが、縁者や友達というのは、必ずどこかにおられるものなんです。あなたが亡くなった時、アナたに縁があった方は、あなたに手を合わせたいと思うものです。それが人間というもの。その方がお墓の前で手を合わせる、それが仏さまとの結縁になるのです。結縁をおざなりにはしてほしくありません。お墓は生きてきた証し、なんでも簡略化すればいいわけではない」

 山村住職は終活こそ、家族や周りの人と時間をかけてよく話し合ってほしいと言う。

「今ある私たちの幸せはご先祖さまのおかげと感謝する。日本人が昔から伝承してきた習慣、葬儀やお墓のならわしも尊重して考えたいものです。ここハワイにもそのような伝承を踏まえて、位牌や仏壇を良心的な価格で販売してくださる会社があります。それは私たち寺院関係者にとってありがたいことです。位牌とは、ご先祖さまのいのちが宿るもの。仏壇とは家庭の中心であって、仏壇に家族が集まってしっかり祈りがされる家庭は、七難即滅七福即生といって災難から守られ幸福に生きられると、日本では大切にされているのです」

 今回、終活のアドバイスをしてくれた山村住職は、オペラ歌手の副業のあるユニークなお坊さん。ハワイには2010年に就任した。生家は日本の刀剣史上、もっとも著名な岡崎五郎正宗の家。700年以上、日蓮宗の信仰を守る家庭でもあった。刀匠を継ぐはずであったが、仏縁に依り僧侶になる意を固め、14歳で得度した。

 ハワイで最も品揃えが充実した、仏壇・仏具、お墓の専門店ジャパンメモリアルコーポレーション。代表の櫻井新也氏は、

「ハワイのお寺とつながりの深い当社では、日系人がハワイで築き上げてきた仏教の継続的な普及のために、ハワイのお寺とご縁を結んでみたい、まずはお寺のカルチャー教室に通ってみたいという方々のために、各宗派のお寺をご紹介します。もちろん無料です。また店には仏壇や位牌、数珠などの仏具も取り揃えておりますのでお気軽にお越しください」。

 

  ( 取材・文 奥山夏実)

この記事は2019年5月時点の情報に基づいて記載しています。

 

 

 

【Honolulu Myohoji Mission】

菩提樹が繁る境内は、ハワイ固有のオヒアレフアの樹をはじめ、緑いっぱいのサンクチュアリ。敷地の脇を川も流れ、せせらぎの音も聞こえる。

1930年に開山し、来年は90周年を迎える。本堂の御仏舎利にはネパールから贈られたお釈迦様の骨も祀られている。

【住所】 2003 Nuuanu Avenue Honolulu, HI 96817, USA

【TEL】1-808-524-7790 

【Eメール】honolulumyohoji@hotmail.com


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