ハワイでの終活vol.4;相続財産に関する、日本とハワイの違い

 04/09/2019 : 1301 Views

ハワイでの終活 vol.4 相続財産に関する、日本とハワイの違い

終活を考えるとき、まじめに働いて蓄えた財産を、できるだけスムーズに、愛する人にバトンタッチしたいものですね。大切な財産を託す相続に関して、日米の関係法令がいろいろ違っているので、元気なうちに準備しておくのがベスト。ご一緒に考えてみましょう。

 ハワイと日本など、所有不動産の場所と居住国が違う場合は特に重要です。

 相続の準備というと「うちは資産家じゃないし、譲れるものはごくわずかだから関係ない」と思われるかもしれませんが、終活を考える年齢になったら、“相続を視野に入れた財産の見直し”はとても大切です。

 利用している金融機関を書き出して、できるだけ少ない口座にまとめ直し、離れて暮らす子どもにも分かるようにしてありますか?

 所有している不動産や株式、ローンや貸付金などを点検し、忘れないよう、一覧できるようにしておく、なども。生命保険や年金保険も改正されている場合があるので、見直しをすることで有効に運用できるのではないでしょうか。

 ご自身の、お金にまつわる現状を明確化することで、無駄のない、より良い生活をしたいものですね。

 

ハワイや日本に不動産があれば、相続準備は必須です

 資産や権利など、相続の対象となるのは以下のような項目です。 

・不動産(土地・建物)

・預貯金

・生命保険や年金保険

・株式や公社債などの有価証券

・ゴルフ場などの会員権

・貴金属や美術工芸品、車などの高額耐久消費財

・貸付金

 逆に、借入金やローンなどの負債も相続の対象になる場合があるので書き出しておくと一覧しやすいです。

 行政書士の石橋潤子さんは、こうアドバイスする。「とくにシングルやお子さんがいない“おひとりさま”の場合、認知症などで的確な判断ができなくなることがあります。日本には意思疎通ができなくなった時に備えての、成年後見人制度や財産管理委任契約などがあり、アメリカでもPower of Attorneyという公的委任状の制度などがあるので、終活に詳しい税理士、行政書士、弁護士に相談してみてください」

 

あなたの法定相続人は?日米で相続分配が違います

 法定相続とは、遺言や信託がない場合に、法律で決められた配分を家族が選んだ場合のことです。でも、あなた(被相続人)が遺言や信託を用意しておけば、法定相続を覆した相続をすることができます。

 あなたがもともと日本人であっても、市民権を持つアメリカ国籍に変更し、アメリカに不動産の財産があった場合は原則、その不動産のある州の相続に関する法律に従います。

 グリーンカードやビザでハワイに居住しているなら日本国籍なので、日本の不動産については日本の相続法が適用され、アメリカの土地にはその州法が適用されます。

 日米両国で共通しているのは、法定相続人の順位についてです。

 あなたの財産を受け取る相続人は法律で定められていて、法定相続人と呼ばれます。筆頭順位の相続人は妻か夫、配偶者です。次が子どもで、法的な夫婦間に生まれた嫡出子、そうではない非嫡出子も相続権を持ちます。

 

 

 

この相続順位は日本もアメリカも同じですが、法定相続分となると、日米では違いがあります。

 例えば、日本国籍で日本にある預貯金や不動産を法定相続する場合、亡くなったご本人に配偶者と子どもがいる場合、配偶者が全財産の1/2、子どもが1/2(複数の子どもがいるなら1/2内で分ける)と定められています。そして亡くなった時点で自動的に、財産は法定相続人へ引き継がれます。

 ところが配偶者はいるが子どもがいないとか、配偶者と親はいるが子どもがいない場合などは、いつも配偶者の割合が1/2とは限りません。

 それは、日本でも米でも同じです。配偶者がいつも相続人であることよりも、この順位通りに相続人がいない場合に、争いが起きがちです。

 アメリカ国籍の配偶者を持つ場合、ハワイやアメリカ国内の不動産を夫婦の共有名義として登録しておけば、共有財産とみなされて配偶者が全て相続します。しかし配偶者がいない場合は、分配の割合は変動します。

 また米国の場合、相続は自動的に行われるものではないので事前対策を講じておく必要があります。相続の手続きは、日本とアメリカの多くの州では違いがあるのです。

 

日本では遺言書、ハワイではプロベイト 

 

 

上記のような法定相続とは異なる割合で財産を分け与えたい、第三者へ財産を贈りたいと考えているなら、日本では公的な遺言書に、誰に何をどれだけ譲りたいか明記します。

 公的な遺言書とは日本の場合、公証役場など法的機関が認定したものです。

 米国ハワイにも遺言書Willはあります。ところがWillがあってもなくても、ハワイ州では所有財産の総額が100,000ドル以上ある場合、相続にはProbateプロベイトと呼ばれる独特の検認裁判を経ることが必要になります。

 これは亡くなった方や相続人の国籍やグリーンカード保有を問わず、米国内に財産があればその対象になります。ハワイでの長期滞在用にコンドミニアムを買った日本人も含むわけです。

 裁判所の管理下で相続手続きが行われるプロベイトは、開始されると全ての財産が凍結され、財産目録が公開されるため、個人的にお金を貸したなどという債権者が集まる可能性もあります。煩雑な検認が続き、完了するまでに数年かかるとも言われています。

 その間、裁判所や弁護士などへの費用の支払いが生じ、不動産があれば固定資産税や管理費の出費もかかります。

 石橋行政書士によると、「昨年の2018年7月、日本では38年ぶりの相続法制の見直しが行われました。ハワイにお住いの方にも大きく関わる改正の主な内容は、遺言作成や遺留分制度の変更などがあげられます。4月13日にワイキキで相続セミナーを開催しますので、最新の情報にアップデートして、正しい相続準備のお役に立てればと願っています」

 

ハワイの不動産にはリビングトラストを活用

そんな厄介なプロベイトを回避するために、ハワイではLiving Trustリビングトラストという生前信託を選択するのが一般的になっています。

 リビングトラストは日本国籍の人も、グリーンカードやビザでハワイにいる人も、国籍やステータスを問わずに作成することができます。

 ハワイやアメリカに不動産や銀行口座がある場合、弁護士などに相談して作成しておけば、面倒なプロベイトをしなくてもすみ、円滑に財産分与ができます。また万が一、病気などご自身で資産管理ができなくなった時にも役に立ちます。

 ちなみに、相続に関する日米で真逆の制度について。

 日本では財産分与された相続人が相続税を支払いますが、アメリカでは財産を残した被相続人が相続税を支払う義務があります。

 なのでアメリカでは相続税とは呼ばず、遺産税エステートタックスと呼ばれているんです。

日本に不動産などの財産がある場合の相続

 世界がグローバル化したおかげで、相続税に対する節税対策も国際化したようです。

 数年前まで、こんな節税が頻出していたそうです。

「親子で日本を離れて税金の安い国に移り住み、非課税を利用して全財産を贈与して、日本の相続税を逃れる」

 こんな企みを食い止めるためもあったのでしょうか、日本は2015年に相続税法の改正を行いました。改正により、納税対象者も増え、海外に移住している日本人の国籍要件や移住要件も見直されました。

 その結果、「親子ともども、海外に10年以上移住していないと、海外に所有している資産についても日本の相続税の対象となる」と改められたのです。

 だから親か子、いずれかが日本に移住していれば、相続人がアメリカ国籍を持っていても、日本で相続税を支払わなくてはなりません。

 また近年、日本の不動産を相続することになり、「日本での戸籍謄本の取り寄せ方がわからない」、「老朽化した家を解体しなければ売却できないのに、どこに頼んでいいのかわからない」、などというシニアの声が増えています。情報の検索や手続きがIT化され、インターネットに不得手な高齢者を悩ませているのです。

 日本の不動産事情にも詳しい、センチュリー21ハワイアンスタイル代表のたかこマクミランさんは、

「相続される方だけでなく、ハワイに住みながら日本に不動産を持っておられる方も高齢化に伴い、いろいろなお困りごとが出てきています。不動産を売却したくても、土地や建物の見積もりや相場で的確な判断ができるか、その後のたくさんの手続きをどうするのか。センチュリー21は世界最大級の不動産ネットワークで、日本全国、ハワイともダイレクトに連携しているので、日本の不動産に関するお手伝いをすることができます」

 4月13 日のセミナーで講演をする税理士の深海重伏三さんも、日本の最新情報をお知らせしたいという。

「日本では現在、都市部とそうでない所の不動産価格のギャップが著しくかけ離れています。都市部は価格上昇していても、他の地域は下落し“負動産”と言われるほどです。そんな現状をお話しした上で、次世代に迷惑をかけない相続のアドバイスをいたします」

 元気なうちに早めの準備が得策。ハワイでも日本でも情報収集を心がけ、大切な財産をバトンタッチしてください。

 日刊サンでも下記のような相続セミナーや、シニア向け勉強会のお知らせなどを随時お知らせしていきますので、ぜひご活用ください。  

 (取材・文 奥山夏実)

 

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