「命はやわじゃない」がんサバイバー、チーム「メッセンジャー」完走!

 12/20/2017 : 1204 Views

 ホノルルマラソンで日刊サンが毎年応援している、“チーム「メッセンジャー」”をご存知だろうか。真っ赤なTシャツの背中に大きくプリントされた“命はやわじゃない”の文字。走ることで、やわじゃない、命の輝きを伝えるメッセンジャーとなる……。  チーム「メッセンジャー」は、がんサバイバー(がん患者、がん経験者)とその家族、サポーターによって結成されたチームだ。

 主宰しているのは愛知県在住の杉浦貴之さん。28歳の時に腎臓がんが分かり、「余命半年、2年後の生存率は0%」と告げられる。手術、化学療法。不安な闘病生活の中で、自分自身を信じること、信じ切って、自分の中のがんを治すスイッチをオンする気づきを得る。そして大学生の時に走ったホノルルマラソンに再びチャレンジしたいという希望も得る。

 杉浦さんは術後6年め、2005年にホノルルマラソンをみごとに完走。2年後の生存率0%なんて余命宣告を、楽々クリアしていた。その年、がんサバイバーなど、命と向き合い輝いている人たちの体験談を語った情報誌「メッセンジャー」を発行、講演会活動も始めた。そして2009年、チーム「メッセンジャー」のメンバー、総勢80人がホノルルマラソンに参加。全員が完走するという快挙を達成させた。日刊サンでも大きく取り上げた。

 以来、メッセンジャーのメンバーは毎年参加。今年、杉浦さんは日本からの応援となったが、リーダー達が55人のメンバーとともにホノルル入り。コンベンションセンターでゼッケンをもらったり、カピオラニ公園でジョギングをしたりしながら、スタートを待った。  チーム「メッセンジャー」メンバーに、ホノルルマラソンにかける思い、完走した喜びを聞いた。

(取材・文 奥山夏実)

 

森田貴子さん:兵庫県在住

 マラソンは初めてです。でも大学までは短距離やハードルの選手をしていたし、卒業後は体育教師をしていたのでスポーツは得意ですね。

 9年前の32歳の時に乳ガンにかかり手術を受けました。それで4年近く前にリンパ節に再発し、抗がん剤治療を受けながら教師の仕事を続けていました。今年、肝臓への転移も見つかったんです。姉も同じでした。乳ガンから肝臓へ転移して、腹水が溜まって辛い思いをしながら亡くなったんです。だから私もそうやって死ぬのかなあって、すごくネガティブだったんですね。そんな折、メッセンジャーの存在を知り、杉浦さんの講演会に出かけました。私より若いがん患者さんも大勢いて、みんなすごく明るくて前向きなんです。マラソンに出ようよって、えっがんなのにマジ?!て感じで(笑)。

 迷っていたら、仮の申し込みはキャンセルOKだから申し込もうよ、申し込むだけでもテンション上がって元気になるよって。それで9月の終わりに1泊の合宿に参加して、ハワイのことやフルマラソンのことなどシェアしたり、みんなでランしたり。がんの話しもしました。お姉さんがそうだから自分もっていう思い込みはダメだよ、みんな一人一人違うよって。実際、メッセンジャーのメンバーの中には、余命宣告されても治った人が何人もいたし、体の中にがんがあっても、何年も元気な人もいるし。そういう仲間を見ていると、私も大丈夫だって思えてきて。毎日2時間近く歩いて、ホノルルマラソンのために体力作りをしました。

人生で一番充実している、走りながら治るって 実感をつかみました!

 目標タイムは8時間だったんだけど、走り出したらアスリート魂が出てきちゃって。35Kmまでは快調で、でもダイアモンドヘッドの坂を下りてラストスパートのところで足重くなって。上りより下りが辛かった。それでも7時間を切れたので、自分を褒めてあげたい(笑)。すごく楽しかった。気づきもいっぱいありました。今、この瞬間って、今まで生きてきた中で一番充実していると思いました。もっともっと欲張って生きようと思いました。走りながら、がんも治っている感じがしたんです。すばらしい収穫でした。

 

 

山口久美子さん:東京都在住

 今年は私にとって、絶望から希望へと大逆転した一年でした。がんは進行してしまったけど、人生はとても充実しています。

 今年の1月に杉浦さんのセミナーがあると聞き、初めて参加したんです。セッションの中で、「あなたの夢を語ってください」とマイクを向けられ、「私は歌が好きで、ステージに立つことが夢です」って話したんですね。そうしたら今すぐ、このステージで歌いましょうと言われて。アメージンググレースを歌いました。ホノルルマラソンの前夜祭でもまたアメージンググレースを歌いました。マラソンも初めて、海外旅行も初めてです。希望は1つひとつ実現できるって体験できて、すごく嬉しいです。

乳がんで転移もあるけど、希望を実現させながら 今を輝かせる

 私は3人の子どもがいるシングルマザーです。2年前のある日、子どもが膝に乗って私の胸を触りながら、「ママ、おっぱい硬いよ」って言ったんです。病院で検査したら乳がんで、抗がん剤、放射線、手術で治していきましょうと言われました。でも私は三大療法には抵抗があって、自分がやってみたいと思える民間療法を選択していたんです。そうしたら去年の秋頃からがんが大きくなり、皮膚に転移。リンパ節や肝臓、骨などにも転移しました。それでやはり抗がん剤を受けました。すると胸の皮膚が裂けてがんが出てきて、今はやけどのような状態。痛いですよ。先月は20回、放射線治療を受けました。腕も骨が脆くなってボルトでつないでいるし、腰椎も圧迫骨折するリスクがあるので、コルセットを付けたまま走ります。

 今までは結果にこだわっていた人生でしたけど、今はプロセスが大切だし、プロセスを楽しむことができる。だから完走できなくてもいい、自分なりのゴールに向かって走るつもりです。がんでもこんなに楽しんでいるよ、ってところを見て欲しい。それが誰かに伝わって、勇気を持ってもらえたら嬉しい。

 今年は一人で来ましたが、来年は3人の子ども達を連れて来たい。それが私の次の希望です。

 

 

大江節子さん:広島県在住

 ハワイは初めてです。フルマラソンも初めて。5人の子どもがいますが、3番目の娘が一緒に来て、一緒に走ってくれます。

 私は血液のがんの悪性リンパ腫です。再々発です。いろいろながん患者の会に参加してきましたが、杉浦さんのチーム「メッセンジャー」には今年の8月に初めて伺いました。がんにはいろんな代替療法がありますよね。玄米食とか、酵素風呂とか、びわの葉温灸とか。でもホノルルマラソンを走る療法だなんて! 今まで1ミリも考えたことのない、新鮮なアプローチだったので、なんか直感的に「やりたい!」って強く思ったんです。体の声には忠実に従った方がいいでしょう。すぐに申し込みました。

走るという行為が、自分で治ろうという気持ちを 高めてくれる

 私は57歳だけど、メンバーは若い人が多くてね。すごく前向きで明るくて元気をもらえます。がんサバイバーで、57歳で、フルマラソン初挑戦なんて、なんだかそれだけで表彰ものですよね。

 杉浦さんは、「体調が良くなり、走れるほどに元気になったから走るのではなく、走ったから元気になりました! そういうがんサバイバーが続出するんですよ」と話されていました。私も体調としてはずっとしんどいんです。肝臓の持病もあるので、激しい運動は肝臓に負担がかかると、主治医もあまり賛成ではありません。絶対に無理はしないでくださいって言われています。だからと言って、安静にしていたらがんが治るわけではない。走るという行為が、自分で治ろうという気持ちを高めてくれるのだと思います。ポジティブですよね。だからハワイの美しい海や緑を眺めながら、楽しくマイペースで走ったり歩いたりします。

 チーム「メッセンジャー」は、あらかじめ予想タイムを自己申告して、数人のチームで走るんです。北海道から沖縄まで、全国から集まった仲間と、異国のハワイで合宿するようにしながら過ごすだけでも絆が深まるのに、励ましあいながら完走をめざすなんて、なんだか走る前から感動しています。すごいチャレンジだし、すごい達成感ですよね。こうして心がワクワクすると、ナチュラルキラー細胞ががん細胞をやっつけてくれる。しかも自分に自信が持てる。がんだから可哀想なんて思って欲しくないですものね。元気に笑顔で走りぬきたいです。

 

 

高原和也さん:沖縄県在住

 シャカっていうんですか?沿道で応援してくれるハワイの人がシャカポーズしてくれたり、ハイタッチしたり。Uターンしてからはランナーともいっぱいハイタッチして、声かけあって、もう一杯、満タンの元気をもらいました。

 僕は講演会などで、白血病の体験談を話しても冷静というか、涙が出るようなことはもうないんですね。でも今日、20Kmを過ぎたあたりかな、走ってる僕の体ってすごい、筋肉も血液もものすごく働いてくれてすごいって、なんか、ありがとうって感謝がこみ上げてきて、泣きそうになっちゃって。いけないいけない、泣いてる場合じゃなくて走ってる場合なんだって思い直して(笑)。いやあ、走れるまでになった体に感動しました。

白血病で余命宣告、自分の中の 治る力を信じぬいて元気に

 10年前に白血病にかかりました。骨髄バンクでドナーが見つかり移植してもらったんですが、1年経たずに再発、放射線療法を受けましたが、全身に腫瘍が広がり、余命宣告を受けました。余命というより、たった今死ぬかもしれないほど悪い状態でした。高い民間療法を次々とやり尽くしてそれでも悪化、体の両面にもがんができました。そんな時に貴さん(杉浦氏)のメッセンジャーの活動をネットで見つけ、「命はやわじゃない、治る力は自分の中にある」というメッセージを聞き、とても腑に落ちるというか、賛同しました。

 今までの僕は自分とちゃんと向き合っていなかった。死ぬかもしれない、死んだらどうしようって、生きているのに、死ぬことばかり考えていた。まず、生きていることに向き合わなきゃ、逃げずに生きることと向き合わなければならないと気がつきました。それが自分の責任だと思った。

 生きることを考え始めたある日、断食道場に行ったんですね。そうしたら鼻水とか痰とかが出続けて、体の表面のがんが消え始めた。2週間できれいに消えてしまったんです。体というか、命というものには奇跡のような治る力があるんですね。

 今は沖縄の県庁に勤めながら、普通に生活しています。走るのはあまり好きじゃなかったけど、ハワイの皆さんは温かくてフレンドリーだったから、来年もエントリーしたいです。

 

 

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