101歳、百寿インタビュー 畑惠美さん

 09/04/2017 : 1471 Views

 

タモツさんの第一印象はどんな感じでしたか?

「どうだったかねえ」

ハワイに来るのは不安ではなかったですか?

「さあ、昔のことは全部忘れてしまったからねえ」

家族と離れるのは寂しくなかったですか?

「さあねえ」

事前に聞いていなかったためにハッとした。エミさんは認知症なんだ。

だったら少し話題を変えてみよう。私は習字道具を取り出して、エミさんの前に置いた。

エミさん、お習字で101歳のお祝いを書いてくれませんか。

「私が101歳なの?」

はい、おめでとうございます。

「まあ101歳」

はい、それをお習字で。

「習字はもうずっとしていませんよ」

嫌ですか? 

「嫌じゃないけど、そうねえ、やってみましょうか」

興味を持ってくれた。墨汁をプラスチックの容器にドボドボと出すと、 「硯は使わないの?」

ニヤリ。太い筆で大きな字を書いてもらおうとすると、

「私はそんな太いのは使えない、いつも細い筆でしか書きません」

と、きっぱり。

「あれ、置くものは?」

あ、すみません、文鎮を忘れました。コースターで代用させてください。

「じゃあ2枚置かなきゃ。なんて書きますか?」

祝、百一歳と。お名前のサインもお願いします。

エミさん、墨をつけて筆を持ったまま止まってしまった。字が思い出せないのかな。急いで取材ノートに“祝 百一歳”と書いて脇に置いた。

エミさん、漢字を見ておもむろに書き出す。筆先を半紙に優しく置き、トメやハネにメリハリを入れながら書きはじめた。

半世紀以上昔にたしなんでいた書道の腕前は健在

 

小ぶりながら、明らかに書道のたしなみのある筆の運び。書き順を少し迷ったけれど、バランスよくまとめた。

「お母さん、上手ねー」

アケミさんが褒めても無言。

百一とまで書くと、“歳”という字を見つめたまま、また筆が止まる。しまった、画数が多すぎるのだ。あわてて見本を、簡単な“才”の字に直した。

エミさん、こちらの才の方が書きやすいですよ。エミさん無言。そしてもとの難しい方の歳の字をゆっくり書き出した。

形はわかる。ただ文字としては忘れてしまった。だから書き順はスルーして、絵を描くように形を再現していく。

厂(ガンダレ)の中も、ていねいに模写する。

「母は昔からとても手先が器用でした。料理も上手で、ばらちらし寿司が得意で。人参や玉子の千切りもパーフェクト。シュークリームも手作りだったし、ローカルのラウラウやハウピアもよく作ってくれました」

エミさん、得意料理は何ですか。

「そうねえ、ばらちらし」

即答。やっぱり! 

じゃあ、好きな食べ物は?

「うなぎ丼、鯛茶漬け、スペアリブも好き」

食いしん坊ですね。

「母は茶道も長くしていました。ワイキキのブレイカーズホテルの茶室で、毎週裏千家の茶会があります。5年前までそのボランティアに毎週行っていました」

しっかりと「祝 百一歳」としたためた

 

母は弱音を吐かない人。でも、父の死後1年たって号泣して

「母はいつも前向きだから、見知らぬハワイに来ても不平を言わず、明るく過ごしていました。ものすごくポジティブ。周りの人は、母のことをスノッブとも言いますけど。いつも自分らしく、日本人としてのプライドを持って生きてきた、強い人です」

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