帯津良一さん特別講演会 死ぬまで元気に生きる知恵

 05/05/2018 : 198 Views

会場はホテルニューオータニ・カイマナビーチ・ホテル。格式高い吉祥松が描かれたインペリアルルームは、波音が聞こえるオンザビーチ

 

 

 

日本におけるホリスティック医学の第一人者で、外科医として長年がん患者を診てきた帯津良一さん。帯津三敬病院の名誉院長で御歳82才ながら、フルタイムの現役医師として毎日働いている。しかも休日まで返上し、全国を駆け巡っての講演会やらセミナーに引っ張りだこでいとまなし。挙句、“月刊帯津”と言われるほど著書刊行がおびただしく、誰が数えたのかその数230冊。寝る間はあるのか?そんな、スーパー元気な帯津センセーがハワイにやってきた!先週開催された特別講演会『死ぬまで元気に生きる知恵』でのお話しと、帯津先生への日刊サンインタビューを交えてお伝えします。    

 

臓器や局所ではなく、人間まるごとを診るのが医学というもの

 

私が考えるホリスティック医学(Holistic Medicine)とは、からだの身体性、こころの精神性、いのちの霊性が一体となった、人間まるごとそっくりそのままを捉える医学です。もともとは1960年代のアメリカで、病巣、局所を診ることだけに偏った、西洋医学に対する反省あるいは批判から起こった考えです。だから我々日本人から見れば、ここハワイを含むアメリカはホリスティックの大先輩という風土なのです。

 

 

まず、ホリスティック医学との出会いからお話ししましょうか。私は都立駒込病院時代(1975〜1982)、手術の技術や集中治療室などの環境が良くなり、手術成績が著しく向上したのを追い風に、外科医として食道がんの手術に明け暮れていました。しかし再発して戻ってくる患者さんが後を絶たないのを見て、だんだんと西洋医学の限界を感じ始めました。

 

人の体には多くの器官があり、互いに連携していて、臓器の間にはすき間もあります。臓器と臓器が密着しているわけではない。このすき間が何のためにあるのか、医学的に解明されていないというか、着目すらされていません。西洋医学は目に見えるものしか対象としませんからね。病巣、つまり局所を手術することには長けていますが、「つながり」や「すき間」に対する解答を持っていない。全身の調和に対してはまったく無力なのです。私はこのすき間には目に見えない物理的な量があって、からだ、こころ、いのちをつなげている“場”となっているのではないかと考察しています。“場”とは、ある物理量が連続して存在する限られた空間のことです。電気の電場、磁気の磁場、重力の重力場、中国医学でいうなら気の場、そして私が考える生命に直結した生命場です。生命場には霊的、スピリチュアルな場も含まれます。

 

先ほどアメリカが大先輩だと言いましたが、アメリカに本部を置くWHO(世界保健機関)には、憲章の前文に健康の定義というものがあります。 「健康とは、身体的、精神的、および社会的に完全な幸福(ウェルビーイング)のひとつの状態をいうのであって、決して単なる病気や障害の不在を意味するものではない」というのですね。ところが20年前に行われたWHO理事会で、この憲章に「霊性」と「ダイナミック」という言葉を加えてはどうかと、議論をしました。新しい案は、「健康とは、身体的、精神的、社会的かつ霊的(スピリチュアル)に完全な、ひとつの幸福なダイナミカルな状態をいうものであって、決して単に病気や障害の不在を意味するものではない」というものです。そして霊性については、「自然界に物質的に存在するものではなく、人間の心のなかに湧き起こってきた観念の−−−とりわけ気高い観念の−−−領域に属するものである」という説明がついていたのです。

 

私は我が意を得たりと、大いに喜びました。科学やエビデンスがすべてではないのです。スピリチュアル軽視の医学には限界があります。私たち人間の体には目に見えなくても存在する気の場や霊的な場があるのです。WHOは前文の採択としては見送りましたが、ホリスティックな考え方をする医療従事者が多いという証しですね。生命場のエネルギーを高めれば、こころも養え、からだの自然治癒力ものびのびと働いてくれます。霊的に幸福な生命場のエネルギーを高めることこそがホリスティック医学の使命なのです。

 

中国医学の気功、吐く息で免疫力を上げる

 

ではいかにアプローチをすれば良いか? 私は多くの書物を読みあさり、全身の調和を診れるのは中国医学だと確信し、北京と上海のがん治療施設をこの目で見て回りました。中国医学では、漢方薬と鍼灸、気功と食養生が基本ですが、中でも一番がんの再発防止や治療成績を上げているのは気功でした。北京の肺がん研究所では、手術を行う時に2本だけ鍼麻酔を打ちます。それが事前に3週間、気功を続けると鍼麻酔の効果が上がる事実を目の当たりにしたんです。皆さんも息を吐くだけで、心身にたまっているさまざまな老廃物を捨てることができるんですよ。吐く息に意識を集中させると、自律神経の副交感神経が優位になるんですね。副交感神経が活発になると、リンパ球が増えるので免疫力が強化され、がんになりにくくなります。

{現在、川越の帯津三敬病院では一週間に15種類もの気功が30コマ行われていて、患者さんは自由に参加できるのだという。帯津先生も元極学(げんきょくがく)、楊名時太極拳(ようめいじたいきょくけん)、新呼吸法「時空」などの気功指導を担当している。

ハワイ滞在中もカピオラニ公園で朝、気功をしておられた}

 

ホリスティック医学は、治しと癒しの統合

 

アメリカに遅れること有余年、1987年にNPO日本ホリスティック医学協会をやっとのことで発足させました。西洋医学の場合、局所しか診ないから、対処療法になりがちです。どこかの臓器が悪ければその薬を、悪化すれば手術を、薬を飲みすぎると胃が荒れるので今度は胃薬を……結果、患者さんは薬漬け、治療漬けになります。しかしホリスティックは病の治しだけでなく、心の癒しも統合して行います。3本柱は、まず治しの医学、病巣に働きかける西洋医学や漢方による治療です。私はがんの標準治療を否定しているわけではありませんから、必要なら手術も放射線も化学療法も免疫療法も勧めます。治療の選択肢は多ければ多いほどいいし、意図的に選択肢を狭めることはしません。がんの末期の緩和ケアになったとしても、患者さんが望めば、ホメオパシーやサプリメントなど、あらゆる治療法をあきらめずにやり続けるお手伝いをします。我々の病院では、漢方粥や玄米菜食など食事療法も選択できます。

 

2つめは癒し。心や霊性に働きかける瞑想やリラクゼーション、心理療法や音楽療法、気功やヨーガなどです。そして3つ目は患者さんと治療者の関係性。患者さんの人生観や死生観をシェアし合うことを心がけ、患者さん自身が病気に前向きになれるよう一緒に考えます。一人ひとりの患者さんにフィットする、カスタムメイドな治しと癒しを行うのです。ただね、ホリスティック医学も確立した方法論があるわけではありません。まだまだ志半ばですね。がんに対しては絶対に効く治療法もないし、絶対に効かない治療法もないのです。

 

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