全てを懸けて守るべきものがある 五省―時を超えるその精神

 08/31/2015 : 2026 Views

 

女性としてのメリットもデメリットも感じない

駒谷3等海尉は、女性自衛官であることのメリットもデメリットも特に感じたことはないという。「訓練や仕事の過程で、男性と比べた時に大変と感じたことはありません。逆に、私たちが感じるというよりは、組織として女性を任務につかせる上層部に気を使わせてしまうのかなという気持ちがあります。結婚や子どもを持つというライフステージの変化についても、男性にとっては問題にならないことですが、女性の場合は実際に出産するために任務につけない期間ができてしまうわけですから。」将来、子どもを持つタイミングは配属される職種によって考えたいという。まずは仕事ありきというわけだ。「経済学を学んでいたこともあり、経理・補給という職種を希望しています。幹部候補生学校は、防衛大出身の1課程と一般大学出身の2課程に分かれているのですが、防衛大出身者よりも私のような一般大学出身者の方が、民間感覚を持っていると思うんです。大学時代の様々なアルバイト経験や、一般の企業への就活経験がそうした感覚を養ってくれたと思っています。経理・補給は外部とのコミュニケーションが必要な部署ですし、そうした自分の強みをこの組織で役立てたいですね。」

 

24時間生活も仕事も一緒の艦の上では自分を偽れない

「この航海が終了したら、私たちは幹部、つまりリーダーの立場として配属されるわけです。リーダーとはいっても新米なので、経験豊富な部下の方々に仕事を教えてもらわなければ何もできない。だからぐいぐいと引っ張っていくリーダー像ではなく、下の人が支えてあげたいと思ってもらえるように頑張っている姿を見せていかなければいけないと思っています。この航海中も、海曹士の方々ってけっこう見ているんですよね。一回でも手を抜けば信頼関係が崩れてしまうと思います。特に海自の場合、一度艦に乗れば生活と仕事の場が同じなので、24時間一緒にいる。偽ってもすぐにボロがでてしまいます。自分自身を磨いて、常に誠実で徳のある人間にならないと誰もついてきてくれないと思います。」

 

チームワークの難しさー克服すべき課題

自分自身を磨いていこうと読書にも励む。「今読んでいるのは『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』と『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』の2冊。配属後は、リーダーにもなり部下でもある立場になりますから少しでも備えておきたいですね。この遠洋航海に出る前に、「しらゆき」という練習艦で日本での航海があったのですが、そこで感じたのはチームワークの難しさ。チームメンバー内のコンセンサスを得るのがとても大変でした。同期であっても一人ひとりスキルもモチベーションも違う。そしてそれぞれの目指すゴールも違います。改めてチームで動くことの大変さを実感しました。どのようにチーム内の意思統一を図るかなどは、配属される前にこの航海で身につけるべき大きな課題です。」

 

 

これまで自衛隊は顔の見えない存在だった。しかし東日本大震災の後、自衛隊は私たちにぐっと身近な存在となった。黙して語らず、命がけで任務を遂行する献身的な姿に、国民もそして他国軍も心を動かされる。武力を持たず、諸国を信頼し、全ての武器を放棄する。もちろんそれが理想的だが、現実的には、世界のあちこちで争いごとが止まらない。そんな中で日本が70年もの間平和を維持できたのはやはり平和を守るという自衛官の高いモチベーションによるところが大きいのではないだろうか。「そのために我々はいるんです」―静かだが、自信に満ちた自衛官の言葉に、日本の平和はきっと守られるそんな想いを強くした。

 

 

 

 

海上自衛隊の精神的支柱となっている「五省」は、旧大日本帝国士官学校である海軍兵学校時代から用いられている五つの訓戒だ。第二次世界大戦の後、日本を占領していたアメリカ海軍の第七艦隊司令官ウィリアム・マック中将が、五省の精神に感銘を受け、英訳文をアナポリス海軍兵学校に掲示させたという逸話が残っている。発案者は第34代海軍兵学校長、松下元少将。現在でも、海上自衛隊幹部候補生の学生たちは、毎晩自習終了時刻の5分前になると、五省を唱和して、自分を顧みて日々の修養に励んでいるという。

 

五省

一 至誠(しせい)に悖る(もと)るなかりしか

 

真心に反することはなかったか

 

一 言行に恥づるなかりしか

 

言葉と行いに恥ずかしいところはなかったか

 

一 気力に欠くるなかりしか

 

気力が欠けてはいなかったか

 

一 努力に憾(うら)みなかりしか

 

努力不足ではなかったか

 

一 不精に亘(わた)るなかりしか

 

不精になってはいなかったか

 

 

アナポリス海軍兵学校(United States Naval Academy)に掲載された英文訳

Hast thou not gone against sincerity?

Hast thou not felt ashamed of thy words and deeds?

Hast thou not lacked vigor?

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