ハワイの天才少女現れる 全米中からたった一人選ばれた体操界期待の新星

 01/07/2016 : 2510 Views

鍛え抜かれた人間の身体が宙を舞い、ひねりを加えて、着地する。人間の身体は、これほどまでの能力を秘めているのだという驚きと共に、そのすきのない美しさに見とれてしまう。「体操」という競技は、人類の限界へ挑戦しているようだ。オリンピックはその体操界の頂点。選手であれば誰もがオリンピックを目指して、死にものぐるいの練習を重ねる。だが、その中で光輝くトップアスリートとなれるのは、やはり持って生まれた天賦の才がある選手なのだろう。

このハワイから次代の女子体操界を担うとんでもない新星が現れたというニュースを聞き、日刊サンが緊急独占取材を行った

 

 

「ウイ・ソウマ」その名前にハイライトを!

「誰だ、あの子は?名前は?」次代を担うオリンピック選手を発掘するナショナル・テスティングの真っ只中、まだ何百人も選手の審査が残っているにも関わらず、体操女子USA代表チームのヘッドコーチ、ワレリー・リューキン氏は居並ぶジャッジたちにそう尋ねた。

「ウイ・ソウマです」とジャッジの一人。

「その名前にハイライトをしておいてくれ。今すぐだ」。

ワレリー・リューキンと言えば、ソビエト男子体操全盛時代に中心選手として活躍したオリンピックの金メダリスト。アメリカで永住権を取得した後は、米国体操界の指導者として活躍し、中でも世界新体操選手権の金メダリスト、アンナ・コチニエワ選手との間に生まれた実娘ナスティア・リューキン選手を2008年の北京オリンピックで体操女子個人総合での金メダル獲得へと導いたその指導力が評価されている。

親子2代で金メダリストとなり、これまで、金メダル級の多くの才能を見出し、育ててきたその確かな目が、ハワイから彗星のごとく現れた新たな才能を見つけ出した。本物は本物を知るのだ。

 

全米中から選りすぐられた300人の選手からたった一人頂点に選ばれた金の卵

リューキンヘッドコーチを興奮させた才能の持ち主は相馬生(そうま・うい)さん。アメリカの市民権を持つ東京生まれの日本人だ。

彼女は今夏にテキサスで行われた3か月に亘るナショナルテスティングで、オリンピック強化プログラムの頂点デベロップメンタルチームに招き入れられた。

デベロップメントタルチームに選ばれたのは全米50州から集められた選手300名の中から今年はたった一人、生さんだけだという。彼女はこれから、ナスティア・リューキン、ガブリエル・ダグラスと錚々たる金メダリストの後に続く米国体操チームを背負って立つ金の卵として米国体操界が大切に育てていく選手となる。

 

別格中の別格「Developmental Team」

 

アメリカは体操大国だ。特に女子体操では、現在世界のトップを走り続けている。先月27日、英国のグラスゴーで行われた体操の世界選手権でも三連覇を成し遂げ、無敵の強さを見せつけた。

強い競技には、良い指導者が集まり、選手の層も厚くなる。この国の広大さから考えると、人気競技でその頂点ともいえるオリンピック代表選手となるには、努力だけでなく、もはや「神」の領域ともいえる類まれな才能が必要だ。

オリンピックは平和的な祭典だが、その実、国の威信をかけた真剣な戦いだ。どの国もより多くのメダル獲得を目指して、各競技で強化プログラムを実施し、才能を持った選手の育成に力を注いでいる。それが、その国のお家芸ともいえる競技ならなおさらだ。米国体操界はその才能を早期に発掘し、育成するために、8歳から10歳の選手に対し毎年ナショナルテスティングを行いオリンピック強化キャンプに招く選手を決定している。

ナディア・コマネチ選手などを育てたことで知られるベラ・カロリー氏の名前をとって「Karolyi Camp」と呼ばれるこのキャンプはテキサスにあり、「T O P S  Program」と呼ばれる強化プログラムを行っている。このキャンプに自費で参加を許されるのが「キャンプB」。50名の選手が選ばれる。そのワンランク上が、国から招待される「キャンプA」。

こちらも50名の選手が選ばれる。若い才能を見出し、育てていくこのシステムが、体操大国アメリカの強さの所以だ。だが、その中でオリンピック選手となれるのはほんの一握り。そのために両親は幼少期からわが子に体操の英才教育を施し、このキャンプに入るために、皆血のにじむような努力をする。

だが、このキャンプの上に、さらに「HOPES」というプログラムがある。ここに入れるのはもはや「別格」の特別な才能をもった選手たちだ。しかし、ここで終わらない、その上には「Developmental Invite」という雲の上の存在のプログラムがあるのだ。そこに選ばれるのはたった二人。しかし、今回彼女は、別格中の別格、その頂点である「Developmental Team」に今年度ただ一人選ばれたのだ。

 

「ウイ」効果でハワイ体操界始まって以来の快挙!

ここハワイ州から「Developmental Team」に選ばれた選手はこれまでに一人もいない。最高ランクでもキャンプAに参加できた選手がいただけだった。チームに一人凄い選手がいると、良い影響を受けてチーム全体のレベルが上がるのか今年はハワイから「キャンプA」と「キャンプB」に6人が参加できることになり、「Developmental Invite」にも一人が選ばれたという。まさに「ウイ」効果ともいえるハワイ体操界始まって以来の快挙となっている。

 

単なる「習いごと」から「人生の目標」へ

驚くべきことに、生さんが体操を始めたのは、オリンピックを目指す選手の中ではかなり遅い、6歳からだという。はじめは、両親が日本に行っている間にこっそりと始まった習い事だった。

実は、母親の石川香さんはSMAPの中居正広さんの「金曜日のスマたちへ」などで注目された著名人だ。様々な店を経営する実業家の香さん夫妻が日本に帰国中に、生さんの友達の母親が、生さんを勝手に体操教室に通わせていたのだという。彼女こそ、いち早く生さんの才能に気付いた人物であり、香さんは今では彼女を恩人と感謝する。だが当初は現地の日本語補習校にも通わせていて、生さんのスケジュールも忙しいため、週一回の体操教室に通わせることも生さんの熱意に負けてしぶしぶだった。

ところが、体操を習い始めた彼女は、魚が水を得たように、めきめきとその頭角を現した。8歳ごろになると、母親の香さんもその才能に気付き、彼女の才能を更に伸ばすために奔走する。単なる習い事であった「体操」は、生さんの人生そのものとなり、「オリンピックを目指す」というのが家族の目標となった。

 

 

超人的なスケジュールをこなす  心は既にプロフェッショナル

彼女の凄いところは、その才能に溺れずに、目標を見据えて着実に努力をするところだ。体操を始めたのが遅かったこともあり、人の百倍、千倍も練習している。夏休みなど学校が休みの間は、一日約8時間の練習を行い、学校がある期間は、午前中に学校に出席し、午後1時から8時までを練習に費やす。

学校には「アメリカチームにとって是非とも必要な選手」であるということで、生さんへの特別の配慮を要請するリューキンヘッドコーチから直々の手紙が送られた。午後の授業に出られない分、練習と練習の合間に、スペイン語の先生がジムまで足を運んで個人レッスンを行ったり、バイオリンの先生の自宅まで行って授業を受けるなど、学校も生さんを全面的にサポートする構えだ。

まさに超人的なスケジュールだが今まで体操をやめたいと思ったことは「一度もない」という。小さな体に無限の可能性を秘めた若干10歳の天才少女は、精神的にはもうプロフェッショナルなのだ。

 

自分の夢を叶えられるのは、自分しかいない

365日、一日8時間近くの練習を続ける生さん。恒例となっていた、家族での海外旅行やスキーも体操の練習のためと祖母や、父親と共にハワイに残る。

たくさんの楽しいことを諦めなければならない生さんにその気持ちを聞いてみると。「少し辛い時もあります。でもオリンピックに行くという目標の方が大切です」まだあどけなさが残る優しい笑顔が、きゅっと引き締まり、アスリートの顔を見せる。彼女は知っているのだ。自分の夢を叶えられるのは、自分しかいないことを。

 

「帰りなさい」その一言で恐怖を克服

目標とするのは、シモーン・バイルス。現在のアメリカ代表チームのエースであり、世界体操で2連覇中。男子でもできないような難易度の高い技の組み合わせを披露するパワフルな体操選手だ。難しい技に挑戦するのは怖くないのかと、生さんに聞くと、「怖くない」と答える。「一度だけ、TOPSのプログラムで、怖くてできなくて泣いていたら、コーチから「帰りなさい」と言われたんです。それ以来、怖いという気持ちを持たないようにしています」。なんという精神力だろう。しかし、それがオリンピックという人類最高峰のアスリートへ課せられる厳しい要求なのだ。彼女にとって、鉄棒や平均台から落ちる恐怖よりも、オリンピックへの道を閉ざされることが最大の恐怖だったのだろう。

 

オリンピック出場と金メダルを宣言

「絶対にオリンピックに行きます」そう宣言する生さん。目標はもちろん金メダルだ。彼女は、すでにオリンピックの舞台を見据えている。東京オリンピックの年は、彼女は15歳。願わくは、年齢制限の引き下げで、彼女の華麗なる演技を東京オリンピックの舞台で見たいものだ。日本とハワイのアメリカの両方の誇りとなってくれるに違いない。

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