【インタビュー 輝く人】NGOジュレー・ラダック主宰 スカルマ・ギュルメット

 08/28/2017 : 1360 Views

 

日本といっても特に東京。東京はやっぱり特別ですよね。人工的に作られたものに囲まれていて、みんながロボットのように動いている。人間はもともと自然のなかで暮らしてきたのですから、人工的に作られたものばかりに囲まれていると、健康を損なったり、心が壊れたりするのは当然のことだと思うんです。  

都会には人間関係でストレスを抱えている人達も多いけれど、それは誰が悪いというわけではなく、環境が原因だと思うのです。環境がそういう人間をつくってしまう、環境が人を変えてしまうんだと僕は思うのです。人間は自然からエネルギーをもらって生きてきたのですから、人は自然とつながっていないとバランスを崩すんです。  

 

ジュレー・ラダックのプログラムに参加すると、農村の生活、または生き方からいろんなことを学びます。農村では、循環型で環境に優しくて、しかも自給持続的な生活が可能です。それはどうやって成り立っていて、どうやって今まで続いてきたのか自分の目で確かめることができます。そして、みんな、このプログラムに参加することによって、物が無くても、人間は心が豊かであることに気づくのです。  

このプログラムに参加したことをきっかけに、社会貢献ができる人間になろうと新たな目標をもったり、新しい生き方を目指す人は多いです。今の生き方を変えようって、大切な一歩をふみ出すことができるんです。最近、スローライフを実践する人が日本でも増えてきていて、都会を離れた地方で、まるでラダックのような生活をしている方もいるので、徐々に変化してきているような気もしますね。

 

—逆に、ラダックの人達が抱える問題は?

 

ラダックの人達は、今、いちばん悩んでいる時期だと思います。まずは教育ですね。教育を受けるために、ラダックから出てしまうと人口が減って、ラダックにとって大切な農作業を手伝える人が誰もいなくなってしまう。そうすると動物も減る。伝統的な生活を守りたい反面、モダンな生活を好むラダック人も増えつつあって、そのバランスがうまくとれなくなってきているんです。  

また、ラダックを変えようと動く人達はインドの大企業に勤める人達で、ラダックの文化、経済、伝統などをよく知らない人達も多く、コミュニティを無視した一方的な判断を下して、ラダックの生活は保存されず破壊されてしまいます。開発をするときに、コミュニティと共に考えていくということは非常に大切なことなのに、勝手に決められるのが非常に残念です。コミュニティも巻き込んで一緒に考えていれば、住民達も責任をもって意見交換ができるのに。  

 

そのほか、若い人達が、教育を受けに学校へいったとしても、そこではラダック語ではなくインド語で教育を受け、インド式の経済を学んでくるので、ラダックに帰って来ても働くところがないんですよ。ラダック人は、本来は政府の仕事をしたいと思っている人が多いけれど、インド本土にいくと大企業にスカウトされ、結果そのまま戻ってこない。そのためにも、もっとラダックをきちんと紹介していかねばと思うんです。

ちびっ子尼僧

 

—ラダックには、ダライ・ラマ法王も毎年、訪れるそうですが、 スカルマさんは直接お会いする機会があったそうですね?

 

はい。僕の知り合いが、ダライ・ラマのお寺でお坊さんをしているのですが、日本からスタディグループを連れていくときに、どうにか会えないかと相談したら、「そうか、しょうがないな」とオッケーしてくれたんです。  

僕にとっては小さな頃から、家中にダライ・ラマ法王の写真が飾ってあり、生活の一部であり、キリスト教でいう神のような存在でしたからね。お会いしたときは、自動的に両手をあわせて拝んでしまいました。いつもニコニコしていてどんな人でもハッピーにさせてくれる方ですね。ひとつの宗教、国を超えて世界の人達の幸せを考えている。そして絶対に悪口を言わない。チベットは中国のことを悪くいう人が多いけれど、ダライ・ラマ法王は絶対に悪く言わないですね。敵のことを悪く言わないのは、相当の訓練がないとできないことですよね。生きている人達はすべて平等と考えているんです。  

ダライ・ラマ法王に直接お会いして話す機会なんて普通ありませんですから、本当に光栄なことでした。

 

—スカルマさんにとって、人助けとは永遠のテーマのような気がしますが、それはスカルマさんがあえて選んだわけではなく、ラダック人のDNAというか、当たり前のようなことなんでしょうね?

 

はい、まさにそうですね。いつも自分以外の人をどうやったら助けられるのか考えているのは、ラダックで生まれ育ったことが大きく影響していると思います。でも、それはしっかりとした「ギブ&テイク」な関係なんです。与え続けていると空っぽになってしまう。  

でも、ラダックの場合、誰かがなにかをしてくれたら、自分もなにかをしてあげるのが当たり前ですから、「人助け」というよりは「助け合い」なんです。それが本来の人間の姿のような気がします。

駆け引きが多い大都会では、助けてあげても、自分が助けが必要なときに誰も助けてくれないこともあります。じゃあもう助けない!と意固地になってしまい、結果、人と関わるのが怖くなって表面的な付き合いになってしまう。なんだか残念ですよね。電車にのっていて誰かが倒れたり、転んだりしても、けっこうみんな無視しているでしょう?僕はビックリしましたよ。  

電車も最初日本に移住したときはかっこいいと思っていたけれど、乗っているうちに疑問に思うことが多くなってしまって。だって、あれだけ人が多いのに、誰もお互いに感心を持たずに、ただスマホを眺めて乗っているだけ。だから最近は自転車通勤です(笑)。そういう大都会の人達に僕がいきなり生き方について語りだしても、なかなか理解してくれないことも多いですよ。「最初はスカルマさんのこと信じてなかったです」って言われたこともありますから。ですから、無理矢理なにかを人に押し付ける気持ちは一切ないんです。こういう生き方もあるということを、ひとりでも多くの人達に伝えていきたいと思うのです。

ソーラークッカー

 

—今後の活動予定は?

 

サステイナブル=持続可能な世界をつくっていく為に、どうすればよいのか?と考えていまして、ラダックにもソーラークッカーという器具を持ち込んだりしています。燃料を探す必要なく、こういった太陽エネルギーを使って簡単に調理ができるソーラークッカーの普及支援や、環境教育などは続けていきたいと思っています。  

また、ラダックは、伝統的な生活と現代的な生活のバランスが失われつつあり大変悩んでいます。農業を営む人が減って動物が減り、生活がかわることに不安になっています。ですからこんな時こそ、経済的にこれだけ早く上り詰めた日本に暮らしている人達の心の悩みを、直接彼らから感じ取ることによって、ラダックでの生活を見つめ直してほしいと思うんです。僕が言葉で言うよりも、やはり直接、その人達と交流して吸収しないと、こういうことはわからないんですよね。ラダック、そして日本でも、こういったオルタナティブな教育をしていくことはとても大事だと感じています。

 

 

今回ハワイで講演会をする機会に恵まれましたが、ハワイへ来るにあたり、ホノルルファンデーションの方達などに多大なサポートをして頂きました。  

今回ハワイでお会いした方達が、是非ラダックに行きたいとか、ハワイとラダックのツアーも是非検討しましょう!と言ってくださったりして、大変嬉しく思っています。よりより未来作りのために、日本、ラダック、ハワイ間で、より楽しくやっていきたいと思っていますので、ハワイの皆様、また他の国々の方々も、ご参加いただければと願っています!  

ハワイで興味をもってくださった方は、ホノルルファンデーション、もしくはジュレーラダックにぜひご連絡をいただければと思います。ラダックでホームステイをすることによって、自分を取り戻すきっかけを掴んでほしい。こうして今後も、僕の生まれ育ったラダックと日本、そしてハワイを含め、絆を強くして、より多くの世界の人々がバランスのとれた人生を送れるといいなと願っています。

 

インタビュアー:内田さちこ(日刊サン 2014.11.22)

 

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