【インタビュー 輝く人】ハワイ日本人学校レインボー学園 校長 松井敏さん(2012〜2013年度)

 10/02/2017 : 5657 Views

レインボー学園はカイムキ中学校を使って18年になりますが、公立の学校をそれほど長く使っている団体はあまりないようです。子どもたちが使うには、大人と違って、自由にのびのびと走り回れるグラウンドがないと学校として機能しませんし、送り迎えの車の乗り降りスペースも必要です。そういう意味でも今ほど条件のいいところはあまりないのではないかと思います。  

こうして、40年間みなさんに支えられてきた学校だと感じています。40年経つと保護者が卒業生ということもあります。思い入れがあってお子さんを通わせてくれたりしている卒業生もいることは嬉しいことですよね。

 

子どもたちは楽しくも、大変です  

もともとはご両親の仕事の関係で日本からハワイに来て、いずれ日本へ帰る生徒がほとんどでしたが、最近は変わってきていて、8割はもしかしたら一生アメリカに住むという生徒が多くなっている傾向にあります。お父さんがアメリカ人だったり、アメリカで生まれたり。今は日本へ帰ることが前提という生徒は2割くらいになりました。  

なぜそれでもこの学校に入学したいのかというと、お母さんの母国語である日本語を自分の子どもにも伝えたい、使えるようになってほしいという思いがあるようです。また、子どもが日本の大学へ進学したいと言うかもしれないのでそのときのために、という人も多くいらっしゃいます。  

 

でも、子どもにとってレインボー学園に通うというのは大変なことです。アメリカの学校は宿題が多いですよね。レインボー学園の生徒たちは月曜から金曜までの5日間は一般の学校に通っているわけですから、その宿題にプラスしてレインボー学園の宿題があるということです。レインボー学園は土曜だけしかありませんから、それを補うためにそれなりの宿題が必要になります。1日30分ずつすれば1週間で終わる量ですが、子どもが毎日30分勉強するというのは大変なことです。金曜の夜に泣きながらお母さんと宿題をしているということもあるのです。  

レインボー学園は入学試験も難しいと言われていますが、この学校は日本語を教えている学校ではなく、日本語で国語や算数など教科を教えている学校なので、日本語で指示が聞けないと授業についていけないのです。国籍については日本国籍でなくても全く構いませんが、日本語がベースにあるということが前提の学校なのです。もちろん、勉強をしていく上で日本語を覚えていくこともありますし、日本の礼節を学ぶということもあると思います。  

 

進級するときの基準があり、これも厳しいですよ。漢字テストの合格点のクリア、宿題提出率、授業態度、5割以上の出席率が必要です。現地の学校でサッカーや野球をしていると試合や練習は土曜日だったりしますよね。遅刻や途中で抜けたりすることを3回すると1日欠席になるのですが、そんな中でも子どもたちは頑張っていますよ。  

レインボー学園に入るために勉強する施設もあるらしいのです。そこまでして来ていただけるのは期待されているということなので、我々も頑張らないといけないといつも感じています。  

 

こうした状況でも頑張れるのは、学校が嬉しいのだと思います。日本の子どもたちと会えるのが楽しいんでしょうね。それから日本のイベントも彼らの楽しみのひとつです。例えば、日本では普通に行われる運動会はアメリカの学校にはありませんよね。日本と同じように、徒競走や障害物リレーなど日本の運動会を行っています。  

特に幼稚部では日本らしい季節の行事を取り入れています。お正月のお餅つき、3月はお雛様、5月の鯉のぼり、七夕まつりなど、日本の伝統文化を感じるイベントばかりです。保護者の方々もそういう行事を経験させたいと思っていただいていますし、ご自身も楽しみにしてくださっているようですよ。

 

休憩時間返上の先生たち

子どもたちも大変ですが、先生も大変です。みなさん子どもが本当に好きですよ。そうでなければ続かない仕事でもあります。というのも週1回、1日6時間の授業をして終わりというわけではではないのです。小学校4年生までは国語や算数など1日6時間を同じ先生が見ています。5、6年生になると科目別になりますが、先生は朝から晩まで授業しています。基本的には子どもたちから目を離せませんし、休み時間にトイレに行く時間すら惜しみながら生徒の作品を見たりしています。昼休みもお弁当を食べないで働いている先生もいるので頭の下がる思いです。  

日本はクラスの数の何倍も先生がいて、授業のない時間の先生が必ずいますが、レインボー学園は授業がない先生は1人もいない。すべての時間をすべての先生が授業をしています。  

 

よく日本の教育関係者や教育の勉強をしている大学生から、観光で行く際に学校見学をしたいとご要望をいただくのですが、全員授業をしていますから案内をできる人がいないのが現状です。私が時間のあるときには案内をするようにしていますが、見学に来るには目的と大学生なら指導教官の推薦状を送ってほしいとお願いしています。  

20年間レインボー学園で先生をしている方もいます。子どもたちが大きくなっていくのを見たり、卒業生がクリスマス前にカードとお菓子を持ってきたりすると本当に嬉しそうです。それが先生たちのなんにも代え難い喜びですよね。

 

教育をする上で大切にしていること

教員になって3年目くらいのときに、まったく言うことを聞かない生徒がいました。タバコを吸ったり、態度が悪かったり、とにかく困った生徒でした。それから30年以上が経って、私が車を買うためにあるディーラーに行ったときに、そこの営業所の所長さんがその生徒だったということがありました。彼には「先生には迷惑をかけて申し訳ないと思っている」と言われましたが、こちらこそ、この子は将来悪い人間になるんだろうなと思いながら、いつも怒っていた記憶しかなく、彼の姿を見てなるほどと思いました。  

今、成績が悪くても、態度がよくなくても、みんな自分より立派になるということなのです。自分は今は子どもたちより身体は大きく、教師という立場ですが、きっと将来逆転する。なかなか聞かない子どもたちに対しても、いつもそう思いながら接してきました。どんなふうに変わるのかなと楽しみですよ。  

自分より立派な大人になった生徒たちから見ても、自分は恩師なわけで、先生と言われるのが恥ずかしいくらいのときもありますが、子どもの成長を見られるという意味では、先生というのは楽しみがある仕事だなと思っています。

 

これからのレインボー学園

創立40周年になるレインボー学園は本当に多くの方に「見て」いただいていると感じています。レインボー学園の校長とわかるといろいろな方が声をかけてくださいます。  

学校を創っている人、一度でも関わったことのある人や卒業生も含めて、昔の日本のように自分の学校にとても愛着を持っています。卒業生がお子さんを入学させるのもそうですが、「レインボー学園がいい学校であってほしい」、「いい子どもを育ててほしい」というみなさんからの期待の大きさを感じ、同時に責任を感じています。  

昨年の最後の授業の日のエピソードなのですが、翌年から入学したいというお子さんのお父さんとお母さんが学校の門を入って来たときに、大きな声で「こんにちは!」と小学校低学年の女の子2人が声をかけたそうです。事務所の場所を聞いたところ、丁寧に説明をしたようですが、それでもわからない様子を見ると案内をしてくれたそうです。  

そういう話を聞くと本当に嬉しくなり、誇らしいと思いますよね。こうしてみなさんから褒められるような生徒が増えてほしいですね。  

勉強は大変な学校ですが、レインボー学園の生徒たちは将来必ず日本とアメリカの架け橋になることを確信しています。

 

ライター:大沢 陽子(日刊サン 2014. 1. 25)

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