日本の夏の風物詩 古典怪談と 幽霊画

 07/28/2018 : 260 Views

四谷雑談集

四谷に住む御先手鉄砲組同心、田宮又左衛門には、岩というひとり娘がいた。岩は容姿と性格に難があったため、中々結婚相手が決まらなかったが、岩の結婚仲介人が、浪人の伊右衛門という男を上手く騙し、婿養子として田宮家に入れた。しかし、岩の夫となった伊右衛門は、自分の上司である与力の伊東喜兵衛の妾に惹かれてしまう。妾は妊娠していたが、旦那の喜兵衛は、妾を伊右衛門に押し付けたかった。そこで、伊右衛門と喜兵衛は共謀し、岩を騙して田宮家から追い払った。岩は、騙されたことを知って怒り狂い、行方をくらました。その後、田宮家には不幸ばかりが続くようになり、ついに断絶した。家の跡地では怪異な出来事が起こるようになり、それを鎮めるために於岩稲荷が建てられた。

 

 

『新形三十六怪撰』より 「四ツ谷怪談」月岡芳年 (1890年)

『東海道四谷怪談』より「神谷伊右エ門 於岩のばうこん」歌川国芳(1852年)

 

東海道四谷怪談 (初演は1825年の江戸中村座)

 

元塩冶藩士、四谷左門には岩という娘がいた。岩の夫、伊右衛門は行いが悪く、岩は左門の命令で実家に連れ戻されていた。伊右衛門は、岩と復縁したい旨を左門に訴えるが、左門は伊右衛門が過去に公金を横領したということを理由に首を縦に振らない。そこで伊右衛門は、辻斬りの仕業に見せかけて左門を殺してしまった。同時刻、その場所では、岩の妹、袖に惹かれていた薬売りの直助という男が、袖の夫、佐藤与茂七を殺していた。そこに岩と袖が通りがかり、左門と与茂七の死体を見つけて嘆き悲しんだ。伊右衛門と直助は、岩と袖に「二人の父と夫の仇を討ってやる」と言いくるめ、伊右衛門と岩は復縁し、直助と袖は同居することになった。やがて岩は子を産むが、産後の肥立ちが悪く、寝込みがちになってしまった。伊右衛門は、そんな岩を面倒だと思うようになった。そんな中、高師直の家臣、伊藤喜兵衛の孫の梅が伊右衛門に恋をした。喜兵衛は、伊右衛門に梅の婿になってくれないかと話した。伊右衛門は、高師直家に仕官することを条件に、これを承諾。そして、按摩師の宅悦を脅して岩と関係を持たせ、それを理由に岩と離縁するという計画を立てた。  

 

 

『東海道四谷怪談』「お岩提灯」歌川国貞 (1825年)。左半分が入れ替わる仕掛け絵。

 

また喜兵衛は、岩の容体を心配するふりをしながら容姿が崩れる薬を岩に贈る。宅悦は、醜くなった岩を見て怖くなり、岩に伊右衛門の計画を暴露した。それを聞いた岩は狂乱し、その弾みで側にあった刀が首に刺さり死んでしまった。同じ時、伊右衛門は、家宝の薬を盗んだ小仏小平という男を殺した。そして、戸板に岩と小平の死体をくくり付けて、川に流した。こうして伊右衛門は、首尾よく伊藤喜兵衛家の孫の梅と結婚し、伊藤家へ婿として入ることになった。しかし、婚礼の夜に幽霊を見て錯乱し、梅と喜兵衛を殺して逃げてしまった。一方で、岩の妹の袖は直助という男に姉の敵討ちを依頼し、それと引き換えに身を許した。岩の妹の袖は、姉の仇討ちを薬売りの直助に依頼し、引き換えに直助に身を許した。そこへ、死んだはずの佐藤与茂七が帰って来た。直助に殺された男は、与茂七ではなかったのだった。こうして結果的に不貞を働いてしまった袖は、自ら与茂七と直助に手にかけられ、死んでしまった。死ぬ直前、袖は直助が実は自分の兄であることを告げた。直助は、実の妹と関係を持ってしまった罪悪感から自害した。その頃、伊藤家から逃亡した伊右衛門は、蛇山の庵室で岩の幽霊と鼠に苦しめられていた。真相を知った与茂七は伊右衛門を探し当て、舅と義姉の仇を討った。

 

牡丹灯籠 明治時代

 

三遊亭圓朝が25歳の時に書いた落語の怪談噺。1666年に刊行された怪異小説集『御伽婢子』や、牛込の旗本家で聞いた実話、江戸深川の米問屋に伝わる怪談などをもとに創作されました。  

『御伽婢子』は、中国・明の時代の怪異小説集『剪灯新話』の中の「牡丹燈記」を抄訳、改編したもの。そのあらすじは「若い女の幽霊が男と逢瀬を重ねたが、女が幽霊であることが男にばれてしまい、男は幽霊封じをした。女の幽霊は男を恨んで殺した」というものです。圓朝は、この「牡丹燈記」の話に、殺人、仇討ち、親子再会などの事件と、それらに絡む登場人物たちが複雑なドラマを繰り広げるという物語にしました。明治25年(1892年)には、三代目河竹新七が『怪異談牡丹灯籠』として歌舞伎化し、五代目尾上菊五郎主演で上演されました。

『新形三十六怪撰』より「ほたむとうろう」月岡芳年 (1890年)

 

牡丹灯籠

 

浪人の萩原新三郎と旗本・飯島平左衛門の娘のお露は、春の梅見の席で出逢い、互いに一目惚れをした。しかし、お露の父、平左衛門は交際に猛反対し、二人は会えなくなってしまった。お露は病になり、失意のうちに死んでしまう。それを悲しんだ乳母のお米もお露の後を追って死んだ。こうして幽霊になったお露とお米は、牡丹の形の灯籠を手に「カランコロン」と駒下駄を鳴らしながら、毎晩彷徨うようになった。この頃から、新三郎は日に日にやつれていった。ある夜、新三郎の下働きの半蔵は、新三郎が骸骨と寄り添っているのを見た。その骸骨は、幽霊になったお露だった。新三郎に何かあったら自分の仕事がなくなると思った半蔵は、妻のお峰と共に家中にお札を貼った。お露とお米は、お札のせいで家の中に入れなくなった。お米は、半蔵とお峰に「お露の望みを叶える手助けをしてくれないか」と頼んだ。それと引き換えに、お峰は新三郎に万一のことがあっても自分たち夫婦が困らないようにと、お米に金百両を要求。お米は了承し、夫婦に百両を渡した。半蔵とお峰が、約束通りに貼ったお札を全て剥がすと、お露とお米は新三郎のところへ飛んで行った。お露が「もう愛しい人を離さない」と念じると、新三郎は自らの手で自分の首を絞め、死んでしまった。

 

『怪談牡丹燈籠』小国政 (1896年) 出典:ukiyoe.yamabosi.jp

 

コラム♦♦♦怪談話を聞くと本当に体温が下がる?!

「怖い話で背筋がゾッとして寒くなる」ということで、怪談は夏の風物詩となっていますが、寒くなるのは気のせいではなく、本当に体温が下がるから、ということをご存知でしょうか。  「NEWSポストセブン(www.news-postseven. com)」7月24日付の記事によると、国際医療福祉大学医学部教授・山王病院心療内科医師の中尾睦宏さんが行った実験で、「寄席に集めた被験者を怪談を聞くグループと普通のお題目を聞くグループに分け、それぞれの体感温度と皮膚表面温度を比較する」というものがありました。その結果、怪談を聞いたグループの平均体感温度は、普通のお題目を聞いたグループと比較して4℃以上も下がったのだそうです。加えて、手のひらの皮膚表面温度も低下していました。  怖い話などで不安や恐怖などを感じると、脳が手や脚などの大きな筋肉に血液を多く送るように、という指令を出し、身体がいつでも動かせるよう準備をします。この状態になると、手脚の先へあまり血液が回らなくなって抹消血管が収縮し、体温が下がるのです。  また、中尾さんによると、人間が外から得る情報の8割は視覚からと言われているため、照明を薄暗くするなど視覚的な工夫を凝らすとさらに寒くなる可能性があるのだとか。今夜はクーラーを切り、怪談話で涼んでみてはいかがでしょうか?

 

『東駅いろは日記』歌川国貞(江戸時代後期)

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