五感で愉しむ 日本の涼

 09/01/2018 : 110 Views

 

風鈴にまつわる日本の行事

川崎大師風鈴市…神奈川県・川崎大師の7月の行事。毎年、47都道府県、約900種類の風鈴が販売されます。

 

浅草寺ほおずき市…東京都・浅草寺の7月の行事。たくさんの風鈴が販売されます。

 

岩手県奥州市・水沢駅…毎年6月から8月、ホームにたくさんの南部風鈴を吊るします。これは「日本の音風景100選」に選ばれています。

 

群馬県前橋市・上毛電車…毎年6月から8月、2両1編成の電車に100個の風鈴を吊るした「風鈴電車」が走ります。

 

三重県伊賀市・伊賀鉄道…夏、風鈴列車が伊賀上野-伊賀神戸間を不定期で走ります。

 

💦💦💦💦💦打ち水(うちみず)💦💦💦💦💦  触覚・視覚

 

古来、神道的な「場を浄める」という意味のあった打ち水には、夏に涼をとる手段として理にかなった効果もあります。打ち水をすると、気化熱によって地面の熱が大気中に逃げていき、気温が1~2℃下がります。「気化熱」とは、水が気体になるときに周囲から吸収する熱のこと。水の蒸発1gあたり、約0.58kcalの熱が奪われます。その他、埃が舞うのを防ぐ、撒いた水の蒸発で対流を発生させ、湿った微風を吹かせるといった効果があります。打ち水は、涼をとる方法として長きにわたって続いている習慣ですが、江戸時代前期、五代将軍徳川綱吉が制定した「生類憐れみの令」が発布された際には「水の中にいるボウフラを殺してしまう」ということで、禁止されていたという説があります。

 

💦💦💦💦💦💦行水(ぎょうずい)💦💦💦💦💦 触覚

 

湯や水をそそいだ盥(たらい)や桶(おけ)浴びながら体を洗う「行水」。風呂桶を満たすほどの湯水を得るのが難しかった昔に、少量の湯水で身体を洗える入浴方法で、夏は涼を取るためのものでありました。盥に下半身を浸け、手桶で肩から水を流したり、盥の水に浸した手拭を絞って体を拭ったりしました。江戸時代まで盥は木製が主流でしたが、明治以降はアルマイトやトタン(メッキされた鉄の薄板)製の金ダライが主流に。夏、垣根で囲われた庭に盥を置き、戸外で行水をするのは江戸、明治、大正の風俗の1つでした行水という名前の由来は仏教用語です。神仏に祈り、神事や仏事を行う際に身を洗い清めること、または手を洗い、口をすすぐことを行水と言いました。

 

浮世絵に描かれた行水 喜多川歌麿 (1801年)

 

麦茶(むぎちゃ) 触覚・視覚

 

大麦の種子を煎じた麦茶は、体温を下げ、血流を改善する効果があります。また、バクテリアの定着を予防したり、血液粘度を低くする作用もあります。カフェインが含まれていないため、夜寝る前や子供の飲み物としても最適。湯で煮出すよりも、水出しの方が雑味が少なくスッキリとした味になります。大麦の収穫時期は初夏で、夏に新鮮で美味しい麦茶を飲む習慣が生まれたのはこのためです。  麦茶の原料となる大麦は、概ね六条大麦が使用されています。六条大麦の国内生産量第1位は福井県で、減反政策による稲作からの転作奨励によって栽培が広まりました。また、1986年(昭和61年)には、全国麦茶工業協同組合によって毎年6月1日が麦茶の日と定められました。

 

歴史

 

平安時代から鎌倉時代にかけて、貴族や武将などの貴人たちは、温かい麦茶である麦湯を飲用していました。江戸時代には屋台の「麦湯売り」が流行しました。天保年間(1831-1845)に刊行された『寛天見聞記』には「夏の夕方より、町ごとに麦湯という行灯を出だし、往来へ腰懸の涼み台をならべ、茶店を出すあり。これも近年の事にて、昔はなかりし也」と記されており、麦湯専門の「麦湯店」があったことが伺えます。明治時代に入っても麦湯店が人気だった一方で、庶民の家庭でも炒り麦を購入し、作って飲む習慣が生まれました。  昭和30年代に冷蔵庫が普及すると、麦湯を冷やして飲む習慣が生まれました。冷やした麦湯が麦茶と呼ばれるようになったのもこの頃で、昭和40年代には「麦茶」という名前が全国に浸透しました。

 

コラム 古代ギリシャの麦茶

古代ギリシャの医聖であるヒポクラテス(紀元前460頃〜370頃)が書いた治療法の処方文献には、発疹した患者に発芽大麦の煎汁を飲ませ、排尿量を増やすという治療法が記されています。この大麦煎湯は、ギリシャ語で「脱穀」を意味するプティサーネー(ptisane)と呼ばれ、原液のままか、稀釈や濾過をしたものが飲まれました。プティサーネーという言葉は、その後、ラテン語で大麦湯や精白した大麦を意味するプティサナ(ptisana)になり、さらにフランス語でハーブティーを意味するティザーヌ(tisane)に変化しました。

 

(日刊サン 2018.09.01)

 

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