五感で愉しむ 日本の涼

 09/01/2018 : 106 Views

 

【舞台の小道具】能狂言では、流派ごとに曲目、役柄、シテ方、ワキ方によって、どんな扇子を持つかが細かく決められています。舞台で扇子を開くことのない囃子方、地謡方も定められた扇子を持っています。歌舞伎では劇中の「物語」で、以前に起きた出来事について、扇を使って物語る場面があります。落語では、畳んだ扇子を箸に見立てて蕎麦などを食べるしぐさをしたり、少し開けて傾け、お銚子から酒を注ぐ仕草をしたりします。噺家の隠語で、扇子は「風」と呼ばれています。

 

那須与一が登場する『平家物語絵巻』巻十一より屋島の戦い「扇の的」wikipedia

【遊び道具】平安時代から室町時代にかけては、扇子を投げて的を落とす「投扇興(とうせんきょう)」という遊びがあり、その技には『源氏物語』の帖名や百人一首などの名前がつけられていました。江戸時代の座敷遊びでは、水を入れた茶碗に割り箸を渡して扇子で叩き折り、水がこぼれなければ勝ちとする「腕さだめ」や、3本の扇子を組み、円錐状に立ててから倒し、キセルで持ち上げて立て直す「三本扇」という遊びがありました。

 

【張扇】講談師が調子を取るために釈台を叩きます。

 

【お盆の代用】金封を贈るときに、扇子の要を手前にして金封をのせ、相手の膝前に要が向くように回して差し出します。本来はお盆にのせて差し出すが、ここでは代わりに扇子を使うという意味があります。

 

【扇子腹】武士が切腹をするときは短刀で自らの腹を切りますが、これは徐々に次第に形式化していき、短刀に手をかけた時点で介錯をするようになりました。こうして実際に使われなくなった短刀は、扇子で代用されるようになりました。

 

🍃🍃🍃🍃🍃簾(すだれ)🍃🍃🍃🍃🍃   触覚・視覚

使いみち

日よけ、目隠し、仕切り、虫よけなど。  奈良時代から使われている簾は、竹や葦(あし)などを編んだもので、日よけや部屋を仕切るため、ブラインドのように軒から吊り下げて使われます。立てて使う簾は立て簾と呼ばれ、葦(よし)で編まれた立て簾は葦簀(よしず)と呼ばれます。葦簀は簾よりも大きく、吊るさずに立てかけて使うもの。現代の日本では、海の家などでよく見かけられます。

 

◊◊◊◊◊◊茣蓙(ござ)◊   触覚・視覚・嗅覚

 

使いみち

室内で絨毯のように敷く、布団の上に敷く、丸めて持ち歩き屋外で一時的に敷く。草茎を織って作られた茣蓙は、い草の香りや肌触りで涼を感じることができる敷物です。語源は「貴人の席」を意味する「御座」で、その作りは畳の表とほぼ同じです。昔は原料の草茎に、カヤツリグサ科の植物、シチトウイ、カンエンガヤツリ、フトイなども使われていました。茣蓙は筵(むしろ)の一種で、藁できたものの他に、い草でできたものもあります。庶民に畳が普及する以前は、一般的に使われていました。

 

【上敷き】縁付き・柄無しの茣蓙で、畳の上に敷き、縁を上敷鋲で留めて使います。表と裏の両面を使うことができます。縁の向きが同じ方向に向いているので、部屋を広く感じさせる視覚的な効果がある他、畳替えの頻度を少なくします。

 

【寝ござ】布団の上に敷いて蒸れを防止します。

 

【花ござ】花柄が織り込まれている茣蓙のことです。

 

🌌🌌🌌🌌🌌🌌蚊帳(かや)🌌🌌🌌🌌🌌🌌  触覚・視覚

 

蚊帳は、夏の夜に戸を開け放し、風を通しながら眠る際に虫除けとして使われていました。蚊帳の生地は麻が多く、網目は約1mm。虫を通さず風をよく通します。麻には吸湿性があるため、気化熱で体感温度を下げるという効果も。現代では、就寝中にエアコンの風を直接受けないように 使われることもあります。

 

 

江戸の夏の風物詩、蚊帳の棒手(ぼて)売り

 

中東から中国の唐を経て、日本に蚊帳が伝来したのは飛鳥時代頃と言われています。奈良時代から日本でも蚊帳が作られ始めました。鎌倉時代までは貴人のみが使うものでしたが、室町時代に庶民への普及が始まり、江戸時代には一般的なものになりました。美声の男性たちが粋な半纏を着、「蚊帳ぁ、蚊帳ぁ」という掛け声をかけながら、二人一組になって町中で売り歩きました。彼らは棒手売りと呼ばれ、江戸に初夏を知らせる風物詩のひとつでした。

 

🎐🎐🎐🎐🎐🎐風鈴(ふうりん)🎐🎐🎐🎐🎐🎐🎐 触覚・視覚

 

 

昔の日本人は、湿気が多く暑い夏をやり過ごすため、風鈴の音を聞いて涼しさの風情を感じていました。  風鈴といえばガラス製の江戸風鈴。伝統的な江戸風鈴は、お椀型をした外身に宙吹きのガラス、内側で音を鳴らす舌(ぜつ)に貝、その下で風を受ける短冊に手織りの麻が用いられ、「チリンチリン」という軽く短い音をたてます。また、岩手県の特産品として、南部鉄器で作られた風鈴があります。この南部風鈴は「リーン」と長く澄んだ音を奏でます。また、銅製の風鈴として、富山県の高岡銅器の高岡風鈴、神奈川県の小田原鋳物、砂張(さはり)製の小田原風鈴があります。変わったところでは、兵庫県姫路の明珍火箸を風鈴用に作った「火箸風鈴」があります。吊るされた2組、4本の火箸の中央に舌が下げられ、お互いにぶつかり合って音をたてます。

 

歴史

現在の風鈴の原型は、お寺の堂の軒四方に吊り下げられている青銅製の「風鐸(ふうたく)」と言われています。強い風が吹くと「カランカラン」というやや低く鈍い音をたてます。昔は、強風が悪神や疫病を運んで来ると考えられていたため、邪気除けのために吊り下げられていました。そして風鐸の音が聞こえる範囲は聖域となり、災いが起こらないと信じられていました。  中国の唐(618-907)では、竹林の東西南北に風鐸を吊り下げ、物事の吉兆を占う「占風鐸」という占いがありましたが、これが仏教や建築文化とともに日本に伝来したと考えられています。  疫病や魔を除ける器物として用いられてきた風鐸ですが、時代が下るにつれて、気温や湿度が上がり病が広まりやすい夏の魔除け道具となり、さらに暑気払いの道具として使われるようになりました。

1 2 3

関連記事

関連記事はありません。



その他の記事