五感で愉しむ 日本の涼

 09/01/2018 : 28 Views

まだまだ厳しい暑さが続くハワイ。普段の生活では多くの方がクーラーを使っていると思いますが、たまには気分を変えて、クーラーの快適さに落ち着いた風情を加え、涼しさを演出する日本の涼をプラスαしてみてはいかがでしょうか? 昔の日本の人々は、蒸し暑い盆地の夏を扇子などの道具や部屋のしつらえを工夫することで凌ぎ、また人口密度の高い江戸では、風鈴の音を聴くなど、粋な涼を感じる過ごし方などで凌いでいました。 今回は、日本の伝統的な夏の涼を演出する風鈴、簾、ゴザ、団扇などの歴史や使い方、雑学をご紹介します。暑さ対策のヒントに、お役立てください。

 

🌀🌀🌀🌀🌀団扇(うちわ)触覚、視覚🌀🌀🌀🌀🌀

 

使いみち

扇いで涼む、濡れたものを乾かす、ものを飛ばす、火を起こす、料理などを冷ます、塵を掃う、陽射しをよける、虫をはらう、厄を祓う、権威を示す、顔を隠す、家紋などを表す、儀式でかざす、戦の時の軍配、客に渡しもてなしの心を現す、贈答、広告、盆踊りの小道具、縁起もの、装いの小道具、蛍狩り、籾殻を選別、大型のもので火消しをする、火の粉を払うなど。

 

歴史

古代から中世までの日本の団扇は、木、鳥の羽、動物の毛皮、蒲葵(びろう・ヤシ科の植物)、芭蕉の葉などで作られていました。翳(は、さしば)と呼ばれる大型のもので、主に儀式や権力者の権威を表す道具(威儀具)などとして使われていました。竹骨と紙が素材となった、現在の団扇の形が登場したのは室町時代末期でした。小型の翳、団扇という名前は、手に持ってハエなどの虫を打ち払うことから「打つ翳」と呼ばれ、これが「うちわ」に変化したものと考えられています。  団扇が一般庶民に普及したのは江戸時代。町民文化が花開くと同時に、炊事、装い、蛍狩り、祭りなどさまざまな場面で利用されるようになりました。

 

【古墳時代】

日本では、古墳時代から木製の団扇が使われていました。団扇の柄が長い形で、送風の道具として使われつつ、権力者の権威を表すもの(威儀具)として、また古墳祭祀における威儀行列の道具として用いられていました。

 

【飛鳥〜平安時代】

大型のものを供に持たせたりするなど、威儀具として、貴族、役人、僧侶などの上流階級の人々に広く使われるようになりました。素材は絹、または蒲葵(びろう)や芭蕉の植物繊維、雉(きじ)や鵲(かささぎ)の羽などで、文様があしらわれるなど、見た目にも煌びやかなものが作られました。一部の庶民の間では、軽い網代網の方扇(ほうせん・四角形の団扇)というものが使われました。

 

【鎌倉・室町時代】

竹、蒲葵、芭蕉などを素材とした現在の団扇の原型が登場したのは、室町時代末。武家の間では、漆塗りの網代団扇や、板や鉄板などで頑丈に作られた軍配団扇(軍配)が使用されました。これらは、戦の際の指揮や、軍の象徴、家紋など示したり、矢などを防ぐ防具としての機能もありました。

 

軍配を持つ武将(狩野元俊)public domain

 

【江戸時代】  

江戸時代、扇いで涼をとる他、炊事や装いの小道具として、庶民の生活に欠かせないものとなっていきます。また、木版技術が向上し、団扇絵の大量生産が可能になったため、庶民も絵や図柄の入った団扇を持つようになりました。古代からの威儀を示す道具から、扇いだり、楽しんだりするための道具となった時代でした。また、唐箕(とうみ)が普及する前は、脱穀後に選別する籾(もみ)を箕(み)に入れて掲げ、団扇で風を起こして籾殻(もみがら)を飛ばし、選別していました。また火消し組には、あおってもらい火を防ぐ消防用具として漆を塗った大団扇が常備されました。

 

【明治時代】

明治時代には「広告団扇」が登場し、今日のような広告媒体として確立しました。廉価版の団扇の裏に名前、表面に商品や商店、寺の紹介文などが入れられ、大量に配布されました。

 

「湖畔」黒田清輝(1897年)

扇子(せんす)触覚、視覚

使いみち

扇いで涼む、口を隠す、贈答品、結界を張る、舞台の小道具、遊び道具、張扇、お盆の代用、扇子腹など。

 

【風を送る】繊細な造りは、上品な微風を送るのに向いています。

 

【口を隠す】  笑うときに歯が見えないよう、口の前で広げます。

 

【贈答】「末広がり」に通じる扇子の形は、昔からおめでたい席での贈答品として用いられてきました。平安時代には、階級が上の貴族が、階級が下の親しい貴族へ下賜していました。江戸時代には、正月に白扇または杉原紙(原料のコウゾに米粉を添加した和紙)1帖と白扇1本を親しい人々に送る習慣がありました。この習慣は現在、能楽や落語で節目の舞台が上演される際、出演者や贔屓に配る「被き扇」として引き継がれています。

 

沈折(しずめおり)の白扇。江戸時代には贈答の品として使われました。

 

 

【結界を張る】お葬式の際、喪主に挨拶するときなど、胸元から畳んだ扇子を出し、膝の前に置いてから礼をすることがあります。これは自他の境目「結界」を張るという意味があります。平安時代から室町時代にかけては、公の場で突然起きた異常事態を確認するとき、扇の骨の間から覗き見るという習慣がありました。これは、外からの穢れを遮る意味があったと言われています。

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