相撲錦絵の第一人者 木下大門氏の SUMO Column

 12/12/2017 : 85 Views

力士にケガ人が多いのは、 むやみな体重増加

 

今年最後の九州場所は幕内力士の休場者が10名にもなり、秋場所を更新。先場所、右膝前十字じん帯断裂で休場した宇良は、色々と治療法を検討した結果、この11月末日に手術をしたそう。術後7か月は出場できず、三段目まで落ちて来年7月場所からの再出場の見込みだという。彼のいない土俵はさみしい。

 

休場者が多いのは人気回復で巡業スケジュールが過密、移動のバスで消耗するのが原因とする説が主流です。私は、さかのぼって高見山205㎏、小錦284㎏、曙235㎏、武蔵丸237㎏の大波がハワイから押し寄せたときから始まったと思います。郷里の高校の先輩、横綱大鵬はテレビで観るととても大きいと感じていたのに、実際は153㎏でした(稀勢の里184㎏)。数年前、1952年制作の「三太と千代の山」という映画を神保町の映画館で観ました。丹沢の道志川周辺の町で大相撲の巡業が映っていました。土俵上で俵を後ろに仁王立ちの横綱栃錦がパチンコ玉が飛んでくるような速さでどんどん飛び掛かってくる若い衆を、右へ左へ瞬間に投げ飛ばす稽古風景に仰天しました。最近、こんな素早い動きの稽古を見たことはありません。マムシと言われた栃錦は132kg、ライバル横綱の若乃花はたった105kg。二人合わせて武蔵丸一人分の重さだったのです。

 

ハワイの重機に軽自動車で立ち向かう現実になったとき、相撲界は軽自動車に鉛版を巻き付け、重量をトラック並みに重くして立ち向かうことを選択。106kgだった大関貴ノ花の子、横綱貴乃花は160㎏までぱんぱんに増量して、曙・武蔵丸に対抗しました。それ以来、力士は重い相手に負けぬよう、食べて食べて体重増加一辺倒になっているようです。これは違うと思うのです。宇良が幕に上がって、急に太って動きが鈍り心配していましたが、じん帯断裂の大怪我。日本人のエンジンに重い車体は無理すぎる。重機には素早い動きで翻弄させるスピード相撲で魅せるのが筋だと思えてなりません。大相撲が土俵という円形の輪から押し出されたら負けというルールなので、押し負けないよう重量増加に重点を置く、相撲人全員に「三太と千代の山」の栃錦を観てもらいたいです。

 

(日刊サン 2017. 12. 12)

木下大門・Kinoshita Daimon

1946年北海道弟屈町出身、大相撲絵師。明治時代に絶滅していた相撲錦絵を、江戸時代の手法そのままに蘇らせた功労者。現在の両国国技館が完成した時から、日本大相撲協会お墨付きの絵師として30年以上第一線で活躍している。今年はベネチアビエンナーレに作品を出展。最も面白い企画展だったと大絶賛された。


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