ハワイの七五三特集

 10/22/2017 : 640 Views

日本文化センターで、晴れ着を着て七五三を祝う子ども達。ハワイ大学きものプロジェクトも含め、きものを着る対象年齢は3歳5歳7歳以外でも歓迎されるので、お兄さんやお姉さんもぜひ参加を!

 

ハワイ大学の崎原仁子先生の、きもの文化交流の功績

もうすぐ七五三。七五三とは子どもの成長と健康を願う、日本の伝統的な行事です。昔からの慣わしでは、数え年で男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳になったら、きものなどの正装姿で11月15日に神社や寺などに詣でてきました。  

現在は満年齢で祝い、男の子と女の子で厳密に年齢を分けることもなくなりつつあります。日にちもこだわらず、11月中の都合の良い日に、フォトスタジオで好きな衣装を着て写真撮影をしたり、レストランで食事などをして祝う家族が多いようです。  

貸衣装店の中には、兄弟の衣装を無料にして撮影をしてくれるところや、夏の間に前倒しして撮ると安くなるセールスもあります。成人式の記念撮影と同じような、ハレの日のコスプレイベントになりつつあるのかもしれません。

 

崎原仁子 Jean Masako Sakihara

1935年生まれ、東京都出身。実践女子大学大学英文学科卒業後、ガリオア奨学金によりハワイ大学へ留学。ハワイ大学東アジア言語学科講師、ホノルル・シャミナード大学日本語講師などを経て、ハワイ大学付属高校きもの文化スペシャリストと日本語講師を兼任。日本語教科書の編纂や、ハワイ州公立高校向けの日本語単位認定試験も作成。2009年日本政府より旭日双光章を受勲。

在ハワイ日本国総領事館で行われた受勲式には、崎原先生(中央)のきもののお弟子さんたち40人もお祝いに集まった。

 

江戸時代、関東で行われた行事が全国に広がった七五三

由来をひも解いてみると、江戸時代の5代将軍、徳川綱吉の長男の健康を祈って始まったのだとか、旧暦の11月は収穫を終えて実りを神に感謝する月であるから、満月の15日に氏神様への収穫の感謝とともに、子どもの加護も祈るようになったなど、諸説あります。昔は疫病などで子どもの死亡率が高かったので、7歳になるまではさまざまな健康祈願の行事がありました。親たちはさぞや切実に祈ったことでしょう。  

七五三はもともと関東圏で行われた地域行事でしたが、やがて全国に広がってゆきました。現在、東北や北海道などの寒冷地では1ヶ月早い10月に行われたり、埼玉県や千葉県茨城県の一部の地域では、ホテルのパーティ会場を借りた披露宴が盛大に行われたりと、各地で風習も異なるようです。  

長細い袋に入った千歳飴は、江戸時代、浅草の飴売り七兵衞が売り出して流行した“千年飴”から始まったとされます。千年も長生きするよう、鶴亀や松竹梅など縁起物の袋に入れられ、3歳の子どもなど、引きずるように手に持っている姿が愛らしいものです。

 

ハワイ大学の正式な授業単位、教育学部のKIMONO Program

さて日本から遠く離れたハワイでも、七五三の衣装を着てお祝いできることを知っていますか。 日本文化センター(Japanese Cultural Center of Hawaii)や、ハワイ金刀比羅神社・太宰府天満宮などでは、きもの衣装一式の貸し出しと着付けを行っています(詳細は右記)。シロキヤにもきもの特設コーナーが設けられ、七五三の衣装セットを多数販売し連日盛況です。  

ハワイできもの着付けや、七五三の行事が行われるようになった立役者は、ハワイ大学の教育学部KIMONO Programの創始者、ジーン崎原仁子講師です。  

崎原先生は御年82歳。東京の大学を卒業した1961年、ハワイ大学に留学。その後ハワイ大学東アジア言語学科講師として、日本語の指導と日本語教科書の編纂のためにハワイへ移住し、現在に至ります。

「もう60年も昔の話しですがね、忘れもしない着任して2日目のことでしたよ。フラの先生が父兄を多勢集めてフラを披露したんです。それで最後に、サクラサクラのメロディーに合わせて女の子たちが出てきて、扇を持って踊ったんです。筒袖の寝間着を着て、しかも左前に着込んで。左前は死装束の着方ですからね。挙句に帯はなくて腰ひも1本の姿なんですよ。人様の前に出る格好じゃありません。私は目を疑い、唖然としました。なぜ日本人のヘルプを頼まなかったのって、校長に聞きましたよ」  

校長は大丈夫、皆楽しんでいますと答えたけれど、崎原先生は新任間もない立場ながら、

「教育者として、その国の文化は正しく教えないとなりません」  

と、キッパリ言い返したそう。

「校長はハッと身を改めて、ごめんなさい間違っていましたと謝罪した上で、キモノプログラムを始めましょうと提案してくれました。偉いわねえ、アメリカ人は。非を認めるとすぐに最善のアイディアを考えるんですよ」  

なんとハワイ大学、教育学部の正式な授業単位として、“KIMONO Program”が創設されてしまったのです。  

現在はハワイ大学の付属高校の1年から3年生までの選択単位科目として、崎原先生は週に4日、きものの授業をしています。2年間かけて和装全般や日本文化についてじっくり学び、自分で浴衣を縫ったり、一人で本格的なきものが着られるようになるんだそう。  

こんな、きものを通して日本文化を伝える授業を行っているのは世界でも稀、崎原先生とハワイ大学だけの取り組みです。

ハワイ大学の付属高校のきもの授業は正式な単位科目。今日は浴衣の着付けですが、本格的な合わせきものと丸帯の着付けの勉強もします。見守っているのが崎原先生。恥ずかしがり屋さんでカメラを向いてくれません。

 

崎原先生の、きもの授業を通した日本文化の伝承に勲章を授与

「きものプログラムを始めるにあたり、日本から協力してくれるところはないか探しました。するとハクビ京都きもの学院が快諾してくださり、全面的にバックアップしてくれました」  

きものや帯などの寄贈、ハクビで開発した“着付け舞い”という独りできものが着られるようになるメソッドの提供、夏には京都から着付け講師がハワイに来て、特別プログラムを開講してくれたりしました。

「UHの高校では、私が着付けを教えるのではなく、ハクビメソッドで覚えた着付けを、先輩の生徒が後輩の生徒に教える形式で授業を行っています」  

授業を拝見に伺うと、3年生のカンナ・ヤワタヤさんは、今日が初めての着付けの授業というジュリー・イムさんと、ハワイに来たばかりの客員教授に、着付けのデモンストレーションをしながら、半幅帯の結び方などを上手にレクチャー中。先輩の生徒は自分が着ることを覚えるだけでなく、どうやったらわかりやすく教えることになるかも考えるので、授業の内容がおのずと深まるのですね。

「プナホウの高校で日本語を勉強している生徒にも1年に一回、女子には振袖、男子には紋服袴の正装を着てもらいます。それももう30年続けていますよ」  

延べ1000人以上のローカルの生徒が、きものを通し、日本文化を肌身で体験できたのです。プナホウの小学校でも、2年生3年生の児童に11月、きものを着せて七五三体験をしてもらっているのだそう。そんな崎原先生の文化交流への貢献をたたえ、日本政府は旭日双光章の勲章を贈りました。

「在ハワイの日本総領事館で勲章を受けたんですが、きものの教え子が40人も集まってくれて、領事館の人は驚いていたけど賑やかで楽しかったですよ」  

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